■第だい７話わ　エルフちゃんと俺おれの妹いもうと

　学食がくしょくでカレーを食たべて満足まんぞくした俺おれたち二人ふたりは教室きょうしつに戻もどった。
　普通ふつうに午後ごごの授業じゅぎょうを受うけた。
　放課ほうか後ご、女子じょしたちがララちゃんの前まえに集あつまってくる。

「ねぇねぇ、ララちゃん。何部なにぶに入はいるの？」
「一緒いっしょにバスケットする？」
「女子じょしサッカー部ぶとかどう？」

　女おんなの子こは思おもったよりも積極的せっきょくてきだ。
　ララちゃんがいれば即戦力そくせんりょくになりそうだし、なにより目立めだつからいい広告塔こうこくとうだ。
　来年らいねんの新入しんにゅう生せいにも期待きたいが持もてる。

「あ、まだ考かんがえてなくて」
「そっか」
「残念ざんねん」

　クラスメートということもあり、しつこい人ひとはいなくてすぐに引ひき上あげていった。

「あ、俺おれは家いえ戻もどった後あとすぐ病院びょういん行いくけどどうする？　どこか一人ひとりで寄よってく？」
「私わたしも病院びょういんに行いってもいいですか？　妹いもうとさんのところですよねぇ」
「うん」
「ありがとう。是非ぜひ会あってみたかったんですぅ」
「妹いもうともきっとよろこぶよ」
「家族かぞくなんですから、妹いもうとちゃんも私わたしの妹いもうとみたいなものですもんね」
「おう、確たしかにそうだな、んじゃいこっか」
「はいっ」

　靴箱くつばこで靴くつに履はき替かえる。
　ララちゃんの靴箱くつばこも帰かえりのホームルームの後あとに鍵かぎを貰もらって割わり当あてられていた。

「では帰かえりましょう。手てっ」
「あ、うん」

　俺おれがそっと手てを出だすと、ララちゃんががっちり手てを掴つかんでそのまま腕うでを組くんでしまう。
　案あんの定じょう、おっぱいの柔やわらかいのがぽよんぽよんと当あたっている。

「ふっふふのふ～らららんらん～」

　俺おれとくっついていられるからか非常ひじょうに機嫌きげんがよかった。
　知しらない歌うた。エルフの歌うただろうか。それを口くちずさんでいた。
　なんだか異文化いぶんかの歌うたみたいな独特どくとくのメロディーで非常ひじょうに興味深きょうみぶかい。

　そしておっぱいが気きになってしょうがない。

　一度いちど家いえに帰かえって妹いもうとの着替きがえなどを持もってくる。
　当然とうぜんとして下着類したぎるいもあるが妹いもうとのものだし別べつに色気いろけのあるやつじゃないのでこれくらいなら何なんとも思おもわない。
　ララちゃんはどうやらそれよりは色気いろけのあるピンクの下着したぎをつけているようだけど。
　ほんの少すこしセーラー服ふくの白しろい生地きじからピンク色いろが透すけているのだ。
　上うえがそうなら下したも結構けっこう派手はでかもしれない。

　そうしてこうして循環じゅんかんバスに乗のって病院びょういんへ。
　バス停ていで少すこし待まつとすぐにバスがやってきた。

「これがバスっ」
「ああ、そうだよ」

　バスに乗のるとララちゃんが感動かんどうしている。
　電車でんしゃバス共通きょうつうの電子でんしカードは持もっているみたいで機械きかいにかざして乗のり込こむ。
　そしてバスの中なかを見回みまわしていた。

「前まえがいい？　後うしろ？」
「えっと、前ぜんっ」
「了解りょうかい」

　運転手うんてんしゅさんのすぐ後うしろの席せきを陣取じんどる。
　ララちゃんは顔かおを乗のり出だして運転うんてんしているところを見みていた。
　景色けしきにも視線しせんを向むけつつ興味深きょうみぶかそうにしている。

