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[総ルビ][中編]ウォーロック

1.パーティー追放(1)
●1.パーティーparty追放ついほう

 おれくろ魔術まじゅつウォーロックwarlockだ。
 けんのようなからだうごかかすのは、どちらかといえば苦手にがてだった。
 だからすすんでこのみちえらんだわけだが、この世界せかいウォーロックwarlockは、安全あんぜん後方こうほうから単体たんたい魔法まほう攻撃こうげきするだけの、卑怯者ひきょうものという烙印らくいんされ、さげすまされていた。
 くろふくくろローブrobeんで、あやしいつえアクセサリーaccessory装備そうびする姿すがたも、どちらかといえば、気味きみわる格好かっこうえる。
 かっているひとからすれば、とんだ風評ふうひょう被害ひがい勘違かんちがいのたぐいだが、一般いっぱんじんきびしかった。

 十二じゅうにさいころ、それを承知しょうちうえおれパーティーparty加入かにゅうさせ、ダメージdamageディーラーdealer任命にんめいしたのは、ほかならぬリーダーleaderドルボDorboのやつだった。

 それからねんあま経過けいか
 おれたちはAランクrankパーティーpartyにまでのぼめた。
 ギルドguild依頼いらいクエストquest農村のうそんったかえりにったまちだった。
 すこ高級こうきゅう宿屋やどやまろうとしたところ、主人しゅじん文句もんくわれたのだ。

「わりいな。卑怯者ひきょうものウォーロックwarlock一行いっこうさま宿やどめるわけには、いかん。ていってくれ」

 おれクラスclassてた主人しゅじんするどい。
 このかた田舎いなかではAランクrankだなんてらないのだろう。
 Aランクrankっている都会とかい高級こうきゅう宿やどではおれたちを贔屓ひいきしてくれているのにたいして、あつかいがせい反対はんたいだった。

 そしてリーダーleader擁護ようごしてくれるどころか、こうはなった。

「もういい。いちいちあしる。ルークLuke、おまえはクビだ。パーティーpartyから追放ついほうだ。さっさとどっかへいっちまえ。宿屋やどや主人しゅじん、これでいいだろ?」
「ぐぅ」

 おれなにえない。ぐうのないとはうが、ぐうのしかなかった。
 それにつづ言葉ことばおれらない。
 はなせないわけではないが、はなすのは苦手にがてだ。
 誤解ごかいなく正確せいかくに、相手あいて自分じぶん意見いけん理解りかいしてもらうのはむずかしいのだ。おれはそれをよく理解りかいしているから、こういうときには、なにえなくなる。

「ほら、どこへでも行け」

 宿屋やどやからほうされ、おれ一人ひとりる。
 いま十六じゅうろくさいになった。
 ドルボDorboとは固定こていパーティーpartyまえからのねんいになる。それを宿屋やどや主人しゅじんのたった一言ひとことで、すべての信頼しんらい関係かんけいかえった。

 おれはもっと治安ちあんわるそうなうら路地ろじかい、わけアリでも適当てきとうめてくれそうな安宿やすやどはいる。

「すまん。おとこ一人ひとり今晩こんばんめてくれ。さきばらいでいい」
「あいよ」

 愛想あいそわる受付うけつけのおっさんに銀貨ぎんかにぎらせると、かぎをもらう。

 むかしドルボDorboとよくこういう宿やどにお世話せわになっていた。
 それはもちろんウォーロックwarlockだったからもあるし、かねがないという意味いみでもある。

 パーティーparty共有きょうゆう財産ざいさんのほとんどはドルボDorbo管理かんり保有ほゆうしているので、おれすくない個人こじん資産しさんしかあるいていなかった。
 もちろん冒険者ぼうけんしゃギルドguildけば、すずめなみだのような貯金ちょきんはあるが、しろられるのは必至ひっしだ。

 本来ほんらいパーティーparty資産しさん四分よんぶんいちおれもらえるはずなのだが、そんなことも関係かんけいなく、一方的いっぽうてき追放ついほうされたのだ。

 おれはどちらかといえば感情かんじょうとぼしい。
 いつも第三者だいさんしゃてき視点してんで、自分じぶん俯瞰ふかんしている。

 こういうとき本来ほんらいならおこるのがすじなのだろうとは、理解りかいしているが、そんな感情かんじょう欠片かけらかない。
 あきらめているともいえるし、達観たっかんしているともいえるだろう。

 さいわいなことに、さき夕食ゆうしょく酒場さかばべていた。
 宿やどではるだけだ。

 やるせない気持きもちも皆無かいむではないが、なつかしい安宿やすやどほこりっぽい空気くうきつつまれて、おれねむった。



 翌朝よくあさ、さっそく活動かつどう開始かいしだ。
 ドルボDorboたちとくわすと微妙びみょう気分きぶんになるので、あさはやきたのがよかった。

 天候てんこうれ。
 おれあらたな旅立たびだちを歓迎かんげいしているかのような、すがすがしい天気てんきだった。

ソロsoloか。ひさしぶりだな……」

 まともなソロsolo十二じゅうにさい以来いらいだ。
 リーダーleader剣士けんしドルボDorboドルボDorbo彼女かのじょヒーラーhealerリーリアLiliaリーリアLiliaいもうとシーフthiefソシリアSocilia
 おれたち四人よにんなかのよいバランスbalanceれたパーティーpartyだった。
 ただしいもうとソシリアSociliaあね同様どうようドルボDorboのほうに好意こういせていて、おれはお邪魔じゃまむしあつかいされていた。

 もとから他人たにんあいされるようながらではないのは、承知しょうちしている。

 いまごろ三人さんにんでにゃんにゃんしているかとおもうと、へんわらいがてしまいそうだ。

「くくくっ」

 おもわずくちすと、とおりがかりの子供こどもへんひとで、おれけていく。
 いつものこととはいえ、くろ魔術まじゅつスタイルstyleわるい。

 適当てきとう露店ろてん朝食ちょうしょくませて、一人ひとりまちる。
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