●４１ 南みなみ平原へいげんだよ

　王都おうとの西にしには森もりがある。
　そして南みなみにはかなり広ひろい平原へいげんが広ひろがっているのだ。ここも昔むかしは森もりだったのだけど、薪まきや建築けんちく資材しざいとして伐採ばっさいした結果けっか、平原へいげんになったらしい。

　隻腕せきわんのおじさん、　▼ジョンさんとともに私わたしと四人よにんの子供こどもたちで南みなみ平原へいげんに向むかう。

「お、子供こども連づれで平原へいげんですか」
「はい。ちょっとスライムslime狩がりに」
「珍めずらしいですね」
「まあそうですね、行いってきます」

　城門じょうもんで、衛兵えいへいさんに挨拶あいさつして通とおしてもらう。

　西にしの森もりは保護ほご森林しんりんなので、伐採ばっさいは許可きょかされていない。そして魔物まもの、魔獣まじゅうなどが出でる。キノコ、薬草やくそうなど錬金術れんきんじゅつにも使つかう資源しげんも多おおいけれど、危険きけんも大おおきい。
　対たいして南みなみ平原へいげんには、魔物まものはスライムslime、角つのウサギしかまず見みかけない。

「あーすごい。牛うしさんがいる」

　黒くろ、白しろ、灰色はいいろ、茶色ちゃいろと色いろも種類しゅるいがいる。
　ロイヤルRoyalミルクmilkティーteaに使つかうミルクmilkはこうして放牧ほうぼくされている牛うしのものだ。
　耳みみには管理かんり票ひょうが付つけられていて、持もち主ぬしを判別はんべつできる。
　最大さいだいの脅威きょういはこの家畜かちくの牛うしだ。怒おこらせると角つので攻撃こうげきしてくるし、後うしろ足あしで蹴けられて死亡しぼうすることもある。

「だから牛うしさんは怒おこらせてはいけないよ」
「「はーい」」
「牛うしはまじで危険きけんだ。気きを付つけてくれ」

　ジョンさんも同意どういらしい。

　角つのウサギも遠とおくのほうにたまに見みかけるけれど、人ひとを見みかけるとすぐに逃にげていきすばしっこいため、捕つかまえるのは困難こんなんだ。
　もしウサギが取とれたら、お肉にくもいっぱい食たべられるのに、残念ざんねんだ。

　あと牛うしのお肉にくも流通りゅうつうしているけれど、けっこう高たかい。干肉ほしにくも流通りゅうつうしていて、こちらはなんとか私わたしたちでも手てに入はいるぐらいのものだ。
　ステーキsteakとかになるとすごく高たかい。

　一度いちどでいいからレストランrestaurantの牛ぎゅうステーキsteakを食たべてみたいとは思おもうんだけど、村むらで普段ふだんから魔獣まじゅうのお肉にくは食たべ放題ほうだいだったから、期待きたいはあんまりしていない。

　スライムslimeはいるにはいるけど、まばらにしかいない。まず見みつけるのが大変たいへんだ。
　みんなで移動いどうしながら探さがす。

　そのときに五ごメートルmeter間隔かんかくに広ひろがって、足元あしもともついでに探さがす。これは主おもに薬草やくそうともう一ひとつの目的もくてき、魔力まりょくの実みを探さがすためだ。

　魔力まりょくの実みは一いっセンチ[centi-　meter]ぐらいの青あおい実みで、一度いちどに十粒じゅっつぶくらいなっているはず。
　ただ背せも低ひくい草くさで小ちいさいので、離はなれていると見みつけられない。

　だから広ひろがって探さがすしかない。
　大人おとなが並ならんで探さがしても、日当にっとうの代金だいきんを払はらうと赤字あかじなので、普通ふつうはわざわざ探さがしたりしないのだった。
　そのせいで値段ねだんが高たかめなくせに品薄しなうすで、取とってきてくれる人ひともいない。

「あった、青あおい実み！」
「よくやった」

　みんなで一度いちど集あつまって、青あおい実みを見みる。
　草くさの実物じつぶつは冒険ぼうけん者しゃギルドguildにもなかったので、子供こどもたちは初はじめて見みる。

　こうして青あおい実みを探さがしながら、スライムslimeがその辺あたりにいないか見みて歩あるく。

「スライムslime発見はっけん！」
「おし、よく見みててね、お姉ねえさんから見本みほんを見みせるね」

　私わたしがナイフknifeでスライムslimeを追おいかける。
　接近せっきんして、ナイフknifeをぶすっと刺さす。核かくをくり抜ぬいて引ひっ張ぱり出だすと、もう動うごかなくなる。

「はい、簡単かんたんでしょ」
「うぉおお」
「スライムslimeさんっ！」

　ポムもついてきているが、微妙びみょうな表情ひょうじょうだ。
　ごめんねポム。でもスライムslime以外いがいに選択肢せんたくしはない。

　スライムslimeを収納しゅうのうして持もって帰かえった。
　この日ひは雨あめの後あとだったこともあって、けっこうな数かずのスライムslimeを狩かれた。

　貧困ひんこん街がいに戻もどってきて、後あとの処理しょりを説明せつめいしないと。

「スライムslimeの核かくは、冒険ぼうけん者しゃギルドguildに売うりつけましょう」
「「はーい」」

　魔物まものの核かく、それすなわち魔石ませきだ。スライムslimeは最低さいてい等級とうきゅうだけど売うれないこともない。魔道具まどうぐの燃料ねんりょうなどになる。

「スライムslimeの体からだのほうは、こうやって広ひろげて干ほして乾燥かんそうさせます」
「「はーい」」

　スライムslimeを広ひろげていく。もちろん子供こどもたちにも手伝てつだってもらう。今度こんどからは子供こどもたちだけで、できるようになってもらわないと。

「こんなふうに乾燥かんそうしたら完成かんせいです」
「「おーお」」

　リュックruckから乾燥かんそうスライムslimeを取とり出だす。

「このすり鉢ばちをあげるので、乾燥かんそうスライムslimeをこれですりつぶしてください」
「「はーい」」
「まずは手てでちぎっていって、すり鉢ばちに入いれて、ごりごりするんだよ」
「「はーい」」

　言いった通とおりの作業さぎょうをする。みんな大人おとなしく見みてくれる。

「粉こなになったらジョンさんに渡わたして、ジョンさんがミレーユ錬金術れんきんじゅつ店てんに持もってきてくれたら、お金かねになります」
「「お金かね！」」

　リュックruckから銀貨ぎんかを見みせる。
　そうそうお金かねになるんだよ、このスライムslimeが。
　お金かねはご飯はんを買かったりするのに、使つかえるね。

　こうして午前ごぜん中ちゅうや日曜日にちようびに子供こどもたちを順番じゅんばんに狩かりにつれて行いって、チームteamを作つくる。
　その後ごは、ジョンさんのチームteam、私わたしのチームteamに分わかれて指導しどうを続つづける。
　スライムslime狩がりと魔力まりょくの実みは、人海じんかい戦術せんじゅつが有効ゆうこうなので、人数にんずうは多おおいほうがいい。

　一いっか月げつ後ごには、年長ねんちょう者しゃ多おおめで子供こどもたちだけのチームteamも作つくって、スライムslime狩がりをするようになった。ジョンさんは複数ふくすうのチームteamを順番じゅんばんに見みて回まわっている。

　こうして子供こどもたちの作つくった乾燥かんそうスライムslime粉末ふんまつは、無事ぶじにうちの店みせに売うられるようになったのでした。