■第だい２０話わ　エルフちゃんと期末きまつテスト

　一学期いちがっきももうすぐ終おわる。終おわる前まえには恒例こうれいの期末きまつテストがある。

　学校がっこうの放課ほうか後ご。

「景都けいとぉ、また前まえみたいに一緒いっしょに勉強べんきょうしようかぁ」
「なんだ、ハルカいいぞ。ララちゃんも一緒いっしょにやるよな？」
「はいですぅ」
「そうかそうか、よしよし……」

　ハルカがララちゃんの頭あたまをナデナデしている。
　ララちゃんも気持きもちよさそうに目めを細ほそめていた。
　なんだかラブラドール・レトリバーみたいだな。
　金髪きんぱつだから余計よけいそう見みえる。なんとも微笑ほほえましい。

「テストまであと一週間いっしゅうかんだもんね」
「おう」
「ララも頑張がんばりますぅ」

　ガッツポーズで決きめる。
　こうして家いえに帰かえり、ハルカを家いえに上あげる。

「お邪魔じゃましまーす」
「お邪魔じゃまされます」
「もうなによ、それじゃあ私わたしがお邪魔じゃま虫むしみたいじゃん」
「俺おれとララちゃんの愛あいの巣すなんでね」
「一緒いっしょに住すんでるだけのヘタレのくせに生意気なまいきな」
「そうだけどな」
「ふふ、そういう意味いみでは景都けいとのことは信頼しんらいしてるから」
「ああ……」

　幼馴染おさななじみだけあってお互たがいかなり信頼しんらいしあっている。
　この辺へんのことはララちゃんより絆きずなも強つよいのかもしれない。

「はーい、ララちゃん特選とくせん、ハーブティーでーすぅ」
「おお、さんきゅ」
「ありがとう、ララちゃん」

　みんなで居間いまのテーブルにつく。
　ララちゃんももうシステムキッチンを使つかいこなしていた。
　もう夏なつだ。冷房れいぼうを入いれて涼すずむ。

「あぁ外そとは暑あつかった。冷房れいぼうの風かぜ涼すずしぃ」
「ああもう冷房れいぼうなしの生活せいかつは考かんがえられないな」
「だよねぇ」
「昭和しょうわのおっさんは夏なつでも扇風機せんぷうきだったみたいだけどな」
「へぇ」
「昔むかしのアニメとかで見みたことあるだろ」
「あぁあ、確たしかに」

　うちは両親りょうしんが結婚けっこんしてから家うちを建たてたので冷暖房れいだんぼう完備かんびで断熱だんねつ効果こうかも高たかい。
　父親ちちおやは次男じなんで長男ちょうなんが家いえを継ついだらしい。
　屋根やねにはソーラーパネルがついていて停電ていでん時じでも電気でんきが使つかえるように蓄電ちくでんバッテリーも装備そうびしている。
　親父おやじが職業柄しょくぎょうがらの関係かんけいで災害時さいがいじへの備そなえなどにうるさいので、そういうこだわりがあるらしい。
　それからお風呂ふろは大人おとな二人ふたりぎりぎり入はいれるくらいの広ひろいタイプだ。

　ララちゃんもハルカも汗あせを掻かいてほんのりシャツが透すけている。
　白しろいシャツがペールオレンジになっていて、俺おれは視線しせんを泳およがせた。
　特とくに胸むねの谷間たにまのとこが気きになる。
　裸はだかよりなんかより、エロい気きがする。

「ぷはぁ」

　氷こおりを入いれたアイスハーブティーはのど越ごしも爽さわやかで生いき返かえる。
　ついでに俺おれの煩悩ぼんのうも消けし飛とばしてくれると、うれしいんだけどな。

「これ、ほんのちょっと酸すっぱくて美味おいしいね。ララちゃん、ありがとう」
「ハルカさんもさっぱりしたいと思おもいまして」
「いいねいいね、気きが利きく」
「えへへ」

