●１３ メホリック商業しょうぎょうギルドguildだよ

　朝あさ、普通ふつうくらいの時間じかんに朝あさご飯はんを食たべて、メホリック商業しょうぎょうギルドguildに向むかう。
　同おなじ轍【てつ】を踏ふまないように、ちゃんと、昨日きのうの帰かえりにメホリック商業しょうぎょうギルドguildに寄よってアポappo-イントメントintmentを取とってきたのだ。えへへ、えらいでしょ。
　ちなみにテツとは、轍【わだち】のことで、馬車ばしゃの車輪しゃりんの通とおった跡あとにできる凹へこみのことだよ。
　馬車ばしゃが轍わだちを乗のり越こえるとガッタンってなってお尻しりに響ひびくから、私わたしは苦手にがてなんだ。王都おうとに来くる途中とちゅうの道みちで酷ひどいところがあったんだよ。
　これにはポムもピョンピョン跳はねて、抗議こうぎしてたっけ。

　とにかく噴水ふんすい前まえに向むかい、そこにある冒険者ぼうけんしゃギルドguildのお隣となりさんのメホリック商業しょうぎょうギルドguildに到着とうちゃくした。

「すみませーん」
「はいはい」
「錬金術れんきんじゅつ師しのミレーユです」
「はい。約束やくそくは伺うかがっています。どうぞこちらへ」

　やった。すんなり通とおしてもらえた。
　受付うけつけの美少女びしょうじょメイドmaidさんに連つれられてギルドguild内ないへ奥おくの方ほうにある一室いっしつでちょっと待またされた。

「ようこそ、ミレーユ嬢じょう。よくおいでくださいました」
「いえいえ、そんな」
「ちゃんとワシらの商業しょうぎょうギルドguildも見みてくれるんですな」
「はい。公平こうへいに、ですよね」
「そうです。ありがとうございます」

　老ろう紳士しんしのボロラン・ロッドギンさん、そうそう確たしかそんな名前なまえだった。私わたしえらい。ちゃんと覚おぼえてる。
　それから少女しょうじょが大好だいすきな変態へんたいだという噂うわさが、これは商売敵しょうばいがたきのメイラさん談だんだけど。
　受付うけつけの美少女びしょうじょメイドmaidさんもちょうど私わたしと同おなじくらいの年中式〔ねんちゅうしき〕を終おえたばかりの女おんなの子こに見みえた。要よう注意ちゅういだ。しっかりとこの目めで見みて判断はんだんしよう。
　メイドmaidさんは短みじかいスカートskirtに長ながい靴下くつしたで足あしを強調きょうちょうしている。メイドmaid服ふくはやっぱりエプロンapronと胸むねを強調きょうちょうするようなデザインdesignだった。

「紅茶こうちゃはいかがですかな？」
「いただきます。王都おうとでは流行はやっているんですか？」
「わはは。ホーランドでも出だされましたか」
「は、はいっ」
「素直すなおでよろしいですな。紅茶こうちゃはここ数年すうねん、東国とうごくから入はいってくるようになったのです。扱あつかっているのはワシらの商会しょうかいでしてね」
「なるほど」
「お気きに入いりになりましたら、一缶ひとかんプレゼントpresentしましょうか」
「い、いえ、おかまいなく。宿やど暮ぐらしの身みでして、お湯ゆを沸わかすのも大変たいへんなので」
「そうですか。欲ほしくなりましたらいつでもお声こえ掛がけください。もし向むこうと契約けいやくした後あとでも有効ゆうこうですので」
「そ、そうなんですか」
「はい」

　老ろう紳士しんしは真剣しんけんな顔かおをして、見みつめてくる。
　うん、紅茶こうちゃおいしい。
　ちなみにポムも紅茶こうちゃは好すきみたいで、触手しょくしゅでミルクmilkと砂糖さとうを入いれて、スプーンspoonで混まぜてごくごく飲のんでいる。スライムslimeって案外あんがい器用きようで賢かしこいんだね。感心かんしんしちゃう。

「それで、ワシたちと契約けいやくしたら、錬金術れんきんじゅつ店てんを無料むりょうでお貸かしします」
「む、無料むりょうで、ででですか？」

　思おもわずどもっちゃった。無料むりょうときたか。このおじいちゃん。

「その代かわり、弟子でしを三人さんにんほどお願ねがいしたいのです」
「あーなるへそ」
「その答こたえかたはちょっと危あやうくはしたないので、止やめたほうがよいですな」
「こりゃ失礼しつれいしました」
「いえ、ジジイになると説教せっきょうくさくて、すまんな、つい」
「あはは」

　ついうっかりなるほどと思おもったので、素すで返かえしてしまった。危あぶない危あぶない。レディーladyは言葉ことばにも気きをつけなくちゃね。
　そうそうこちらでもやはり畑はたけの話はなしもしないとまずい。

「それで恐縮きょうしゅくなんですけど、畑はたけ、薬草やくそう園えんもお借かりできないかなと、あの無理むりでしたら、自分じぶんで、なんとかしたいとは思おもうんですけど、やっぱりあるのとないのでは大違おおちがいというか」
「そんなものは農民のうみんに栽培さいばいさせればいいのでは？　それを取とり次つぐのが商会しょうかい、商業しょうぎょうギルドguildの役割やくわりです」
「まぁそうなんですけど、うちで欲ほしい薬草やくそう栽培さいばいしている農家のうかさんなんていないと思おもうんです」
「ふむ、それはどういう」

　私わたしは必要ひつような種類しゅるいを説明せつめいしていく。

「知しらない薬草やくそうがありますね、確たしかにこれは無理むりかもしれません。担当者たんとうしゃなら知しっているかもしれませんが」
「そうですか」
「不勉強ふべんきょうで申もうし訳わけない」
「いえ、なんか村むらの薬草やくそうは外そとでは有名ゆうめいではないみたいなんですよね」
「はぁ、いやはや、さすが見込みこんだだけはある」

　老ろう紳士しんしは相変あいかわらず真剣しんけんだ。

「分わかりました。できるだけ広ひろい畑はたけを確保かくほしましょうギルドguildの威信いしんを懸かけても」
「そ、そうですか、ありがとうございます」
「契約けいやくは少すこし横よこに置おいておいて。少すこしよろしいですか。外そとへ」
「は、はいっ」

　どこへ連つれて行いかれるんだろう。ちょっと得体えたいが知しれないから怖こわい。
　後あとをついていくと、裏庭うらにわに案内あんないされた。
　そこまで広ひろくはないけど、薬草やくそうを含ふくむ色々いろいろな、いわゆる四季しき折々おりおりの花々はなばなが植うえられていた。
　中なかでもそこそこの大おおきさの一本いっぽんの木きの前まえへ連つれて行いかれる。
　あ、この木き知しってる。すごい。本当ほんとうにこれはすごい。ちょっと心こころがこちらに傾かたむくくらいすごい。
　なんか語彙ごい力りょくなくなるくらい、この木きはすごいんだよ。