設定を選択してください。

アリストーン・オンライン

#008. 小魔石のネックレス
 露店を見て歩く。

 女の子が水色のスライムがついたネックレスを売っていた。
 いくつも並べてある。

「いらっしゃい。スライムの欠片ありますか? 買い取りますよ。それからスライムネックレス、おひとつどうですか? お姉さん」

 ▼スライムのネックレス
  アクセサリー装備。攻撃力+5、魔法力+5

 +5がどれくらいなのかよく分からないが、可愛いので見た目装備かもしれない。

「欠片なら3つあるけど」
「じゃあ先、3つ買取で!」
「私はスライムの欠片なら7個あるわ。買取で」
「分かりました!」

 それぞれTEAで換金してもらう。

「ネックレス2つください。ひとつは彼女へプレゼント」
「分かりました」

 俺が2人分支払う。
 TEAは観光ガイドブックのあれで、結構持っている。

「はい、プレゼント」
「ありがとう。一生大切にするね! ルルちゃん、大好き!」
「あ、ああ」

 いきなり、大好きですか。
 もちろん愛の告白の好きではないことは分かっているが、鼓動が速くなるのは仕方がない。
 ラブラドールとかのペットに好意を寄せるような感覚だろう。

 にっこにこのタピオカさんを連れて、もう少し露店を見て回ったのだった。

 露店の数は思った以上で、全部をじっくり見て回ったら、かなり時間を消費してしまった。
 そして東から太陽が昇ってくる。朝日だ。

「あっ朝だね」
「うん。今日の部活はここまで。ありがとうございました~」
「ああ、夕ご飯とお風呂に入らないと」
「私も。準備終わったらまたゲームしようね」
「おお」

 なんか夢のような時間だった。

 俺たちはそれぞれ一度ログアウトした。


  ◇◇◇

 妹と夕ご飯を食べる。
 今は具などもしっかり入っていて多品目のレンジ用レトルト食品が充実しているので、夕ご飯も簡単だ。

 もちろん昨日の約束の通り、俺はコンビニでショートケーキを買ってきたので、2人でデザートにした。

「ごちそうさまでした。ケーキ美味しかったね」
「ごちそうさん」

「お風呂、お兄ちゃん先に入るよね?」
「ああ」
「終わったらすぐゲームするの? なんかずるい」
「そう言われても」
「そうだ、一緒にお風呂入れば、時間短縮に」
「バカ言うなよ。裸見られて平気なのか?」
「えへへ、やっぱだめか。恥ずかしいし」
「当たり前だろ」
「ふふーん。妹の体に欲情とかやめてよぉ」
「知らん」

 付き合ってはいられない。
 まあ妹も本気ではないのだろう。
 まだまだ胸もないのに生意気な。

 お風呂に入って部屋に籠る。

「リンクスタート」

 ゲーム内は朝日が昇ったばかりで、その光がまぶしい。

 王都には露店街が中央露店街、東門露店街、西門露店街、南門露店街とある。
 さっき夜にタピオカさんと見たのは西門露店街だ。

 今も西門広場の入り口にいた。
 広場の横に露店街がある。

「さて、どうしたものか」

 女の子であるタピオカさんが俺と同じ所要時間でゲームに戻ってくるとは考えにくい。
 今頃は妹のほうも湯船で伸びてるはずだ。

 俺も露店を開いてみるか。

 所有アイテムで売ってもいいのは、屑魔石、ストートの毛皮(白)とストートの毛皮(茶)というアイテム。
 それからだいぶ溜まってきたワイルドベリーくらいか。

 空いている露店の区画に入り、適当に商品を並べる。

 値段はエリスと相談して決める。
 相場よりやや安めで。最初なのでそれほどこだわりはない。
 売れればいい。

 呼び込みもしない。
 別にすごいアイテム売っているわけではないし。

 10分経過。お客さんは数人きたけど見ていくだけだった。

「お、ストートの毛皮売ってるじゃん。こんなにたくさん」

 お姉さんが立ち止まってくれる。

「い、いらっしゃいませ」

 もちろん口下手な俺は適当に愛想笑いを浮かべて接客する。

「うんうん。ストートの毛皮、茶と白。全部ください」
「え、全部ですか?」
「うん」

 全部だと100個近いんだが。

「これね服にできるんだ」
「服にですか?」
「そう。コートとスカートとズボンだね」
「なるほど。俺にもできますか、それ?」
「工作スキルが必要なんだよね。生産職だね」
「持ってないです

