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少年賢者アルム・サロクの事件簿 ~小さい天才は謎を相手に無双する~ 【魔法陣殺人事件】編

少年賢者の推理:真犯人の正体
「……【雷魔法】」だと……!?」
「それが、マーカス様を殺害した、本当の魔法陣? そして、書斎にあった【増幅魔法陣】の正体だというのかね?」
「はい」

 俺の言葉に、学者たちや使用人たちは、互いを見やりながらひどく動揺している。爆発事故としか思っていなかったのに、全く関連性のない雷属性が出てくれば、驚くのも無理は無い。

「……そして。ここまでお話しすれば、犯人はだいぶ絞ることができます。つまり犯人は、【マーカスさんが水属性であることを知っている人物】です」
「マーカス様の属性を……?」

 学者たちの視線は、一斉に、ある方向を向いた。――――――それは、屋敷の古参であるセバスチャン、それにフジノ。

 本来、自分の魔力が何属性か、というのはめったに調べるものではない。魔法使いになるか、冒険者となって必要に駆られるか。一般の人間ならこのケースがほとんどだ。

 だが、貴族は違う。高等な教育を受けることが前提であるために、魔術の基礎くらいは必ず学ぶ。そこからどこまで専門性を伸ばすかは家柄にもよるが、少なくとも属性くらいは学ぶし、その過程で自分の属性を知る機会はあるだろう。

 つまりは、このランベルト邸にてマーカスと一緒に暮らしている者なら、知っていてもおかしくない。彼が水属性だったという事実を。

「ま、まさか……!」
「セバスチャン……まさか、お前が……!?」
「ち、違います! 私はマーカス様を殺したりなんて、しておりませんっ!」

 ギルバーツより向けられた疑いの目に、セバスチャンは珍しく取り乱した。

「確かに私めはマーカス様の属性を知っておりました。ですが、【魔法陣】を用いて殺すなど、とても……!!」
「そ、それを言うなら、私だって! マーカス坊ちゃんを殺すわけ、ないじゃないですかっ!!」

 セバスチャンとともに、疑いの目が向いたフジノも声を荒げた。それに対し、ギルバーツは疑わし気な視線をやめることはない。

「――――――そのお二人は犯人じゃありませんよ。そもそもこの犯行には、【高度な魔術の知識】が必要なんです。【魔法陣】だけじゃない、もっと様々な要素が絡み合った、ね」
「知識だと……?」
「そう。【マーカスさんの属性を知っており、なおかつ高度な魔術の知識を持つ人物】。それがこの事件の真犯人なんですよ。使用人であるセバスチャンさんやフジノさんも学ぶ機会はあったかもしれないが、仕事と両立するのは難しい」
「……と、ということは……!?」

 俺の言葉に、ギルバーツの顔色はみるみる青ざめる。どうやら、彼は犯人と思い当たる人物が、思い浮かんだらしい。セバスチャンとフジノも、同じように青ざめていき、伝播するようにほかの使用人や学者たちも、青ざめていく。

 唯一顔色が変わらないのは、俺とリリーにアインハルト。―――――――それに、犯人だけ。

「ま、まさか……!! まさか……!?」
「その通り。この条件に合致する人物は、この場にたった一人しかいない!」

 俺は犯人であろう確信の人物を指さす。一同はつられて、一斉に彼女の方を見やった。

「マーカスさんを殺し、爆発事故に見せかけた真犯人は――――――」

 俺が指し示す指の向こう側にいたのは――――――。

「――――――貴方だ!! 【ダリア夫人】!!」

 ギルバーツの隣で、まるで仮面のように冷たい表情をしている女。

 ランベルト侯爵夫人――――――ダリア・ランベルトだ。
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