■第だい６話わ　エルフちゃんは授業じゅぎょうを受うける

　エルフちゃんといえども授業じゅぎょうに例外れいがいはない。
　ララちゃんは後うしろから前まえを眺ながめていた。

　俺おれは隣となりの席せきなので、ちらちら見みてみるものの落おち着ついているようだ。
　今いまは数学すうがくの時間じかん。四よん十じゅう代だいの男性だんせいの先生せんせいもちらちらとララちゃんを見みていた。

「では次つぎの問題もんだい。ララちゃんはどうだ、分わかるか？」
「はいっ」

　ララちゃんが勢いきおいよく手てを挙あげる。

「じゃあララちゃん」

　椅子いすを動うごかしてララちゃんが立たち上あがる。

「うぉおお」
「うわっ……」
「おお、眼福がんぷく」

　ちらちら声こえが聞きこえる。
　それもそのはずララちゃんが立たち上あがったところを見みたクラスメートはみんなそれを目撃もくげきしたのだ。
　ララちゃんのおっぱいがぼいんと揺ゆれるところを。

「えへへ、えっとサインシータは……」
「はい、正解せいかい。みんなもボケッとしていないように」
「あはは」

　クラスに笑わらいが起おきる。
　その間あいだにささっとララちゃんが座すわった。
　今度こんどは見みている人ひとが少すくなかったのか、そこまで注目ちゅうもくされていなかった。
　先生せんせいの突つっ込こみのおかげだろう。ナイス先生せんせい。

　この先生せんせいもララちゃんのおっぱい目当めあてかと疑うたがってしまったがどうやら違ちがうらしい。
　ごめんな先生せんせい。

　座すわり直なおしたララちゃんはエルフ耳みみが赤あかくなっている。
　ほっぺだけじゃなくてエルフ耳みみも赤あかくなるんだよな。
　まあ恥はずかしかったのだろう。
　そしてそれはすごい目立めだつ。なにぶん左右さゆうに飛とび出でているので。
　幸さいわいにして一番後いちばんうしろの席せきだからそれほど言いわれないけど、思おもってる生徒せいとは多おおいだろう。

　みんなそういうのをちゃかしたりはしない。高校生こうこうせいにもなると少すこしは空気くうきを読よむのも分わかってくるらしい。

　授業じゅぎょうも順調じゅんちょうに進すすんで昼休ひるやすみになった。

「それじゃあ、学食がくしょくへ行いこうか？」
「はいっ」

　俺おれたちは並ならんで学食がくしょくに向むかった。
　また腕うでを組くもうとしてきたけど、さすがに学校がっこう内ないでは遠慮えんりょをした。

「むぅ」
「いや、目立めだつんだって」
「まぁそうですけど。だって私わたし、全身ぜんしんもとから目立めだつんだもん」
「そう言いわれると困こまるな」
「でしょ」

　ララちゃんが勝かち誇ほこったような顔かおをして手てを腰こしに当あてる。
　そういう仕草しぐさがいちいちかわいい。

「でもダメ」
「ぶぅぶぅ」

　ララちゃんが不貞腐ふてくされた顔かおを作つくっているけれど、これもこれでかわいい。
　もうぎゅってしたくなってくる。もちろん俺おれは男おとこだからしないけど。

　廊下ろうかを歩あるいていくと視線しせんがすごい。
　なんとか食堂しょくどう前まえまでやってきた。

「おい、あれ」
「ああ、かっわいい」
「美少女びしょうじょじゃん美少女びしょうじょ」
「エルフに見みえるんだが、俺おれがおかしいのか」
「いや東欧とうおう出身しゅっしんとかなんじゃないの？」
「なるほど」
「だってエルフなんてこの世界せかいにいないでしょうに」
「分わかんないだろっ」
「いねえってラノベアニメの見過みすぎだ」
「そっかなぁ」

　いや、分わかるよ。俺おれもそう思おもったもん。
　でもこれは現実げんじつであってゲームではない。
　もちろんラノベでもアニメでもない。

　ここはまぎれもなく現実げんじつで俺おれたちの生活せいかつ空間くうかんだ。
　そこをエルフちゃんが普通ふつうに歩あるいていく。
　めっちゃ目立めだつ。場違ばちがい感かんがすさまじい。

　俺おれが券売機けんばいきでカレーを買かう。

「私わたしもカレーにします。一度いちど食たべてみたかったんですぅ」
「おう」

　スカートの隠かくしポケットから小ちいさい小銭こぜに入いれを出だしてさらに小銭こぜにを出だす。
　ガチャンと券売機けんばいきに入いれて普通ふつうに購入こうにゅうした。

　券売機けんばいきの前まえにエルフちゃん。なんだこの絵面えずら。
　いやかわいいから絵えにはなるんだけど、すごい違和感いわかんがある。
　エルフちゃんも随分ずいぶん庶民的しょみんてきだこと。

　順番じゅんばん待まちの列れつに並ならぶ。
　前後ぜんごの子こが二に度ど見みしてくる。そりゃまあそうだろう。
　俺おれだって最初さいしょのとき玄関げんかんの外そとを三さん度ど見みしたもの。

「エルフちゃん？」
「いや北欧ほくおう系けいだって」

　また別べつの人ひとが同おなじことを言いっている。

「ここがガクショクとかいうアニメで見みた風景ふうけい」
「おう、そうだよ」

　順番じゅんばん待まちを消化しょうかしてカレーを受うけ取とる。
　給食きゅうしょくのおばちゃんも金髪きんぱつ碧眼へきがんなのを見みてびっくりしていた。

「外国人がいこくじんさんかい、えらい別嬪べっぴんだね」
「えへへ」
「たんとお食たべ」
「ありがとうございますぅ」

　トレーを持もって空あいてる席せきに二人ふたりで座すわる。

「いただきます」
「いただきますですぅ」

　スプーンを神妙しんみょうな顔かおつきで持もってカレーをすくって一口ひとくち食たべた。

「うぉおぉおん。美味おいしいですぅ。辛からさとスパイスの不思議ふしぎな匂においがしてとってもデリシャスですぅ」
「そりゃよかった」

　周まわりの人ひともなんだかホッとした顔かおをしていた。
　みんな注目ちゅうもくしていたらしい。

　そこからは一口ひとくち、また一口ひとくちと次々つぎつぎと食たべていく。
　俺おれも負まけないようにカレーを口くちへ運はこぶ。

「日本にほんのご飯はんはなんでもおいしいですねぇ」
「ああ、美味おいしいものが多おおいらしいね」
「そうなんですねぇ、羨うらやましいですねぇ」
「あはは」

　たまにお水みずを飲のみつつ、カレーを食たべ進すすめる。

「家いえでもカレーって食たべられるんですか？」
「ああ、レトルトもあるしルーも売うってるから作つくろうと思おもえば作つくれるよ。妹いもうとが入院にゅういんしちゃってからは一人ひとりだったんで作つくったことないけど」
「そうですかぁ、じゃあ今度こんどお願ねがいしてもいいですかぁ？」
「もちろん」
「やったぁ。おうちのカレーはどんな味あじか今いまから楽たのしみですぅ」
「そりゃ頑張がんばって作つくらないとな」

　楽たのしく初はじめての学食がくしょくでお昼ひるを食たべた。
　ちょっと人前ひとまえに出でてハラハラしたけど、なんとか大丈夫だいじょうぶそうだ。