●２０ 商品しょうひんを揃そろえようだよ

　錬金術れんきんじゅつ店てんをオープンopenしてから一週間いっしゅうかん経たった。
　弟子でしはまだ決きまっていない。

　少すくない種類しゅるいの商品しょうひんながら、なんとかお店みせを維持いじしていた。

　ちょっと工夫くふうして、大おおきいまとめ買がいのものを安やすく売うる。
　それから少量しょうりょうのものも用意よういして、単体たんたいの値段ねだんを安やすくして買かいやすくした。ただし大おおきいのに比くらべれば内容ないよう量りょうあたりの単価たんかは高たかくなってしまう。
　小売こうりではこういう対応たいおうも、意外いがいと重要じゅうようで評判ひょうばんはよかった。

　商品しょうひんの種類しゅるいが少すくないのは、大量たいりょうに販売はんばいできるものがあるとかならともかく、普通ふつうの店みせでは致命ちめい的てきだった。
　だから商品しょうひん数すうを増ふやすことにした。
　最終さいしゅう的てきには錬金術れんきんじゅつ商品しょうひんを増ふやすつもりだけど、今いまは簡易かんい錬金れんきん釜がましかないし、材料ざいりょうも揃そろっていないので、作つくれる錬金れんきん商品しょうひんは多おおくない。

　一般いっぱん商品しょうひんとしては、まずココアcocoaを入荷にゅうかした。砂糖さとうとカカオcacaoの粉末ふんまつだけど、かなりの高級こうきゅう品ひんだ。
　それから安価あんかな商品しょうひんとして、ハーブherbティーteaとフルーツfruitsティーteaを各種かくしゅ取とり揃そろえた。
　ミントmint、アップルappleミントmint、ペパーpepperミントmint、カモミールchamomile、ラベンダーlavender、レモングラスlemongrass、セージsage、ローズマリーrosemary、シナモンcinnamon、レモンlemon、オレンジorange、このくらいかな。
　ちょっとしたお茶ちゃ屋やさん専門せんもん店てん並なみの品しな揃ぞろえになりそう。

　中なかにはほとんど市販しはんされていなくて、草くさを買かってきて自分じぶんで錬金れんきん釜がまで乾燥かんそう作業さぎょうとかしたものもあった。

「いい匂においですね」
「マリーちゃん、こっちもいい匂におい」

　とにかく売うり物ものが増ふえる事こと自体じたいはうれしい。

　そして肝心かんじんの錬金術れんきんじゅつ商品しょうひんはというと、まずは人気にんきの高たかいオレンジorangeの匂においつけをした低級ていきゅうヒーリングhealingポーションpotionと練ねり薬草やくそうを用意よういしてみた。

「お、このポーションpotionいい匂におい」
「これならいいわね」

　ポーションpotionはあまり美味おいしいとは言いい難がたい味あじと臭においなので、それを工夫くふうするのは村むらでもしていた。
　余裕よゆうが出でてきたらやろうと元々もともと思おもっていたのだ。

　そしてどうしても値段ねだんが高たかくなってしまうけど、砂糖さとう入いりのポーションpotionと練ねり薬草やくそうもちゃんと用意よういしておりますよ。

　古人こじん曰【いわ】く「良薬りょうやく口くちに苦にがし」というけれど、錬金術れんきんじゅつ師しだってお店みせである以上いじょうは、サービスservice業ぎょうなのだ。
　味あじもちょっとはいいほうが、いいに決きまっている。

　ただし、砂糖さとう入いりでも甘あまくはなるけど、同時どうじに変へんな味あじもするので、完全かんぜんには隠かくしきれていない。現代げんだいの錬金術れんきんじゅつの限界げんかいだった。
　使つかう薬草やくそうがそもそも美味おいしい草くさとかでないと、この辺へんを改善かいぜんするのは、困難こんなんだと思おもわれる。

「砂糖さとう入いれてもあれなんですね」
「そうだよ。もっと研鑽【けんさん】が必要ひつようと言いう事ことでありますよ」

　これだけだとなんなので、錬金術れんきんじゅつじゃなくても作つくれるけど加工かこう品ひんを出だすことにした。

　蜂蜜はちみつと乾燥かんそうスライムslime、それからハーブherbを使つかった、のど飴あめだ。

「ね～りねり。ね～りねり」

　飴あめを練ねってそれが終おわると伸のばして、そしてナイフknifeで一口ひとくち大だいに切きっていく。それを手てで丸まるくする。冷ひえたら完成かんせいだ。

　蜂蜜はちみつは砂糖さとうほどではないけど、ちょっと高たかい。高級こうきゅう白砂糖しろざとうよりは安やすいので、使つかいやすい。
　しかし錬金術れんきんじゅつには、精錬せいれん度どの高たかい砂糖さとうのほうがいい場合ばあいが多おおい。
　蜂蜜はちみつはその成分せいぶんが問題もんだいになることがある。
　あと蜂蜜はちみつは乳幼児にゅうようじに与あたえてはいけないので、よく熱ねつを出だす子供こどもに与あたえることが多おおいポーションpotionの材料ざいりょうには使つかえない。

「きゅっきゅ」

　ハーブherbを使つかった飴あめはポムも好すきみたいで、よく要求ようきゅうしてくるようになった。

　飴あめを食たべるスライムslime君くん。本当ほんとうに雑食ざっしょく性せいだ。でも肉にくはあまり欲ほしがらない。
　あと無生物むせいぶつ、石いしとか木きとかは食たべないみたい。
　そういう変へんなものを好このむスライムslimeもいるという噂うわさは聞きいたことがある。

　決けっしてスライムslimeのペットpetは珍めずらしくはないけど、王都おうとにはあまりいない。
　それで、ポムを大好だいすきな人ひとが数人すうにん、毎日まいにちのように訪たずねに来くる。

「ポムちゃんいますかぁ」
「スライムslimeのポムちゃん」
「ポムちゃーん、お姉ねえさんが飴あめ買かってあげる」

　飴あめを二粒ふたつぶ買かって、一ひとつをポムに与あたえるお姉ねえさん。
　一緒いっしょに食たべるのがうれしいらしい。

　ポムも女おんなの子こは大好だいすきなので、よろこんで食たべている。それからちょっと踊おどったりしてサービスserviceしていた。
　なかなか現金げんきんなスライムslimeだと思おもう。