 ほほーん。
 生産職か。最初にノーマルプレイ縛りで除外したけど、そういうのもアリといえばアリなのだろう。

「そういえば夜にスライムネックレスの子がいました」
「ネックレスは確か合成だったね」
「なるほど」
「合成にも工作にも成功率があって、100%じゃないから、なかなか曲者くせものでね」
「ほう」
「だから生産職は専業で分業したほうがいいみたいだね」
「なるほどです。勉強になります」
「まあ、頑張ってね」
「ありがとうございました~」

 毛皮は売れたけど、ワイルドベリーと屑魔石は売れなかった。

 SNSツールに新着がついている。

 マキエ>ログインしました。夜もよろしくお願いします
 ルア>了解。西門露店街で露店してるけど閉じて入口に行くから待ってて
 マキエ>わかりました

 ふむ。露店をたたむ。
 アイテムをアイテムボックスに収納する。
 このアイテムボックスは容量がよく分からないがかなり大きい。
 ひょっとすると上限がないかもしれない。

 ちょっとWikiを調べてみると、スライムのネックレス同様、屑魔石でもネックレスが作れることが分かった。

 あの女の子がまだ露店をしているかもしれない。

「お待たせ。タピオカさん」
「こんばんは、ルルちゃん」

「それでストートの毛皮は売れたけど、ベリーと屑魔石は売れてなくて、もしかしたらネックレスの子が買ってくれるかもしれないので、露店へ行こうかと」
「分かったわ」

 またガシッと腕を取られて歩いていく。
 場所は覚えているので、大丈夫。

「すみません。ネックレス屋さん」
「夜来たお客さんだ。おはようございます」
「実は屑魔石でもネックレスができるって見て、売れないかなって」
「え? そうなのですか? スライムしか知らないです」
「そうなんだ」

 俺がホログラムの仮想端末でWikiを表示して、彼女に見せる。

「本当だ」
「屑魔石なら25個ある」
「けっこう溜めてますね」
「料金は後でいいから、合成してみてくれない?」
「分かりました」

 俺は彼女に屑魔石を渡す。

「ありがとうございます。あの成功率なんですけど50%ぐらいなので失敗してしまうかもしれません。いいですか?」
「いいよ。どうせ売れないしね」
「あぁ、あんまり売れないかもしれないですね、屑魔石は」
「そうなんだ?」
「はい。魔石の欠片なら合成すると魔石になるんですけど、屑魔石10個で魔石の欠片1個になるんです。それで成功率も50%ぐらいで効率が悪いんです」
「なるほどね」
「だから値段も魔石の200分の1くらいってことですね」
「そうなんだ」
「はい、今のところは」
「へぇ」

 とにかく合成だ。

 彼女が自分の前に屑魔石を20個並べて『合成』と唱えると、それが光って残りには「小魔石のネックレス」というアイテムが置かれていた。
 こういうアイテムも注目すれば名前が白いマーカーで表示される。

「できました! 小魔石のネックレスです」

 ▼小魔石のネックレス
  アクセサリー装備。魔法力+8

 まあ、悪くはないかな。
 スライムのネックレスは攻撃力+5、魔法力+5だったから、今はスライムのほうがいいけど、魔法職ならこれも悪くはない。

「それじゃあ残りの屑魔石5個、このネックレスは買い取ってくれる?」
「あ、はい。買い取ります。よろしくお願いします」

 俺は言い値で売ってしまう。
 俺たち以外にそれぞれの妖精さんもいて、値段は彼女たちのアドバイスのもと、適正っぽい範囲だったので即決だった。

「ありがとうございました」
「ああ、こちらもありがとう」
「またご利用ください。買取だけでも、よろしくお願いします」
「うん。ではまた」

 俺たちは適当に露店を見つつ、また入口に戻る。
 そのうち妹が来そうだ。

 お金もネックレスを買ったけど、また売ったので半分くらいの金額が戻ってきた。

 ネックレス屋さんも、屑魔石とスライムの両方のネックレスで商売できるほうが、広く売り買いできて儲かるといいな、と思う。

次の話を表示




トップページに戻る この作品ページに戻る


このお話にはまだ感想がありません。

感想を書くためにはログインが必要です。


感想を読む

Share on Twitter X(ツイッター)で共有する