◆５６．一緒いっしょに夕ゆうご飯はん

　この後あともう夕方ゆうがたなのでおばあさんに今日きょうの夕ゆうご飯はんは要いらないと連絡れんらくを入いれた。
　ザイールさんとミーティアさんが一緒いっしょにご飯はんを食たべようと誘さそってくれたのだ。
　場所ばしょは中級ちゅうきゅうの庶民しょみんの贅沢ぜいたくぐらいの宿屋やどやのご飯はんだ。お店みせは飲食いんしょく店てんも含ふくめてやっていない。
　主おもにプレイヤーと思おもわれる客きゃくで大だい盛況せいきょうだ。
　すでにお二人ふたりも普段ふだん着ぎで町まちの人ひとと目立めだたないようなやつに着替きがえている。

「皆みな何歳なんさいだ？　十五歳さい以上いじょうだな。よしではビール五つ」

　なんか勝手かってにビールにされてしまった。

「十五歳さい以上いじょうなら飲のめるんですか？」
「そうだぞ。そんなことも知しらなかったのか？　ああ、すまん。神かみの使つかいの冒険ぼうけん者しゃだったな」
「はあ、いいのかな」
「んー。まあ、いいんじゃない？」
「説明せつめいしょ書しょに問題もんだいないって書かいてありましたわ」

「俺おれたちは、領主りょうしゅお抱かかえの非常ひじょう時じ騎士きし、半分はんぶん冒険ぼうけん者しゃをやってる。デルタ第だい六予備よび役えき隊たいだ」
「そこそこ偉えらい人ひとなんですか？」
「まあ、そこそこだな。別べつにかしこまらなくていい」
「はい。ありがとうございます」

　ちょっと会話かいわしていると、すぐにビールがやってきた。

「それでは、皆みなの今後こんごの活躍かつやくを願ねがって、乾杯かんぱい」

「「かんぱーい」」

　全員ぜんいんでグラスをぶつけて乾杯かんぱいした。
　ビールは、そこまで苦にがいやつじゃなくて、炭酸たんさんも別べつにきつくはなかったけど、温あたたかかった。
　日本にほんのビールは冷ひやすのが普通ふつうなので、ちょっと想像そうぞうと違ちがった。
　クルミは「ぷはぁ」とかやっている。

「おじさんくさいぞ」
「えー。いいじゃん。ビール飲のんだら、一度いちどやってみたかったんだもん」

「でだ。レポリダイはどうだ？」
「ザイールさん、レポリダイってなに？」
「えっと、そこからか」

　ザイールさんとミーティアさんは世界せかいについて教おしえてくれた。
　レポリダイとは、この世界せかいそのものを指さすらしい。
　そしてここはカーディス大陸たいりく。他ほかにカーガン大陸たいりくが発見はっけんされているらしい。
　カーディス大陸たいりくのアデレイス王国おうこく、首都しゅとは前まえに登場とうじょうしたファインティアだ。
　この町まちはデルタ町まちで、領主りょうしゅの名前なまえは「エレノア・Ｋ・デルタ」。
　デルタ町まち周辺しゅうへんの村むらを含ふくめてサークル地方ちほうと呼よぶ。

「で、サークル地方ちほうは大昔おおむかしの大だい魔法まほうの爆発ばくはつだか隕石いんせきの衝突しょうとつの跡あとと言いわれてる。デルタ町まちはその中心ちゅうしんにあるんだ」

　だからサークル地方ちほうは周まわりを丸まるく崖がけで囲かこわれているカルデラ状じょうになっている。
　それで、出口でぐちは川かわが流ながれていく先さきがある。しかし出口でぐちの手前てまえは湿地しっち帯たいになっていて、敵てきが強つよいので、弱よわい人ひとたちは通とおることができないらしい。
　町まちの領主りょうしゅ館かんの前まえには転移てんい装置そうちがあるけれど、これは認みとめられた人ひとしか使つかうことができないそうだ。

「まあ、そういう訳わけで、ここは閉とじ込こめられてるんだ」
「そりゃ困こまりますね」
「でも金かねがあれば、たまに飛空ひくう艇ていが飛とんできたときに乗のせてもらえるぜ」
「飛空ひくう艇ていには一度いちど乗のってみたいです」

　料理りょうりが運はこばれてきた。
　フランスパンを切きった物もの。もっともこっちではフランスパンとは呼よばないけれども。
　トカゲ肉にくと野菜やさいのデミグラスシチュー。
　ウサギ肉にくの燻製くんせい。
　新鮮しんせん野菜やさいのサラダ、クルトン付つき。
　オムレツ風ふう卵焼たまごやき。

　結構けっこう豪華ごうかだ。卵焼たまごやき以外いがい、人数にんずう分ぶんある。

「ご馳走ちそう様さまです」
「なに、遠慮えんりょしないで。先行せんこう投資とうしみたいなもんだ」
「ありがとうございます」

　皆みんなでフォークとナイフで食たべる。
　もちろん、音おとをなるべく立たてないように、でも会話かいわはたまにしつつ。

「お肉にく、ホロホロだわ」
「ああ、ここのシチューはうまいぞ」

　そうそう、昔むかしのＭＭＯ－ＲＰＧだったらＢＧＭが流ながれてるんだけど、ＶＲ－ＭＭＯのコレは、ＢＧＭとかいうものはない。もちろんｗｅｂを表示ひょうじして動画どうがなり音楽おんがくなり流ながせば、自分じぶんには聞きこえるけれど。
　あとｗｅｂで生なま放送ほうそう系けいは六倍速ばいそくがあるため、正常せいじょうに表示ひょうじできない罠わながある。
　だから現実げんじつのファミレスで音楽おんがくが掛かかってるような場所ばしょとは雰囲気ふんいきもだいぶ違ちがった。

　前まえに泊とまった宿屋やどやはウサギ肉にくのホワイトシチューだった。ウサギは若干じゃっかん鳥とりっぽいのに対たいして、こちらはほぼビーフシチューだ。
　どれもおいしい。

　楽たのしい夕食ゆうしょくはもう少すこし続つづくんじゃ。