●４０ 片腕かたうでの人ひとと鳥とり狩がりだよ

　貧困ひんこん街がいの人ひとたちとの話はなしはまだ終おわっていない。

「なんか病気びょうきとかひどい怪我けがとかしている人ひとを教おしえてくれる？」

　そう質問しつもんすると、こっちこっちと何なん人にんも紹介しょうかいしてくれる。
　低級ていきゅうポーションpotionとそれから中級ちゅうきゅうポーションpotionを、ひっそり取とり出だして使つかった。

「これは秘密ひみつですけど、中級ちゅうきゅうポーションpotionです」
「ありがたや、ありがたや」

　偽善ぎぜんっぽいけどいいんだ。やらぬ善ぜんよりやる偽善ぎぜんというし。
　ただしなるべく秘密ひみつということで、お願ねがいしたい。

　その怪我けがをしている人ひとの中なかで、片腕かたうでを失うしなって、その傷口きずぐちがまだ残のこっている人ひとがいた。
　急いそいで中級ちゅうきゅうポーションpotionを使つかって、傷きずを癒いやした。
　傷きずはふさいだものの、もちろん失うしなわれた右腕みぎうでは生はえてきたりしない。

「ありがとう。もう右腕みぎうでから全身ぜんしんダメになるかと思おもった」
「いえいえ」

「やはり右腕みぎうでの怪我けがが原因げんいんで？」
「そうだ。前まえは冒険ぼうけん者しゃだったんだが、利きき腕うでをやられちまってな。左ひだりは苦手にがてで引退いんたいしたんだが、仕事しごとがねえ。片腕かたうでだと見みせると仕事しごともさせてもらえない」

　こういう怪我けがの人ひとへの風当かぜあたりはかなり強つよい。

「なるほど」
「傷きずはふさいでもらった。ありがとうよ。なんか俺おれにできることがあれば、手伝てつだうけど」
「そうですね。子供こどもたちの訓練くんれんと引率いんそつをお願ねがいしてもいいですか。南みなみ平原へいげんでの」
「いいよ」
「あと、スライムslimeを乾燥かんそうさせて、それから粉こなにしてほしいんです。その粉こなを集あつめてうちの店みせまで定期ていき的てきに持もってきて換金かんきんする仕事しごとをお願ねがいしたいんです」
「おお、思おもったよりまともな仕事しごとだな」
「はい。お金かねなので、さすがに子供こどもたちだけというわけにもいかないでしょう」
「そうだな。俺おれがちゃんと管理かんりしてやるよ」
「ありがとうございます」

　この隻腕せきわんの人ひととは話はなしがついた。

「ではスライムslimeもいいけど、他ほかにも策さくがあるんです」
「え、何々なになにおねえちゃん」
「とっとと言いえよ」
「はやく、はやく」

　子供こどもたちに囲かこまれてたじたじだけど、次つぎを言いう。

「鳥とりを捕つかまえようと思おもいます。お肉にく食たべたいよね？」
「え、お肉にく！！」
「お肉にく、お肉にく、おーにーくー」

　子供こどもたちを連つれて自分じぶんたちの畑はたけへ向むかった。
　先日せんじつ、せこせこと鳥籠とりかご型かたの箱罠【はこわな】を六個ろっこ作つくったので、昨日きのうここの畑はたけに設置せっちしてあったのだ。
　箱罠はこわなはそれぞれ離はなして設置せっちしてある。

「罠わなは簡単かんたんです。箱はこになっていて蓋ふたがあって、鳥とりが入はいると閉しまって出でられなくなります」
「ふんふん」

　実際じっさいに箱はこの前まえで説明せつめいする。すでになんか動うごいている音おとがする。

「すごい、鳥とりが入はいってる」
「すごい、すごい」

　そして箱はこを回収かいしゅうして、中なかの鳥とりをナイフknifeで息いきの根ねを止とめる。
　子供こどもたちに解体かいたいの仕方しかたを説明せつめいしていく。
　今後こんごは自分じぶんたちでやってもらわなければならない。

　鳥とりさん　▼イワリスズメを解体かいたいするのは、ちょっとショックshockの子こもいるみたいだけど、お肉にくになるという誘惑ゆうわくには抗あらがえないようだ。

　こうして鳥とりさんは無事ぶじお肉にくになった。
　イワリスズメが全部ぜんぶで五ご羽わ。ひとつだけ罠わなには掛かからなかった。

　イワリスズメは中型ちゅうがたの鳥とりなので、少すくないながらも食たべるお肉にくが取とれる。
　土着どちゃくの鳥とりで一年中いちねんじゅう見みられるので、いつでも食たべられるということだと思おもう。

　畑はたけの隅すみで火ひをおこし、焼やき鳥とりにした。
　味付あじつけはシンプルsimpleに塩しおだけだ。貧困ひんこん街がいの子こにしてみれば、塩しおだってけっこう高たかい。
　胡椒【こしょう】は私わたしたちも食たべてるけど、貧困ひんこん街がいでは手てが出でないと思おもうので、今回こんかいはやめた。

　全部ぜんぶで十じゅう三さん人にん。五ご羽わを分わけると、それなりに食たべられた。

「お肉にくおいしー」
「おいしーおいしーね」
「お肉にくお肉にく」
「すごくおいしー」

　もうお肉にくと美味おいしいとしか言いわない。夢中むちゅうになって食たべていた。
　私わたしも一口ひとくちだけ貰もらった。お肉にくはやっぱり美味おいしい。
　普段ふだんは干肉ほしにくとかだけだから、こういう新鮮しんせんな柔やわらかいジューシー[juicy]なお肉にくは、王都おうとに来きてからほとんど食たべる機会きかいが無ない。
　田舎いなか村むらでは、魔獣まじゅうなどを狩かってくることがたびたびあったので、お肉にくは塊かたまりで手てに入はいったし、よく食たべた。
　実じつは食生活しょくせいかつは、貧乏びんぼうだと思おもっていたハシユリ村むらのほうが、ずっと豪華ごうかな食事しょくじだった。食事しょくじ以外いがいは貧乏びんぼうそのものだったけどね。

「ここの畑はたけに限かぎり、箱はこ罠わなを置おいていいから、鳥とりを取とっていいよ」
「「「やったー」」」
「「「すごーい」」」
「「「お肉にく」」」

　こうして子供こどもたちの食生活しょくせいかつに、お肉にくが加くわわった。