　とにかく勉強べんきょう道具どうぐを出ださないと始はじまらない。
　ノートと教科書きょうかしょを開ひらき、勉強べんきょうを始はじめる。

　ハルカはそのクソ真面目まじめで成績せいせき優秀ゆうしゅうだ。
　ララちゃんは天然てんねんなのに地頭じあたまがいいから勉強べんきょうへっちゃら勢ぜいだった。

　俺おれはというとなんとかしがみついているといったところなので、秀才しゅうさい止どまりといえる。
　勉強べんきょうしないと頭あたまに入はいらないタイプだ。

「ここなんだけど」
「え、それはほらこうしてこうして、で代入だいにゅうして、ほら」
「ハルカさんきゅ」
「これくらい朝飯あさめし前まえよ」
「助たすかる」

　勉強べんきょうを進すすめていく。

「あの、ケート君くんとハルカさんって恋人こいびと同士どうしなんですか？」
「うんにゃ、幼馴染おさななじみだけど」
「うん。幼馴染おさななじみだけど恋人こいびと同士どうしではないね」
「えっえっ、幼馴染おさななじみなのに恋人こいびとじゃないんですか？　ララに気きを使つかわなくてもいいんですよ」

　前まえにエルフは幼馴染おさななじみと結婚けっこんするって言いってたもんな。そりゃあ勘違かんちがいもしちゃうか。

「ほんとほんと、キスもしたことないし」
「えっ」
「あれハルカとキスなんてしたことないよな、俺おれたち」
「小学校しょうがっこう二年生にねんせいの時ときにした……よ、景都けいと」
「覚おぼえてねぇよ」
「結婚けっこんしてくれるって言いってた」
「え、マジかよ」
「うん」

　ハルカが縮ちぢこまって顔かおを赤あかくしている。
　かわいいが俺おれはどうしたらいいのだろうか。
　全然ぜんぜん覚おぼえていない。あ、うーん、そういえば公園こうえんでなにか約束やくそくしたような。

「もしかして放課ほうか後ごのなかよし公園こうえんで」
「そう、それだと思おもう。思おもい出だした？」
「いや、全然ぜんぜん」
「もう。まぁ小ちいさかったしノーカンにしておいてあげる」
「おう、すまんな」

　正確せいかくに言いえば「仲良なかよしだ公園こうえん」じゃなくて「中吉田なかよしだ公園こうえん」だと知しるのはだいぶ後あとだ。
　ここと学校がっこうの間あいだにある普通ふつうのどこにでもある公園こうえんだった。
　よく小学生しょうがくせいが遊あそんでいて、砂場すなばやトイレ、遊具ゆうぐなんかがある。
　災害さいがい用よう倉庫そうこが隅すみに建たってるくらいで特とくに珍めずらしいものはない。

　そうか俺おれたちキスもしたし結婚けっこんの約束やくそくもしていたのか。
　ノーカンになったから今度こんどは真剣しんけんに考かんがえないとな。
　この年齢ねんれいだとシャレにならん。

「そういえばララちゃんの幼馴染おさななじみの男おとこの子こ」
「男おとこの子こ？　私わたしに男おとこの幼馴染おさななじみはいませんけど」
「あれ、ほら、ロイヤ君くんだ」
「うふふ。ロイヤは女おんなの子こですよ」
「えっ、そうなのか……ごめん、てっきり男おとこの子こかと思おもって誤解ごかいしてた」
「ううん、男女だんじょの別べつって響ひびきだけじゃなくて文化的ぶんかてきなものだから」

　おぉうララちゃん難むずかしいこと知しってるね。

「景都けいとだって、○○トは日本語にほんごだと男おとこの子こが多おおいけど、英語えいごのケイトKateなんてまんま女おんなの子こだよね」
「おう、ケイトな。飛行機ひこうきで親父おやじに会あいに行いくときたまに確認かくにんされるわ」
「でしょ」

　とにかく。ララちゃんには婚約者こんやくしゃになる男おとこの幼馴染おさななじみはいなかったと判明はんめいした。
　となると俺おれと結婚けっこんしてもいいということだ。
　これはあと腐くされなくていいな、と思おもう反面はんめん、俺おれにはハルカもいるわけで。
　むむむむ。
　これを選えらぶのは難むずかしい。
　ララちゃんは義妹ぎまいということにしてハルカと結婚けっこんすれば三人さんにんで仲良なかよく暮くらせるかな。そういう問題もんだいでもないんだよな。