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VRあるあるあるき

042.PK
 タイトルが不吉だけど致し方ない。
 知ってる人は知ってる、俺ハーレムクラブ「あるあるクラブ」。
 妬むヤツはどうしてもいる。
 あと演劇のせいで、入部希望者もいるんだけど、枠がないので今は断っている。

 クラブには、クラブ員の活動、具体的に言えば、取得経験値に基づく、クラブ経験値というシステムがあって、一定以上集まらないと、クラブレベルが上がらない。
 現在俺たちのクラブはレベル2で人数制限が10人までなんだ。

 クラブスキルシステムもある。
 何かにプラス補正だけど、ドロップ率アップレベル1が今のところついてる。

 それでPKされそうになることがあった。
 朝飯をオムイさんと2人で楽しく食べていたら、刺されそうになった。
 避けたよ。
 ええ、自分でもよく避けられたなと思うわ。
 避けた後は、さすがのPKも逃げていった。

 PKに関して、デスペナについて書かないといけない。
 プレイヤーが死ぬと経験値が10%減になる。
 あと武器を盗むことができると書いたはずだ。
 武器を装備していて、取り落として死ぬと、武器は一緒に転送されたりしない。
 その場に落ちるので、PKにパクられる可能性がある。
 ポーションを手に持っていたら、ポーションも落ちる。

 でも今の俺は何も装備していないわけだ。
 完全に私怨だろう。
 俺のヘイトが高いらしい。悲しいことだ。

 街中でのPK行為も珍しいし、PKそのものも珍しい。
 顔は見なかった。覆面だった気がする。
 犯人は何もしゃべらないでいきなりナイフで攻撃してきた。
 俺はオムイさんと会話をしようとして、横を見たらちょうど間から犯人がこっちにナイフを向けているのを見えたから、ぎりぎりで避けたんだ。
 そうしたらやっぱり何も言わずに逃げていったよ。

 まぁ、これからはPKするやつもたまにいるということで、そういうゲームである以上、ある程度は受け入れないといけない。
 別にデスペナはそこまで強くはない。
 武器を落としたら悲しいが、なるべく手から離さないように気をつけよう。

 もうひとつ、目立つ公式イベントがあった。
 それは「第2回スクリーンショット大会」だ。
 劇の最終シーン、みんなでダンスして、俺だけ横でうなだれて見ているシーンの写真が準優勝した。
 撮影者は今回の劇で撮影を頼んだ、肉串屋のパーティーメンバーの人で、ベルイドさん。
 景品はミソランジュ金貨ペンダント。
 金貨に穴が空いてるわけではなくて、金貨をはめ込んだ枠に穴が空けられていて、チェーンで吊ってある。
 結構評価額が高いらしい。
 なんでもミソランジュ金貨は前国王の王妃ミソランジュ様をかたどったもので、王様の母親の金貨でもあり、発行枚数も少ないらしい。
 それを正式に貰ったのはベルイドさんだが撮影者ではなく写っている俺たち「あるあるクラブ」に譲ってくれたのだ。
 それで、今は俺のストレージに収納されている。噂では時価10Mらしい。

 スクショ大会なんて興味ない人も多いので、そこまで話題にはなっていないが、そこそこ有名と言えなくはない。
 前はPKされなかったけど今回は、変な勝手な恨みがある人が約一名いるようだ。

「タカシさんが可哀想ですぅ」

「まあな。でもちょっと狙われただけだよ。向こうも飽きればやめるさ。興味がなくなれば、俺なんかミジンコだ」

「でもタカシさんが狙われて、怖い思いしますぅ」

「VRなんだから、所詮仮想だよ。だいじょーぶ、だいじょーぶ。最悪でも死んでデスペナ食らうだけさ」

「まあ、そうですけど、でもー」

「今度来たら捕まえてみよう。協力してね」

「はいっ!」

 なんとかオムイさんを説得して、PKのことはこれで一旦終わり。
 俺たちは警戒しつつも、普段通りに過ごすことにした。
 PKされても最悪でも死ぬだけだ。
 クラブのみんなも俺のことなんて全然心配していないらしい。

 森へ行ってイノシシ狩りをして皮とお肉を集めることにした。
 レア枠の魔石と牙なんかも手に入った。
 そして帰ってきて、お肉を売り、皮を革にしてヘルメットとかに加工する。
 もう日課になっているけど、この国のフィールドを出ればこれも終わりだ。
 この辺の革製品は、第二陣の生産者に量産されているので、売れ行きも最近怪しくなってきた。
 もっと進めて、ワイバーン革のマントとか憧れだね。

 夕ご飯を食べようと、露店街を移動していたら、いきなり後ろからブスっとやられた。

「くうっ、痛てえ、オム子確保だ」

 俺は後ろから刺してきたPKちゃんの腕を掴んで動きを止める。

「オム子、ぴーけーさんを確保しますっ」

 オムイさん、ルルコ組が一緒だったので、全員でPKを羽交い締めにして、地面に押さえつけた。

「PKさん御用だ。顔を見せてもらおうか」

「やっ、やめてっ、あん」

 PKは小柄だった。少年だろうか。
 俺は顔面マスクをはぎとる。

「あっ、モエコっ」

「くっ、殺せ」

「お前な、何やってんだよ。妹よ」

 マスクの下の顔は童顔の美少女、そう俺のリアル妹だった。
 今年で23歳のはずが、高校生ぐらいにしか見えない若作りの顔だ。

「コミュ障の兄ちゃんが、ハーレムなんておかしいよっ。この女たちにだまされてるんだ。全部、たぶらかされた兄ちゃんが悪い。いっぺん死んで、目を冷ましてよっ」

「目ならバッチリ覚めてるよ。俺のハーレムは誤解なんだ。ほんとはこのオム子の弟子、妹クラブなんだよ。俺はただの引率の先生」

「なにそれっ、そんな言い訳して、兄ちゃんは、わ、わ、わたしのだもんっ。誰にも渡さないだからねっ」

 俺の妹は、ツンデレ気味なのだ。
 それにブラコンで、俺に彼女ができないのを素で喜んで俺を独り占めしている気になっていたのだろう。
 それなのにゲームを始めて、ハーレムしているところまでは突き止めたのか偶然知ったのか、それで気持ちが暴走してしまったと。
 ハーレムも誤解を説明したら、渋々ながら理解したようだ。
 本当に個人的な私怨だったわけだ。誤解もなくなり、一件落着。

 ハーレム逆恨みのストーカー男でなくて、本当によかった。
 毎日付け狙われたら、堪ったものではなかった。
 運営は基本、そういうのもユーザー同士、本人たちの話し合いでの解決を望んでいる。
 運営による垢BANは最終手段なのだ。強権であるし、一方的に行使できる代わりに簡単には発動させない、分別が品行方正な運営に求められている。

 これがインターネット革命期だったら、GMやGMを補助する運営ボランティアとかがいて、仲裁をしてくれたりする生徒会みたいな組織があるゲームも昔はあったらしい。
 それはまだプレイヤーもゲームに参加している一員という自意識があった最初のころのゲームだけだ。
 プレイヤーが完全にお客様感覚になると、プレイヤーの自治みたいな高等なことはできなくなった。
 大衆化はいいことばかりではないということだ。

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