その頃ころ、攻撃こうげき役やくを担になったレグルスの戦士せんし達たちは、占領せんりょうした第だい1砦とりでを拠点きょてんとして周辺しゅうへん地帯ちたいの魔物まものを殲滅せんめつしているところだった。

「負傷者ふしょうしゃには無理むりをさせず砦とりで内ないで休やすませろ！　体力たいりょくに余裕よゆうがあるメンバーは可能かのうな限かぎりでいいから、周囲しゅういの安全あんぜんを確保かくほに回まわれ！　イングリットがもうすぐやってくるぞ！！」

　クラウディオが砦とりでの頂上ちょうじょうから見張みはりをしながら指揮しきを執とっている時ときだった。

『――団長だんちょう！　敵てき要塞ようさいから増援ぞうえんらしきものが接近せっきんしています！』

　Aチームリーダーのエミリーが、ゲンロウガー内部ないぶからマイクを使つかって報告ほうこくした。

「なに、本当ほんとうかエミリー！？　数かずは！？」
『それが――たった一人ひとりです！　空中くうちゅうから接近せっきんしています！！」

――彼かれらが知しる予知よちはないが、少すくなくとも退却たいきゃくという選択肢せんたくしを選えらぶことにおいてはこの時点じてんで手遅ておくれだった。

『！！』

　敵てきはとうとうスコープで視認しにんできる距離きょりまで迫せまっていた。

『敵てきは……ハルピュイア一体いったい！　黒くろい羽はねのハルピュイアです！！』

　エミリーが見みたのは、黒くろい羽はね、黒くろい髪かみ、黒くろい衣服いふくと――全身ぜんしん黒くろずくめと呼よぶべき鳥形とりかた魔物まものであった。

『バルカンボウで迎撃げいげきします！！』

　バルカンボウは胴体どうたいに設置せっちされた連射れんしゃ式しきの矢や。主おもに小型こがた魔物まもの戦せんに使つかう武装ぶそうであった。
　今回こんかいの戦たたかいではまだ一度いちども使つかっていない武器ぶきだから、弾たま数かずには余裕よゆうがある。

『当あたれえええ！！』

　胴体どうたいからひたすらバルカンボウを撃うちまくる――無数むすうの矢弾やだまが飛とんでいくが、敵てきはそれを軽々かるがるとかわして肉薄にくはくしていく。

『無茶むちゃだエミリー！　バルカンボウは対地たいち攻撃こうげき用ようの武器ぶきだぞ！　飛とぶ相手あいてには当あたらない！！』

　ブライアンの制止せいし通どおりであった。

『でも、ゲンロウフレアー以外いがいで他ほかに飛とび道具どうぐはないんでしょ！？』

――その時とき、黒くろいハルピュイアがとうとうゲンロウガー本体ほんたいに張はり付ついた。

『しまっ――』
『張はり付つかれ――』

　二人ふたりが言いい合あっている次つぎの瞬間しゅんかん、それは悲鳴ひめいに変かわった。

『アァァァァッ！！』
『ウォォォッ！！？」

　ゼロ距離きょりから敵てきが雷かみなり魔法まほうを放はなってきたのだ。

「エミリー！？　ブライアン、アレックス！？」

　クラウディオのみならず、レグルスの仲間なかま達たち全員ぜんいんが動揺どうようしていた。

「――フフッ、いいざまだ」

　正体しょうたい不明ふめいのハルピュイアがとうとう言葉ことばを発はっした。共ともに雷撃らいげきを止とめて砦とりで頂上ちょうじょうに向むかって飛とんでいく。

「――お前まえッ！！　何者なにものだ！？」

　クラウディオは、即座そくざに激昂げきこうした。

「――こんにちは、トリスト人じんのクソ共ども。僕ぼくの名なは、シャドウ」

　冷笑れいしょうしながら放はなったその声こえに、クラウディオはさらに怒気どきを強つよめた。

「悪わるいけど、ホワイトエンペラー要塞ようさいを君きみ達たちに渡わたすわけにはいかない。だから――ここで死しね！！」

　シャドウと名乗なのったハルピュイアは、途端とたんに高こう高度こうどまで飛とび上あがった。

「――なにをする気きだ！？」
「わかりません！　一ひとつ言いえることは、ここに残のこるのは危険きけんです！　坊ぼっちゃん、急いそいで逃にげましょう！！」
「…………」

――辛つらい決断けつだんだが、今いまは安全あんぜんを優先ゆうせんするしかなかった。今いままで無敵むてきだったゲンロウガーを一撃いちげきで倒たおすような敵てきだ。ここに留とどまっていては、ヘタしたら砦とりでごと吹ふき飛とばされかねない。

「みんな、急いそいで逃にげろ！　きっとデカイ攻撃こうげきが来くるぞ！！」

――負傷者ふしょうしゃを連つれての退却たいきゃくは、無理むりがあるが、彼かれには見捨みすてられるはずがなかった。

「動うごけるなら急いそいで馬車ばしゃまで走はしれ！！　早はやくしないと――」

――その時とき、光ひかりの帯おびがこの第だい1砦とりでを襲おそったのだった。