■第だい４９話わ　エルフちゃんとゴールデンウィーク

　ゴールデンウィーク休暇きゅうかになった。
　といっても映画えいがを見みに行いくくらいしかすることがない。

　人気にんき監督かんとくのアニメ映画えいがを見みに行いくことにする。
　隣となりの埼台さいだい駅えきにある総合そうごう複合ふくごう施設しせつに映画館えいがかんが入はいっていた。

「えっとカップルなのかな」
「違ちがうと思おもう」

　俺おれとララちゃんとハルカとエリカなのでカップル券けんは使つかえない。
　どこからかエリカが貰もらってきた割引わりびきチケットがあったのでそれを使つかう。

　大だい災害さいがいから日本にほんを守まもるという男女だんじょの恋愛れんあい系けいのようなアニメ映画えいがだ。
　主人公しゅじんこうの高校生こうこうせいの男子だんしはひょんなことから不可解ふかかいな事件じけんに遭遇そうぐうする。
　その謎なぞを追おいかけるうちに一人ひとりの女子高生じょしこうせいと出会であう。
　女子高生じょしこうせいのヒロインはずっとこの大だい災害さいがいの発生はっせいを防ふせぐために長年ながねん苦労くろうをしてきたのだという。
　二人ふたりは協力きょうりょくし合あい愛あいの力ちからもあってそれで大だい災害さいがいの呪のろいを封印ふういんすることに成功せいこうする。
　という筋書すじがきみたいだ。

　映像えいぞうはとても綺麗きれいで昔むかしとはだいぶアニメに感かんじる雰囲気ふんいきも違ちがった。
　道理どうりでカップルばっかりだと思おもいましたよ。あはん。

　途中とちゅう右みぎのララちゃんとポップコーンの手てが当あたってしまってちょっと照てれたりした。
　なんだか薄暗うすぐらい映画館えいがかんの中なかヒロインと主人公しゅじんこうがいい感かんじになってキスをするシーンとか見みているとこちらまで女おんなの子こたちといい感かんじになりそうになったけど、自制じせいした。
　ちょっと手てをつないだくらいまでは許ゆるしてもらおう。
　怪物かいぶつが出でてくる怖こわいシーンがあったのだ。
　ララちゃんも反対はんたい側がわのエリカも手てが震ふるえていたからアレで正解せいかいだと思おもう。
　ただしそれ以上いじょうはしない。左右さゆうの子こといちゃいちゃしてももう一人ひとりのハルカが黙だまっていないだろうし。

　アイスカフェラテを帰かえり際ぎわにごくごく飲のんで、それからハンバーガーを食たべることに。

　店員てんいんがにっこり笑顔えがおのスマイルで聞きいてくる。

「ご注文ちゅうもんをお願ねがいします」
「あっえっと、あの、私わたしハンバーガー初はじめてで」
「あれそうだっけ、ララお姉ねえちゃん大丈夫だいじょうぶ？」
「頑張がんばりますぅ」

　頑がん張ばるでどうにかなるならいいんだけど。
　とりあえずみんなトマトレタスバーガーにしたようなのでララちゃんも「同おなじものを」と注文ちゅうもんしていた。かしこい。

　ポテトとハンバーガーと飲のみ物もののセットだ。
　さっきも飲のんだので今度こんどはソーダ水すいにしておく。
　ララちゃんもソーダが好すきなのでこういうときはソーダ水すいらしい。

　こうして手掴てづかみでハンバーガーとポテトをもぐもぐする。
　手掴てづかみでポテトを食たべるのに躊躇ためらっていたけど、みんながそうして食たべているのを見みたら真似まねしていた。
　郷ごうに入いれば郷ごうに従したがえとはよくいったものだ。

「えへへ、ポテトは手てで食たべるんですねぇ」
「そうだよ。エルフィール王国おうこくでは手てで食たべないの？」
「いえ、こちらにきてからフォークとナイフとお箸はしがあったので」
「向むこうはどうだったの？」
「お肉にくとかも手掴てづかみでしたよ。豪快ごうかいにこうパクッと」

　そう言いって手てで掴つかんで食たべる真似まねをしてくれる。

「女おんなの子こでもそうなの？」
「はいっ」
「エルフってもっとお淑しとやかなのかと思おもってた」
「それは偏見へんけんですよぅ」
「そっか、それはすまない」
「いえ、分わからないですよね。異世界いせかいなんて、あはは」

　こうして映画えいがを見みてハンバーガーを食たべてそれっぽいことはした。

　夜よる。

「お兄にいちゃん」
「ケート君くんぅぅん」
「どうした二人ふたりして」

　寝ねようと思おもったら部屋へやに二人ふたりしてやってきた。

「あのね、笑わらわないでね。あの映画えいがに出でてきた怪物かいぶつが怖こわいですぅ」
「そうなの。怪物かいぶつを思おもい出だしてしまいました」

　二人ふたりして震ふるえて俺おれにくっついてくる。
　さすがにこんなになっている子こを追おい出だしたりできない。

「今晩こんばんは一緒いっしょに寝ねてください」
「えっ、ああ……」

　一緒いっしょに寝ねる。今いままで実じつは頑かたくなに避さけてきたことの一ひとつだ。
　山やまキャンプのときは並ならんで寝ねたけど別々べつべつの寝袋ねぶくろだった。
　それが怪物かいぶつが怖こわくて一緒いっしょに寝ねてほしいという。
　さすがに震ふるえている子こを追おい出だすほど俺おれは鬼畜きちくではない。

「分わかった。いいよ、一緒いっしょに寝ねよう」
「ありがとうですぅ」
「やったあ」

　二人ふたりが俺おれのベッドにごそごそと入はいってくる。
　なんだか左右さゆうからいい匂においがする。二人ふたりの匂においは少すこし違ちがう。
　そう思おもうと途端とたんに恥はずかしくなってくる。
　左右さゆうから柔やわらかい体からだに挟はさまれてぽよんぽよんしている。
　妹いもうとも胸むねは薄うすいが体からだが全体的ぜんたいてきに柔やわらかいのだ。
　人肌ひとはだを薄うすいパジャマ越ごしに感かんじて、ドキドキしてくる。

「お兄にいちゃん、おやすみなさい」
「ケート君くん、おやすみなさい」

　左右さゆうからほっぺにちゅっと口くちづけをされた。
　俺おれはドキドキのピークでもうそれどころではなかった。
　すぅすぅ。
　左右さゆうから規則きそく正ただしい寝息ねいきが聞きこえる。
　どちらの顔かおも天使てんしのようにかわいい。
　無邪気むじゃきに寝ねているけれど俺おれはこの子こたちに信頼しんらいされているから一緒いっしょに寝ねているんだ。
　手てを出だしてはいけないとは言いわれていないしきっと手てを出だしても怒おこられないだろう。
　でも、と俺おれは最後さいごの壁かべを作つくる。
　妹いもうとと国際こくさい問題もんだいのエルフちゃんだ。どちらも倫理的りんりてきにはまずい。
　問題もんだいしかない。手てを出だすのはダメだ。
　それに俺おれたちはまだ成人せいじんでもない。
　俺おれは自分じぶんを律りっして左右さゆうに挟はさまれた天国てんごくで眠ねむりについたのだった。
　のだけど全然ぜんぜん眠ねむれねぇ。どうすんのこれ。俺おれは途方とほうに暮くれた。