■第だい９話わ　エルフちゃんと夜よるご飯はん

　病院びょういんとホイコーズから帰かえってきて家いえに着ついた。

「ただいま」
「ただいま」

「ふふっ、おかえりなさい」
「おかえり」

　誰だれもいない家いえにただいまを言いったら、上あがり框かまちでお帰かえりを言いわれた。
　なんだか非常ひじょうにほっこりする。

　それがエルフちゃんなので、まるで西欧せいおうのお嫁よめさんと国際こくさい結婚けっこんした勝かち組ぐみサラリーマンみたいな顔かおになりそうだった。

「やっぱり人ひとがいるっていいね」
「そうですね。私わたしもここに来くる前まえの研修けんしゅう中ちゅうは寂さみしかったです」
「うちの親父おやじは？」
「いたんですけど、朝あさから晩ばんまで仕事しごとしていて、あまり顔かおも会あわせなかったので」
「親父おやじめ、こんなかわいいエルフちゃんに寂さびしい思おもいさせるとか」
「あっでも、奥おくさんがいたので」
「あぁ母かあさんもいるよな、そういえば」

　父とうさんの出張しゅっちょうには母かあさんもくっついていっている。
　つまり一緒いっしょに生活せいかつしているはずだ。
　他人たにんなので実感じっかんがあまりなかった。

　ご飯はんを炊たく。

「炊飯器すいはんきとかいうのですよね？」
「そそ」

　この炊飯器すいはんき君くん。海外かいがいでは珍めずらしいらしいね。

　そうしてしばらくテレビとか見みて過すごした。
　ララちゃんも大人おとなしく椅子いすに座すわっている。
　うれしそうに体からだを動うごかしたりするとおっぱいがぽよんぽよんするので、すかさず見学けんがくする。
　テレビよりよっぽど面白おもしろい。

「さてそろそろご飯はんの支度したくをしますかね」
「はいはいっ、今日きょうは私わたしも手伝てつだいます」
「ありがとう」

　二人ふたりで台所だいどころに立たつ。
　エプロンもつける。
　すげぇ。おっぱいがエプロンを持もち上あげている。
　おっぱいの頂点ちょうてんから下したは垂たれさがっていて腰こしの紐ひもでようやく体からだの前まえに戻もどってくる。

「ごほんごほん、とにかく始はじめます」
「はーい」

　ララちゃんのかわいい返事へんじに場ばが和なごむ。

「お湯ゆを沸わかします」
「はいはーい」

　鍋なべで湯ゆを沸わかす。後あとでレトルトカレーを入いれる。

　その間あいだに付つけ合あわせのサラダを用意よういをする。
　レタスを千切ちぎって、キュウリを刻きざんて、小ちいさいチーズを散ちらす。
　あとはここにドレッシングを少々しょうしょう。

「サラダも美味おいしそうにできましたっ」
「だね」

　ララちゃんにはキュウリを刻きざんでもらった。
　異世界いせかいでも包丁ほうちょうはあるらしくベテランレベルだったので見みていても安心あんしんできた。
　これなら普段ふだんの料理りょうりでも十分じゅうぶん戦力せんりょくになりそうだ。

「そういえば異世界いせかいって水道すいどうとかあるの？」
「水道すいどうはないですねぇ。王宮おうきゅうとかならあるみたいですけど」
「へぇ、どうしてるの？」
「井戸いどがあって朝あさに汲くんできて水瓶みずがめに溜ためるんです」
「なるほど」
「水みずって重おもいんですよね」
「そうだね」