「次つぎは、埼台さいだい東ひがし総合そうごう病院びょういん前まえ、総合そうごう病院びょういん前まえ」
「お、おりますっ」

　ララちゃんが声こえを出だした。
　俺おれがボタンを押おす。

　ピンポン。

「次つぎ、止とまります」

　アナウンスが再ふたたび入はいりララちゃんがホッとする。

「なるほどぉ」

　仕組しくみに感心かんしんしきりのララちゃんはまるで幼稚園児ようちえんじだ。
　まったくかわいいったらない。

　降おりるときもタッチで清算せいさんを済すませる。

「街中まちなかの乗合のりあい馬車ばしゃとかを使つかうときは銀貨ぎんかを出だしたりしてその都度つどまごついてましたけど、この電子でんしカードとかいうの便利べんりですねぇ」
「だろ、これも俺おれたちが生うまれる前まえにはなかったらしいよ」
「へぇ」

　昔むかしは精算機せいさんきの機械きかいに普通ふつうにお金かねを投入とうにゅうしていたらしい。
　今いまではみんな電子でんしカードに移行いこうしていた。

「おおぉこれが病院びょういん、おおきーいですぅ」
「総合そうごう病院びょういんだからね。普通ふつうの街まちの病院びょういんは一軒家いっけんやとそれほど変かわらないよ」
「そうなんですねぇ」
「うん。ここはビルだから」
「なるほどぉ」

　感心かんしんしきりのララちゃんを連つれて病院びょういんの受付うけつけへ。
　ララちゃんも行政ぎょうせい上じょうは親族しんぞくということになっているらしく普通ふつうにサインをして入院にゅういん病棟びょうとうへ進すすむ。

「わわっ、エレベーター」
「うん。使つかったことない？」
「ホテルに泊とまったときに少すこし使つかいましたから、四よん回かい目めくらいですかぁ」
「ふむ」
「ふわってして気持きもち悪わるいんですよねぇ。これ苦手にがてなんですぅ」
「そうだったか。階段かいだんにする？　五ご階かいなんだけど」
「いえ面白おもしろいのでエレベーターで大丈夫だいじょうぶですっ」
「そっか、了解りょうかい」

　エレベーターのボタンを押おすとすぐに扉とびらが開あく。
　一いっ階かいで待機たいきしていたらしい。

　四角しかくい箱はこに入はいりドアが閉しまった。上昇じょうしょうしていく。

「えへへ、誰だれも見みてません」

　そう言いってぎゅっとくっついてくるララちゃん。

「あの監視かんしカメラあるんだけど」
「えっ見みられてるんですか、ぎゃあ」

　今度こんどはほんの少すこしだけ間あいだを空あけるララちゃん。

　五ご階かいまでそのまま昇のぼっていきドアが開ひらいた。

「着つきましたぁ。この降おりる前まえがぐわあんってなって面白おもしろいんですよぉ」
「まあね、変へんな感覚かんかくだよな」
「そうなんですよぉ、分わかりますかぁ。こんなのエルフの街まちにはなかったです」
「エレベーターの普及ふきゅうしたエルフの街まちも見みてみたい気きがするが、なさそうだな」
「はいっ、電気でんきとかいうのがないのです」

　ナースステーションに寄よって受付うけつけをして個室こしつへ向むかう。
　年頃としごろの女おんなの子こだ。病院びょういん側がわの都合つごうの関係かんけいもあって個室こしつにしてもらっている。

「絵理加えりか、入はいるよ」
「あ、お兄にいちゃん、どうぞ」
「失礼しつれいします」

　エリカがパジャマ姿すがたでベッドで起おき上あがっている。

「今日きょうは起おきてるのか」
「うん。少すこしだけ調子ちょうしよくて」
「そりゃよかった」

　なんというかエリカはいわゆる原因げんいん不明ふめいというもので調子ちょうしが悪わるいのだ。
　酷ひどい倦怠感けんたいかんやめまいなどがあり長時間ちょうじかん座すわったり立たったり歩あるいたりできない。
　血液けつえき検査けんさや脳のう検査けんさなどもしてみたものの特とくに異常いじょうは見みつかっていない。

