●３１ 中級ちゅうきゅうポーションpotionだよ

　七月しちがつになった。今月こんげつの土地とち建物たてもの代だい、それから布団ふとん代だい、あとは材料ざいりょう費ひ、マルボロさん夫婦ふうふの給料きゅうりょうとか全部ぜんぶ滞とどこおりなく支払しはらいができた。

　シャロちゃんも私わたしと同おなじ水準すいじゅんのミルルの実みを使つかった改良かいりょう型がた低級ていきゅうポーションpotionを問題もんだいなく作つくれるようになっている。
　けっこう魔力まりょくの入いれ方かたのコツを掴つかむのが難むずかしいので、思おもった以上いじょうにシャロちゃんは錬金術れんきんじゅつ師しの適性てきせいが高たかいようだ。安心あんしんだし、感心かんしんだわ。

　そして畑はたけ、中庭なかにわのルーフラ草そうが魔石ませきを与あたえたからか、予想よそう以上いじょうの生長せいちょうで、もう収穫しゅうかく可能かのうサイズsizeになっていた。
　もちろん一番いちばん売うり上あげが高たかいのはもっと倍ばいの葉はっぱ数すうぐらいになってからだけど、それまで待まっているのもだるい。
　まだまだ若葉わかばだけど、薬草やくそうとしてはもう十分じゅうぶんに使つかえるはずだ。

　葉はっぱの状態じょうたいを確認かくにんする。

「よし、いいね。いよいよ中級ちゅうきゅうやろうか」
「はいっ」
「ついにですね」

　マリーちゃんとシャロちゃんに確認かくにんする。まぁ意見いけん表明ひょうめいみたいなものだ。

　たまたま畑はたけの隅すみに生はえていた赤あかい木この実み、ボブベリーもある。これはミルルの実みみたいに、加くわえると薬効やっこうが安定あんていするようになる。中級ちゅうきゅうポーションpotionのほうが加くわえる魔力まりょくが多おおいのでもともと不安定ふあんていなのだ。だからボブベリーは必須ひっすだった。
　実際じっさいにはボブベリー以外いがいにもいくつかの植物しょくぶつが利用りようできる。

　中級ちゅうきゅうポーションpotionといっても基本きほんは同おなじ。薬草やくそうを水みずと一緒いっしょに煮にて、薬草やくそうから触媒しょくばいを水みずの中なかに抽出ちゅうしゅつする。
　煮にた薬草やくそう水すいに安定あんてい剤ざいとなるボブベリーを投入とうにゅうする。
　そこに癒いやしの魔力まりょくを注そそいで、薬草やくそうの回復かいふく効果こうかのある成分せいぶんとの相乗そうじょう効果こうかが重要じゅうようなのだ。
　魔力まりょくを注そそぐとやはり発光はっこうして、それから収束しゅうそくする。
　魔力まりょくを止とめて、薬草やくそう水すいに癒いやしの魔力まりょくが吸収きゅうしゅうされたら、発光はっこうが収おさまって完成かんせい。

「はい、これが中級ちゅうきゅうヒーリングhealingポーションpotionです」
「わあぁ」
「すごいです」

　はぁ。無事ぶじに完成かんせいしてよかった。必かならずうまくいくとは限かぎらないから。
　きれいな水色みずいろのポーションpotionは間違まちがいなく中級ちゅうきゅうポーションpotionだった。

　ちなみにポーションpotionの品質ひんしつとは一般いっぱん的てきには含ふくまれる癒いやしの魔力まりょく量りょうに比例ひれいしているといっていい。
　錬金術れんきんじゅつ師しは多おおかれ少すくなかれ、ポーションpotionの魔力まりょくを手てで持もったりすると観測かんそくできるので、それがただの薬草やくそう水すいかそれともポーションpotionか、どのくらいのポーションpotionかなどが判別はんべつできる。

　中級ちゅうきゅうポーションpotionは王都おうとでは、材料ざいりょうのルーフラ草そうをいくつかの偉えらい錬金術れんきんじゅつ師しの家いえで独占どくせん契約けいやくしていて、他ほかの錬金術れんきんじゅつ師しはルーフラ草そうを手てに入いれられないので、中級ちゅうきゅうポーションpotionの製造せいぞうもできなかった。
　そして商業しょうぎょうギルドguildに卸おろされている中級ちゅうきゅうポーションpotionを見みせてもらったのだけど、品質ひんしつはあまりよくなかったのだ。

　これはちゃんとした中級ちゅうきゅうポーションpotion作成さくせいが急務きゅうむだと思おもっていたのです。

「最低限さいていげん必要ひつよう量りょうは私わたしが作つくるけど、シャロちゃんもできるようになってもらいます」
「あ、そうですよね。自信じしんないけど、が、頑張がんばります……」
「マリーちゃんはボブベリーの確保かくほ、入手にゅうしゅ先さきを探さがすのをおねがいします」
「は、はいっ」

　ボブベリーはたくさん鳥とりさんに食たべられてしまい、年間ねんかんを通とおして使つかう分ぶんだと足たりないのだ。
　他ほかの代替だいたい植物しょくぶつでもいいけど、できればボブベリーがいい。
　違ちがうのを使つかうと品質ひんしつが安定あんていしないし、ポーションpotionが正ただしく作つくれるか分わからないからだ。
　文献ぶんけんや知識ちしきでは大丈夫だいじょうぶとなっているけど、それが正ただしいかはやってみるまで分わからない。

　午後ごごになった。メイドmaid服ふくでお店みせをやる。

『中級ちゅうきゅうポーションpotion、はじめました』

　という幟【のぼり】を作つくったので、お店みせの前まえに出だしておいた。
　マリーちゃんとシャロちゃんにお店みせをお願ねがいしてしまう。

「じゃあ私わたしはちょっとホーランドに行いってきます」
「あ、はい。いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」

　出来できたばかりの中級ちゅうきゅうポーションpotionを十じゅう二に本ほん、ホーランド商業しょうぎょうギルドguildに持もっていく。

「メイラさんいますか」
「はい。おりますよ。この時間じかんは空あいていると思おもいます」
「ありがとうございます」

　いつもの青年せいねんの受付うけつけ係がかりさんに呼よんできてもらう。
　やっぱり同おなじように、メイラさん自みずから出でてきてくれる。