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少年賢者アルム・サロクの事件簿 ~小さい天才は謎を相手に無双する~ 【魔法陣殺人事件】編

少年賢者の推理:書斎の爆発について。
 俺が前に出ると、当然と言えば当然だが、その場にいた全員がざわついた。

「……あ、あんな子供が……!?」
「アルム・サロク……! あの子が……!?」

 そりゃ、事件について話すのが、俺みたいなチビの少年だったらびっくりもするよな。気持ちはわかるよ。

「じ、冗談じゃない! こんな子供の話なんて、真に受けられるわけがないだろう」
「そう思うのも無理はありません。ですが、今朝彼に指摘されたところを調べたところ、彼の話は非常に信憑性が高いと判断できました」

 文句を言う一部の人間も、憲兵お墨付きとなってしまうと何も言えない。おまけに、先んじて証拠の部類は見つけてもらった後だからな。

「――――――では、アルムくん。あとはお願いしてもいいかな?」
「……わかりました」

 アインハルトによってギャラリーが一通り落ち着いたところで、俺は咳払いした。何しろここからが一番大変なところ。果たして、一体どうなるか。

 ――――――お待ちかねの、推理の披露タイムだ。

「……まず、僕が気になったのは、爆発が起こった現場です。現場に入った時、本来あるべきものがなかったことが、まず気にかかりました。――――――【マーカスさんの遺体がなかった】んです」
「……遺体が、ない?」
「そ、それは、爆発で吹き飛んだのではないのかね? それに、あそこにはマーカス様の衣服も――――――」
「それはカモフラージュだったんです。【マーカスさんは書斎の爆発で死んだと思わせたかった】、何者かによる、ね」
「……何者か……!!」

 そう。その何者かこそが、この事件の真犯人。
 そして――――――。

「その、【何者か】。つまり犯人は――――――この中にいます!!」

 俺ははっきりと、そう宣言した。

*****

「な、なんと……!!」
「この中に、マーカス様を殺した犯人が……!?」

 俺の宣言に、中庭の面々は一斉に周囲を見回しだす。この中に殺人犯がいるとなれば、その恐怖は計り知れないだろう。
 しかし、逃げ場はない。アインハルトが見張っている以上、この場にいる誰もが逃げ出すことなどできはしなかった。
 それをわかっているので、誰も外に出ようとはしない。下手に出ようとして怪しまれるのも嫌だったのだろう。

「――――――で、では、一体誰が……!!」

 ざわめきの中で、俺に対し声をかけてきたのは、メイドのフジノであった。

「一体誰が、マーカス坊ちゃんを殺したというのですか!?」
「……それを明かすために、まずは【爆発事故の本当の原因】からお話ししましょう。それがわかれば、犯人もおのずとわかるはずですから」
「本当の、原因……?」
「そ、それは、【爆発魔法の増幅魔法陣】ではないのかね!?」

 学者の一人の意見に、俺はゆっくりと頷いた。

「ええ、確かに【爆発は魔法陣によって発生】しました。これは間違いないでしょう」
「なら……!」
「ですが、【増幅魔法陣】では、どうしても不具合が発生するはずです。皆さんも計算されていましたよね?」
「そ、それは……」

 学者たちを悩ませていた、【増幅魔法陣】を用いた爆発。それによる問題は――――――。

「【爆発の規模】ですよね? 書斎と、廊下の壁にしか被害が及ばない程度の爆発。その程度の爆発魔法に、どうして【増幅魔法陣】なんかを使ったのか?」
「ああ、そうだ」
「……では伺います。逆にどうして、【増幅魔法陣】で爆破をしたと思ったのでしょう?」
「それは、現場に【増幅魔法陣の魔法文字】があって、爆発があったから…………あっ!?」

 そこまで言ったところで、どうやら学者は気づいたらしい。頭が良いので、大変助かる。

「そう。現場にいた誰も、【爆発魔法の増幅魔法陣】なんて見ていないんです! 見たのは、【爆発と増幅魔法陣の魔法文字】だけ!」

 これにより、その場にいたほぼ全員が錯覚を起こした。――――――爆発は、【増幅魔法陣】を用いて起こったものだと。

「ましてやここは【増幅魔法陣】の開発者たるランベルト侯爵のお屋敷。より一層、強いバイアスがかかってしまうのも無理はありません。きっと犯人は、それも織り込み済みであの爆発を起こしたのでしょう」
「で、では……」
「ええ、その通りです」

 あの時書斎で起こった爆発。それは――――――。

「あの爆発は【増幅魔法陣なんて使っていない、ただの爆発魔法陣だった】んです。【増幅魔法陣】を使わなければ、爆発の規模を調整することも簡単でしょうから」
「では、あの【増幅魔法陣の魔法文字】は、フェイクだったのか……?」
「いえ、そうは思いません。恐らくあれも、犯行には欠かせない要素でした」
「……と、いうと……?」
「そもそも【増幅魔法陣】の使い道は、ご存じですよね?」

 本来あの魔法陣は、【より強い効果をもたらすために使用する】ものだ。それこそ爆発魔法で例えるなら、強固な岩盤を砕いてトンネルを切り拓くための発破として用いられることがある。

「僕はあの【増幅魔法陣】こそが、やはりマーカスさんを殺害した凶器であると見ています。より確実に殺害するためにね。そして爆発に巻き込まれ、仮に見つかったとしても、爆発の現場にあれば【爆発魔法に用いられた魔法陣】だと思い込ませることができる」
「……ま、まさか……!?」

 どよめく学者たちに対し、俺は言い放った。

「そう! ――――――あの爆発が起こった時、【書斎に魔法陣は2つあった】んだ!」
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