　リッターで一いちキログラムはあるから、そりゃあ結構けっこう重おもい。

　まだ時間じかんも余裕よゆうがあった。

「せっかくなので目玉焼めだまやきとベーコンも焼やこうか」
「はいっ」

　まずベーコンを焼やいていく。
　しばらくしたらフライパンに卵たまごを二ふたつ落おとす。

「えへへ、なんだか卵たまご二ふたつだと新婚しんこんさんみたいです。きゃぁ」
「だよねぇ、俺おれもそう思おもった」

　フライパンの上うえには目玉めだまが並ならんでいる。
　今いままでずっと妹いもうとも入院にゅういんしていたので卵たまごも一ひとつだった。

　これでベーコンと卵たまごが焼やけた。
　塩しおコショウで軽かるく味付あじつけをする。

「どの家庭かていでもコショウが普通ふつうにあるんですか？」
「え、あ、うん。コショウって高級こうきゅう品ひんだったの？」
「はい。あのヒューマンの国くにの海うみの向むこうから輸入ゆにゅうされてるみたいで高たかかったんですよ」
「へぇ」
「でもエルフのうちはみんなそこそこ裕福ゆうふくなのでなんとか買かえるくらいでした」
「そりゃよかったね」
「はいっ」

　エルフの家いえ事情じじょうを少すこし聞きいた。
　なるほど伝統でんとうある長ながい家いえが多おおく、そういう家いえは比較的ひかくてき職業しょくぎょうも受うけ継ついでいて裕福ゆうふくだったと。
　次男じなん三男さんなんは独立どくりつして家いえを作つくるから長男ちょうなんの家いえよりは裕福ゆうふくではないけれど決けっして貧乏びんぼうではなく、みんな少すこし裕福ゆうふくくらいを維持いじできていたらしい。
　なるほど、結構けっこううまく回まわっていたようだ。

　さてビーフカレー、チキンクリームカレー、エビホタテカレーを鍋なべに入いれて茹ゆでる。
　ご飯はんが炊たきあがった。

　お皿さらにご飯はんを中央ちゅうおうによそって左右さゆうにビーフカレーとチキンカレーを掛かける。
　共用きょうようのお皿さらにエビホタテカレーを入いれて、こちらは後あとで食たべよう。

「「いただきます」」

　スプーンで一口ひとくちずつ食たべる。

「美味おいしいっ。これ、美味おいしいですね。ちょっぴり辛からくて」
「だね。レトルトって昔むかしは変へんな味あじとかしたらしいんだけど、今いまってすごいよね」
「そうなんですねぇ。技術ぎじゅつの進歩しんぽなんですか？」
「そうみたい」

　うん。昔むかしのレトルトカレーって具ぐが変へんな感かんじだったりよくしたらしいのだ。
　でも今いまは全然ぜんぜん何なにも問題もんだいない。普通ふつうの美味おいしいカレーだ。

「エルフの里さとにも茹ゆでるだけで食たべられるものとかあれば楽らくだったですね」
「ないの？　レトルト」
「ないですねぇ。あぁ干ほしものならありますよぉ」
「ああ干ほしものね、うんうん」

　アジの干物ひものとかホタテの貝柱かいばしらとかだよな。
　それなら雰囲気ふんいきは分わかる。

「干ほしブドウなんかは子供こどものおやつの代表だいひょうでした」
「干ほしブドウか。この世界せかいにもあるけど、あんまり直接ちょくせつ食たべる機会きかいはないかもね」
「そうですかぁ」
「でも探さがせば売うってると思おもうよ。今度こんど買かってこようか？」
「はいっ、一緒いっしょに行いきましょう。なんでも一緒いっしょがいいです」
「分わかった、分わかった」

　こうしてまた一ひとつ約束やくそくをした。
　カレーを食たべる。それからエビホタテカレーもよそって食たべた。

「ホタテがいい味あじです。どのカレーも味あじが違ちがってみんな美味おいしいですぅ」
「だねぇ。どれもアタリだね。これなら毎日まいにちのように日替ひがわりカレーを食たべてもいいかもしれないね」
「そうですね。でも毎日まいにちカレーですかぁ」
「う、まあ三日みっかに一回いっかいくらいで違ちがう味あじのカレーにしようか」
「はいっ、ハンバーグとかシチューとか色々いろいろ食たべたいですぅ」
「そうだね。また色々いろいろ作つくろう」
「はいっ」

　ララちゃんのいい返事へんじだ。
　この日ひも別々べつべつにお風呂ふろに入はいり寝ねるのだった。