■第だい８話わ　エルフちゃんとレトルトカレー

　入院にゅういんしている妹いもうとエリカの洗濯物せんたくものも回収かいしゅうしたし、なにより病気びょうきが治なおるかもしれない。
　俺おれとララちゃんは病院びょういんから出でる。

「あ、そうだ。ついでだからホイコーズ寄よっていこう」
「ホイコーズ？」
「うん、雑貨ざっか屋やさん。食料しょくりょう品ひんとかもあるんだ。カレーが売うってる」
「やった、カレーですね！」
「うん。ただし今いまはレトルトね。家いえで作つくるのは妹いもうとが帰かえってきてからにしようかと」
「もちろんいいですよ。早はやく退院たいいんできるといいですね」
「うん」

　こうして病院びょういんの近ちかくにある総合そうごうデパートに入はいっているホイコーズに寄よった。

　うん。オリジナルブランドの雑貨ざっかがところせましと並ならんでいる。
　商品しょうひんはぼぼすべてがオリジナル商品しょうひんだ。
　そしてレトルトカレーコーナーが充実じゅうじつしている。
　カラーペンも何なん十色じゅっしょくとかあったりしてこだわりが強つよい。

「カレーありましたよ」
「おう」

　そこには二十にじゅっ種類しゅるい以上いじょうのレトルトカレーが並ならんでいた。
　基本きほんのチキンカレー、ビーフカレー、ポークカレー。
　これらは売うれ筋すじなのか大量たいりょうにある。量りょう多おおめでかつ値段ねだんも安やすい。
　甘あまめのチキンクリームカレー、エビクリームカレー、シーフードカレー。
　他ほかにもエビホタテカレー、本格ほんかくホットチリビーフカレー、本格ほんかくホットチリチキンカレー。
　肉にく魚さかなが入はいっていないベジタリアンでも食たべられる野菜やさいカレー、カボチャカレー。
　ジビエシリーズなんかもある。クマ肉にくカレー、シカ肉にくカレー、キョン肉にくカレー、イノシシ肉にくカレー。

「どれがいいか迷まよっちゃいますぅ」
「うん。だよね」

　ララちゃんは困こまったという表情ひょうじょうをしながらくねくねと体からだを揺ゆらす。
　ちょっとミュージックフラワーみたいだ。
　そうすると胸むねもぼいんぼいんと上下じょうげ左右さゆうに揺ゆれている。
　少すこし周まわりの視線しせんがさすがに気きになる。

「おいあれ」
「ばるんばるんだな」
「すごい」

　声こえもチョロチョロ聞きこえた。

「えへへ、注目ちゅうもくされちゃいました……」
「あはは」

　俺おれはどう返事へんじをしていいか分わからず、乾かわいた笑わらいで誤魔化ごまかした。

「辛からいの大丈夫だいじょうぶ？」
「え、はいっ。あのトウガラシはエルフの森もりにもあって」
「そうなのか」
「ええ、狂信的きょうしんてきな支持者しじしゃが激辛げきから料理店りょうりてんとかやってるんです」
「なるほど？」
「私わたしはそこまで得意とくいではないですけど、ちょっと辛からいくらいが好すきです」
「そうか」
「はいっ」

　最初さいしょだし無難ぶなんにビーフカレーにするか。
　あとチキンクリームカレーも買かってみよう。

「この二ふたつでいい？」
「はいっ、ああ、あの、エビホタテカレーも買かっていいですか？」
「お、おお。いいよ」
「ありがとうございます」

　うれしそうにぴょんぴょん跳はねてから頭あたまをがばっと下さげる。
　その動うごきが結構けっこう激はげしくてやっぱりぽいんぽいん、ばるんばるんかな、揺ゆれる。
　あのですな、あれって痛いたくないのかな。
　何なにも言いわないところを見みると大丈夫だいじょうぶそうではあるけれど結構けっこう引ひっ張ぱられるよね。
　ブラが仕事しごとをしているのかもしれない。うん。

「他ほかに欲ほしいものは？　なんでもいいよ、無駄遣むだづかいしなければ」
「そうですかぁ、じゃあこのモモシャンプーを」
「ふむ」

　最近さいきん流行はやりのいい匂においがするシャンプーだ。
　女おんなの子この匂においに似にているとかでおっさんにも人気にんきらしい。

　ララちゃんは最初さいしょからスマホを所持しょじしていて、普通ふつうに使つかっている。
　だから流行りゅうこうとかも思おもったよりは詳くわしいみたい。
　エルフ現代げんだいに生いきる、って感かんじで本来ほんらいのイメージからかけ離はなれているが、かなり順応じゅんのうしているご様子ようすだ。

