●６７ 咳せき止どめ薬やく

　王都おうとでは最近さいきん、冬ふゆだからか少すこし風邪かぜが流行はやっている。
　そうはいっても症状しょうじょうは軽かるいもので今いまのところ大丈夫だいじょうぶそうだ。
　それで主おもな症状しょうじょうが咳せきだった。
　咳せき止どめ薬やくを作つくろう。

「げほげほ」
「げほげほっ……」

　うちの店みせでも気きになる客きゃくが何人なんにんかいる。
　実じつはこの前まえから集あつめているアカシメジなのだけど、咳せき止どめの特効薬とっこうやくなのだ。
　それでまずは自分じぶんで採取さいしゅして、食たべても安全あんぜんなのか確認かくにんしていたのだ。
　一応いちおう、そのまま生なまでは逆ぎゃくに酷ひどい咳せき嘔吐おうとなどが出でる中毒ちゅうどく症状しょうじょうを起おこす。

　それで安全あんぜんに処理しょりできることが分わかったので、冒険者ぼうけんしゃギルドに採取さいしゅ依頼いらいを出だしてあるのだ。
　これをホーランド経由けいゆで買かい取とりをしていて傘下さんかの乾物かんぶつ屋やさんや何なんでも屋やさんみたいなお店みせで乾燥かんそう作業さぎょうから粉こなにするまでをやってもらう算段さんだんをつけてあった。

　ということで粉こなは私わたしの所ところに集あつまってきていた。

「これをポーションにします」
「「はーい」」

　三人さんにんでささっと作業さぎょうをしてしまおう。
　普通ふつうにモリス草そうの薬草やくそう水すいにアカシメジ粉末ふんまつを少量しょうりょう入いれて一煮立ひとにたちさせて馴染なじませる。
　あとはポーションみたいな作つくり方かたで大丈夫だいじょうぶ。

「はい、咳せき止どめ薬やく、完成かんせい」
「わーわー」

　普通ふつうのポーションは回復かいふくはするんだけど瞬間的しゅんかんてきだ。咳せきがずっと続つづくような時ときには使つかいにくい。
　この薬くすりならモリス草そうの含有がんゆう量りょうも少すくないので安やすい薬くすりができる。
　やはり目的もくてき別べつの特効薬とっこうやくのようなもののほうが、本来ほんらいなら汎用はんよう回復かいふく薬やくよりずっといいのだ。
　ただ特効薬とっこうやくは材料ざいりょうもそれぞれ異ことなっていて、何なん十じゅっ種類しゅるいとあるので、全部ぜんぶ作つくっていられないという。
　そんなことになったら私わたしは一日中いちにちじゅう、調薬ちょうやく作業さぎょうになってしまう。
　でも今いまは咳せき止どめ薬やくが必要ひつようそうなので、こうして生産せいさんしているというわけ。

　ついでにキノコが思おもいのほかたくさん集あつまった。それでアカシメジ粉末ふんまつがたくさんある。コクが出でる調味料ちょうみりょうとして販売はんばいしよう。
　もう粉末ふんまつになっている状態じょうたいであれば、毒どくはほとんど含ふくまれていなくて悪用あくようもできないから安心あんしんのはずだ。

　こうして王都おうとでは販売はんばいしていない咳せき止どめ薬やくが発売はつばいになった。

「咳せき止どめ薬やく、ください！」
「咳せき止どめ薬やくができたんだってねぇ、げほげほ」
「新あたらしい喉のどの薬くすりなんだって……」

　安やすいということもあって、軽かるい症状しょうじょうの人ひとがあっちこちから集あつまって買かっていく。
　ちょっとした大売おおうり出だしみたいになってしまった。

　今回こんかいの大売おおうり出だしはマジックバッグと違ちがって、メイラさんにも怒おこられなかった。
　一応いちおう薬くすりだし世間せけんの役やくに立たっているし、それからライバルの既得きとく権益けんえきの利害りがい関係者かんけいしゃがほぼいないのがよかったね。
　ポーションの売うり上あげが少すこし下さがっちゃうかもしれないけど、低級ていきゅうポーションだしね。

「このポーション、なんだ美味おいしくて」
「そうそう、なんか旨うま味みがあるんだよな」
「癖くせになりそう」

　とちょっとポーションに頼たより過すぎで、アカシメジの旨味うまみが気きに入いってしまった人ひともいるみたい。
　ささ、そういう人ひとには粉末ふんまつがありますので、鍋なべにしましょう。
　というふうに誘導ゆうどうをする。
　ポーションドランカーなんて駄目だめだよ。あんまりいっぱい飲のむと中毒ちゅうどく症状しょうじょうで死しんじゃうことだってあるんだから。
　これは絶対ぜったいに駄目だめだよ。