●６８ 角つのウサギブーム

　最近さいきん、角つのウサギを連つれている人ひとを見みるようになった。

「なんかね、ミレーユ先生せんせい。今いま、角つのウサギがブームなんだって」
「なんでまた」
「可愛かわいい顔かおだし、もふもふだよ」
「そっか、うん」

　調教師ちょうきょうしさんによるテイムという行為こういで人ひとに馴ならされた魔物まものは飼かうことができる。
　うちのポムもそれに近ちかいけれど、厳密げんみつには違ちがってただ私わたしの後うしろをついてくるだけという話はなしはしたと思おもう。

　角つのウサギは確たしかに顔かおはかわいいし、もふもふしてて手触てざわりもいい。
　色いろは白しろと茶色ちゃいろがいるけれど、人気にんきなのは白しろなんだって。

　それで子供こどもたちが食たべるために捕つかまえていたんだけど、今いまはちょっと様子ようすが変かわった。

「あのな、食たべちゃうより、ペットとして売うったほうが高たかく売うれるんだ」

　つまりペットとして売うって、その代金だいきんで魔物まもの肉にくなどを買かったほうが安やすいんだって。
　ということでウサギ肉にくを食たべる機会きかいはなくなったそうだ。
　バッグに生いきたまま、なんとか詰つめ込こんで、持もって帰かえってくる。
　ちょっとイメージするとシュールだけど、子供こどもたちにとっては真面目まじめなのだろう。

　そうして何匹なんびきもペットとして売うり渡わたしているうちに、一部いちぶでブームになっていたという話はなしだった。
　あとはテイマーの人ひとの仕事しごとだから、私わたしたちも管轄かんかつ外がいだ。

　確たしかに通とおりをハーネスにつながれた角つのウサギちゃんたちがぴょんぴょんしているのが見みえる。一応いちおう、放はなし飼がいにはしないらしい。
　スライムは賢かしこいから放はなし飼がいだけどね。というかハーネスのつけ方かたが分わからないし。

「だからウサちゃんたちが」
「ウサちゃんまた増ふえて」

　と角つのウサギが王都おうと内ないにいっぱいいる。

　角つのウサギも病気びょうきになったりするので、もちろん低級ていきゅうポーションを飲のませたりすることもある。
　あとポムみたいに薬草やくそうを食たべるのが好すきな子こがけっこういるみたいで、薬草やくそうを手てに入いれられないかという相談そうだんを受うけることもあった。
　そちらはメイラさんの管轄かんかつなので丸投まるなげしておいた。
　えへへ。

「シャロちゃんも欲ほしい？　ペットのウサちゃん」
「いえ、うちにはポムもいますし、ミレーユ先生せんせいもかわいいので」
「えへへ、かわいいって言いわれちゃった」
「先生せんせいもマスコットみたいですもんねぇ」
「そっかな、そっかぁ。シャロちゃんもかわいいけどね」
「まぁそうですね」

　お互たがいにテレテレしてほめる。
　うちにはポムもいるということで角つのウサギはいらないという結論けつろんになった。
　薬草やくそう食たべるのはいいけど、きっとポーションにしてくれたりしないと思おもうしね。
　もしかしたら特殊とくしゅなウサギの角つのに効果こうかがあるとかだとまた考かんがえようだけど。
　角つのウサギの角つのって実じつは生はえ変かわるらしくて、取とっても大丈夫だいじょうぶなんだって。
　それで民間薬みんかんやくには使つかわれているんだよね。
　民間薬みんかんやくってのは錬金術れんきんじゅつ未満みまんの薬草やくそう水すいみたいなものを指さすんだけど。
　もちろん一定いっていの効果こうかが認みとめられるものが多おおい。
　咳せきにも角つのウサギの角つのの粉薬こなぐすりは効きくという話はなしだった。

　民間薬みんかんやくは専門せんもんの業者ぎょうしゃさんが大量たいりょう生産せいさんしたりしているので、私わたしたちの出番でばんはないのだ。
　粉薬こなぐすりや薬草丸やくそうがんつまり丸まるく練ねったものが多おおくて、長期ちょうき保存ほぞんもしやすいのが多おおい。
　水みずで飲のむのがほとんどだね。
　これらは効果こうかが薄うすかったり特効薬とっこうやくだったりするので、私わたしたちとは住すみ分わけていることが多おおいんだ。

　錬金術れんきんじゅつはそのぶん、怪我けがに特とくに効きくポーションに特化とっかしていったんだよ。
　あとは錬金術れんきんじゅつには魔導まどう具ぐ製作せいさくもあるしね。
　やることは山やま積づみだ。

　さて、次つぎは何なにを作つくろうか。
　薬くすりにしようか魔道まどう具ぐにしようか。

「ねーるねるねる、ねるねるね」

　今日きょうも錬金術れんきんじゅつ、明日あしたも錬金術れんきんじゅつ。
　私わたしの錬金術れんきんじゅつ生活せいかつは毎日まいにち続つづいていくよ。