「えへへ、いい匂においしたらうれしいでしょ？」
「まあそうだけど」
「どうですか？　今いまはどんな匂においします？　女おんなの子こってどんな匂においですかぁ？」
「うぅ……」

　俺おれに抱だきついておっぱいを押おし付つけてぐいぐい迫せまってくる。
　めちゃくちゃ柔やわらかい。
　プリンとかゼリーなんてものよりよほど柔やわらかいのだ。
　ぐにゃぐにゃしてるのに反発力はんぱつりょくというのか独特どくとくのハリもある。

　ただでさえ金髪きんぱつ碧眼へきがんのエルフ耳みみなので、めっちゃ目立めだってる。
　チャラい髪かみを染そめてるカップルがいちゃついているように見みえるかもしれない。
　でもララちゃんは日本人にほんじん離ばなれしてる顔かおだから進すすんでる外国人がいこくじんに見みえるか。

　柔やわらかくて温あたたかいおっぱいを感かんじながら俺おれはあわあわする。
　どんな匂においだろうか、うんと、そうだな何なにだろうほのかに甘あまいような優やさしい匂におい。
　モモだろうかミルクだろうか、ママの味あじというのだろうか、なんかそういう甘あま味みがありそうな匂においだ。
　とっても落おち着つく匂におい。
　それから微かすかにする汗あせの匂におい。これも別べつにおっさんおばさんの汗あせのいわゆる加齢かれい臭しゅうがまったくなく逆ぎゃくになんだか青春せいしゅんを感かんじさせる匂においだ。

「くぅ」

　俺おれはララちゃんのアタックに顔かおを赤あかくしていた。
　俺おれが恥はずかしがっても誰だれもよろこばないとは思おもうが、しかたがない。

「うぃうぃ、えへへぇ」
「ララちゃん、ギブ、ギブ。俺おれの負まけでいいです」
「なんだか分わからないけど勝かっちゃいましたっ、ぶいぶい」

　ララちゃんの完勝かんしょうだ。
　童貞どうていの俺おれにはララちゃんのらぶらぶ光線こうせんがまぶしすぎる。

　さて家いえに帰かえろう。あ、その前まえに本屋ほんやで新刊しんかんのラノベを買かっていこう。

「本屋ほんや寄よっていっていいか？」
「いいですよ。どんな本ほん買かうんですか？」
「ファンタジーとかラブコメ」
「ファンタジーっ、おぉおお」

　まあ今いまとなっては目めの前まえのララちゃんが一番いちばん身近みぢかで最大さいだいのファンタジーだ。
　本屋ほんやのラノベというか新しん文芸ぶんげいコーナーを見みる。

「王都おうとの裏道うらみちで拾ひろった金髪きんぱつ幼女ようじょが実じつは王女おうじょだった件けんか、ふむ」

　異世界いせかいの国くに。転生てんせいした俺おれはふらふら王都おうとで初心者しょしんしゃ冒険者ぼうけんしゃをしていた。
　裏うら道みちを歩あるいていたところ、うずくまっている金髪きんぱつ幼女ようじょがいた。
　心配しんぱいになり幼女ようじょに声こえを掛かけたところ帰かえる家いえがないという。
　俺おれが拾ひろって連つれて歩あるくことになったが、なんと彼女かのじょ実じつは隣国りんごくの第だい三さん王女おうじょその人ひとだった。
　俺おれと幼女ようじょのエルフの金髪きんぱつ碧眼へきがん王女おうじょとの異世界いせかい冒険ぼうけん譚たん。

「それ買かうんですか？」
「ああ、うん。とりあえず」
「あっれこの王女おうじょ様さまエルフですね。私わたしと一緒いっしょっ、家いえがないのも一緒いっしょですぅ」
「そういえばそうだな」
「エルフ好すきなんですか？　エルフ！！」
「エルフ好すきだよ。猫耳ねこみみも好すきだけど、やっぱりエルフかな好すきなのは」
「やったっああああ、ケート君くんに好すきって言いってもらえましたっ」
「そういう意味いみではないけど……」
「そうですか、しょぼん」
「いやいや、もちろん好すきだよ」
「えへへへへへへ」

　テレテレのララちゃんを引ひっ張ぱってバスで家いえまで帰かえるのだった。