「あの……外国人がいこくじんさん？　エルフさん？？」

　エリカもエルフとか知しっているらしく、頭あたまの上うえにデカいクエッションマークが浮うかんでいる。

「どうもこんにちは。エルフのララですぅ」
「えっ本当ほんとうにエルフなの？」
「父とうさんの仕事しごと、知しってるだろ。マジらしい」
「知しってるけど……へぇすごいね。私わたしも異世界いせかい転生てんせいしたいな」

　苦くるしい生活せいかつを余儀よぎなくされているエリカにとって異世界いせかい転生てんせいしたいとは口癖くちぐせみたいなものだった。
　俺おれも異世界いせかいモノを多おおくたしなんでいるのでその欲望よくぼうは骨身ほねみに染しみるほど理解りかいできる。

「異世界いせかいって実在じつざいしてたんだね……驚おどろき」

　全然ぜんぜん驚おどろかない顔かおでそう笑わらってみせる。

「早はやく死しんで転生てんせいしたい、こんな体からだ」
「まぁそう言いうな。彼女かのじょは転移てんいしてきたんだ。可能性かのうせいはある」
「あのエリカちゃん……ちょっと手てを出だしてもらっていいですかぁ」
「いいよ、何なにかくれるの？」

　エリカが手てを差さし出だしてそれをララちゃんが丁寧ていねいに両手りょうてで包つつむように握にぎりしめる。

「んっ」

　エリカが少すこし恥はずかしいのか顔かおを赤あかくして目めを見張みはる。

「えっ、なにこれ」
「分わかりますか。エリカちゃん……魔力まりょく障害しょうがいがあるんです」
「え俺おれたちって魔力まりょくとかあるの？」
「はい。人間にんげんもエルフもみな魔力まりょくはあります。この世界せかいの人ひとには有効ゆうこうに使つかわれていませんが存在そんざいはしていますぅ」
「そうなのか」

　ララちゃんがいつになく真剣しんけんな表情ひょうじょうになってなにかをごにょごにょ呟つぶやいている。

「エリカちゃん、ごめんなさい。ちょっと感かんじると思おもうけど我慢がまんしてください」
「えっ、うん。……あっ、んんんっ、あぅ」

　妹いもうとのほうが顔かおを赤あかくして目めが泳およいでいる。
　感かんじるってそういう、おおう。

「はい、いいですよ」
「あれ、なんだかちょっと調子ちょうしよくなった気きがする」
「魔力まりょくを与あたえて流ながしたんです。これを続つづければ少すこしずつよくなりますですぅ」
「え、なに、エリカの病気びょうき、治なおるの？」
「はい。あのこのまま放ほっておくと五ご年ねん後ごくらいには死しんでしまうところでした」
「げ、マジか」
「はい。本当ほんとうは男おとこの人ひとと性交渉せいこうしょうすると魔力まりょくが流ながれ込こんできて治なおることもあるのですが」
「ダメダメダメ、そんなのなし。何歳なんさいだと思おもってる」
「ですよねぇ」

　あっけらかんとそういうこと言いうのはなしだ。
　なんだよエッチすれば治なおるって。
　五ご年ねんだろ。指折ゆびおり数かぞえる高校こうこう卒業そつぎょうするまでは妹いもうとは誰だれにもやらん。絶対ぜったいダメだ。

「お兄にいちゃんとエッチしても治なおるのかな」
「俺おれ？　えっ俺おれ？」
「近親者きんしんしゃは魔力まりょくも馴染なじみやすいので効果こうかが高たかいって言いいますねぇ」
「はぁ？？」
「お兄にいちゃん想像そうぞうした？　お兄にいちゃんのえっち」
「うおおぉおおお」

　俺おれ大だいダメージ。
　妹いもうとにそんなこと言いわれる日ひが来くるとは思おもってなかった。
　俺おれが治療ちりょうのために妹いもうととエッチ……しないわ。
　だいたいエルフのララちゃんが魔力まりょく流ながせば治なおるんならそうしてくれ。
　ララちゃんが家族かぞくになって本当ほんとうによかった。ありがとう。