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VRあるあるあるき

047.エルフの国
 醤油探しの旅を始めようと思う。
 まずは隣国から進めないといけない。
 このゲームでは、ワープの転移水晶が町に設置されているが、過去に行って登録した場所しか移動することができない。
 だから、結局どこへ行くにしても一度は歩いて、または馬車で移動する必要がある。

 商人も転移水晶は使えるが、馬車を転移させることができない。
 だから多くの荷物を抱えたNPCは馬車で移動することがある。
 俺たちは西隣のエルフの国、エルベイン共和国に行きたいので、馬車に同乗させてもらう。
 もちろん護衛として乗れば、逆にお金が貰えるので、商人ギルドに掛け合う必要があった。

 全員で10人、少し護衛としては多いが、若い女の子たちばかりと説明して、なんとかエルフの国まで馬車に同乗させてもらえることになった。

 旅の当日。準備は万全だ。
 今日は土曜日で全員、朝からのログインになった。
 というのも馬車で移動して、途中で一泊野宿があるのだ。
 半日行動だと、置いていかれてしまう。
 NPCたちに「午後からだけゲームしたいから、野宿を2日してくれ」なんて頼めるはずもなく、リアル午前、ゲーム夜、リアル午後と、ずっとログインしている必要があるのだ。
 そういう無理ができないプレイヤーは、普通に知人同士でパーティーで少しずつ進むこともできる。
 護衛の任務は足が速い強行軍ということになる。

「エルフ領まで、よろしくおねがいします」
「こちらこそ、よろしくたのむよ。いやあ、あれですな」
「なんです?」
「若い女の子ばかり、何人いるやら、男の甲斐性ですな。実に羨ましいですぞ」
「はあ、ありがとうございます」

 適当に話を合わせておくに限る。
 嫌そうな態度を取ったりして、微妙な雰囲気になると、2日間が辛い旅になってしまう。

 馬車は全部で4台のいわゆるキャラバンの隊列を組んでいた。
 馬車は種類によって、クーペ、ワゴン、バギー、カートとか呼ばれていて、現在でも車の名称に引き継がれている。
 俺たちも4台の馬車に分かれて乗り込んだ。
 荷物が奥のほうに積まれていて、その隙間にみんなで何とか乗る。

 ヒヒーン。
 馬がいなないて、列が進み始めた。
 俺は先頭の馬車で他にはオムイさんと妹のモエコの3人。
 俺たち以外には、馬に乗って先導をしてくれる凄腕のおっさんシーフのババロンさんとロインさんがいる。
 馬車で突っ込む前に、敵がいたら一人応戦、一人戻ってくるチームらしい。
 馬車馬の商人さんたちは、みんな中年ぐらいのおじさんたちで所帯持ちだった。
 川沿いを上流へ西進して、森の中をひたすら進んだ。

「オムイさんだっけ? 旦那さんは、毎晩とっかえひっかえかね?」
「い、いえ。私たちはまだそういう関係じゃないんですよ」
「ほほう。そうなのかい」
「そっちのモエコちゃんは?」
「わたしは妹なので、そういうのは」
「妹で何が悪い?」
「え?」
「え?」

「妹とヤッたって普通だろそんなの」
「おっちゃんマジなの」
「マジもクソもねえ。兄妹だって男と女さ普通だよ、普通。王様だってやってるよ」
「ああ、王様ね、ふうん」

 確かに兄妹で結婚するみたいな、王族とかたまにいるよね。ファンタジーとか中世以前とかだと。
 このゲーム部隊が異世界風だからだとしても、そういう倫理観で問題ないのだろうか。
 おっちゃんは馬車の運転に集中して、モエコとオムイさんがなにやら料理とかの雑談をしていた。
 俺はさっぱり分からない。

 途中で何度かはぐれモンスターが出てきたらしいけど、シーフのおっちゃんがやっつけていた。
 俺たちはアイテムボックスがあるので、それに収納した。
 具体的にいうと、お肉だ。

 夕方になり、いつも馬車を停める空き地に到着して、夜営になった。
 森の中だけど、薪を拾いに行くのも、それなりに危険だ。
 持ってきていた薪を出して火をつける。
 キャンプみたいなもの、というかマジもんのキャンプだった。
 この火にはモンスター避けの効果もある。
 料理は女の子たちに任せて、鍋と串焼きにしてもらう。

「うまい、うまい」

 商人たちはいつもとは少し文化が違う料理を美味しそうに食べていた。
 食事をしたら後は寝るだけだが、それが一番問題だ。
 俺たちは護衛であるから、順番に寝ずの番をして、警戒に当たる。
 他の女の子たちも、万が一モンスターが襲撃してきたときに対応できるように、ゲーム内で寝てもらう。
 もちろん先に一度ログアウトを済ませておく。
 NPCのおっちゃんたちはそのログアウトを不思議そうに眺めていた。
 ただ知識や町中でも見られる光景なので、質問したりはしてこなかった。

 俺たち先頭馬車組が最初の寝ずの番なので、そのまま起きている。
 俺、オムイさん、そしてモエコの3人で、火を番もしながら話をする。
 まぁたわいのない話だ。特に書くことはない。

「じゃあ、寝ようか」
「うん」
「わたし、お兄ちゃんと一緒に寝る」
「だめだ。オムイさんと一緒に寝ろ、お休み」

 こうして途中の野営は終わり、翌朝になった。
 朝ご飯を食べ、リアル側のために一度ログアウト休憩をして、再び出発した。

 馬車は揺られていく。そのうちに森が以前のよりも深くなっていた。木が単純に大きい。

「そろそろ着くよ」

 御者の商人のおっさんが教えてくれる。

 「ほえー」と俺、「ほうほう」とオムイさん、「ふふん」とモエコ。

 なかなか立派な木の門が見えてきた。
 横は同じように太い木の丸太でできた塀と堀が並んでいる。

 金髪の美形、美少女に見える兵士たちがいた。背は高めでみんな髪を伸ばしているのが伝統なのだろう。
 よく見ると髪の毛から尖った耳が出っ張っている。エルフだ。
 美少女エルフはファンタジーあるある、ザ定番種族なので、やっぱりいると嬉しい。

 町の中に入れてもらえると、木造の家々が何軒も立ち並ぶ。
 王都が石造りの家が多かったのとは対照的だった。
 異世界の中の、他民族って感じがビシバシしてくる。ビバ、異世界。ファンタジーだね。
 全員スレンダーで美少女ばっかりで、老人なんていない。
 スレンダーなのにおっぱいはそれなりにある。
 実際には何歳になるか分からないが、美少女の楽園って言う感じで目の保養になる。
 種族特性とはいえ、ずるい。

「エルフ美少女、羨ましい」

 モエコも俺に同感のようだった。

 護衛任務の報酬を受け取って、解散になった。
 町の商店街を見て回り、醤油、味噌がないか探して見たが、結論から言えば見つからなかった。
 ナンプラーで代用できそうで、臭いとかが生臭くとても無理らしいので、そちらも試してはいない。まぁナンプラーも見かけないのだけども。

「じゃあ、帰りましょうか」
「うん」

 オムイさんの指示は帰国だった。
 エルフの国、エルベイン共和国は、木の家に、金髪スレンダー巨乳美少女エルフの国だった。
 以上、さっさと国に帰る。
 クリスタル転移があるので、いつでも来れる。
 というわけで、我が家のある国へ帰ってきた。あ、まだ家は建てても借りてもいないので、厳密には我が家はない。

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