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VRあるあるあるき

030.ボスとレア装備
 部屋を掃討し終わった。

「部屋の中よく見て回って。何かあるかも」

「通路と先にもうひと部屋あります。泉ですね」

「でかした。ルルコ」

「当然です」

 いびつな部屋なので、ぱっと見分からないが、確かに奥に部屋があった。
 小さな祭壇が置かれ、お供えものが数点置かれていた。他のプレイヤーの行為だろう。
 NPCかもしれないがたいした違いはない。

「泉、祭壇といえば、お金を入れるか」

 俺は1k硬貨を実体化して、泉に投げ入れる。

「「「おぉおお」」」

 俺たちを淡い青白い光が包み込んで、HPとMPが全回復した。

「見えないけど、妖精さんだな」

「これもあるあるなんです?」

「うん。たぶん」

 教会でお金を寄付しても、加護バフがついたりすることがある。
 泉の仕組みぐらいはWIKIに載っていると思うが、そこまで細かく予習はしてきていない。
 見ない派ではないけど、ほどほど派だ。困ったり、見た方がお得そうなときに見る。
 少しは冒険らしさの危険を味わってもいいじゃないか。

 他のメンバーはそもそもWIKIや掲示板を見る習慣がほとんどないらしい。
 師匠を頼りにしてるのもあるし、文字を追うのが面倒くさいらしい。
 その気持ちも分かる。

 敵を倒しながらさらに進むと、広場に出た。
 同じように、他の通路からも繋がっていた。
 道を間違えても、ここに出る、簡単ダンジョンらしい。

 人がいる。2パーティーが休憩をしていた。

「お疲れさん」

「おお、お疲れさまです」

 向こうから挨拶してきた。

「順番待ちですか?」

「初心者さん? ここ、パーティー単位で個別マップだから待たずに戦闘だよ。1回戦闘で死亡後15分でリポップするんだ。ボスマラだね。レア検証中だけど、噂通りあんまいいもんは出ないね。100回くらい戦えばなんか出るかもしれないけど。まあ必須でもないから、情報も少なくてさ。なんか出たら教えてくれ」

「分かりました」

 何万人もいればレアがあれば、それなりに当たりを引く人はいる。
 そういうのがあれば、レア狩りというボスマラソンをする人が出てくるので、噂になるか、掲示板、WIKIに情報くらい載るはずだ。
 そういうのがないということは、たいしたものは、出ないということだろう。
 WIKIを軽く見てみたら、一応のレアはそれなりにあるようだ。
 個人ごとに初討伐だと、レア補正がある。
 嬉しい情報だ。
 全ユーザーでの初討伐報酬で激レアアイテムとかもないようだ。
 長い運用期間で、最初だけ有利とか、後続者から非難されるだけのクソ要素である。
 小説は小説だから許されているに過ぎない。
 先行者有利はある程度あってもいいものだが、それを加速させる要素は、はっきりゴミと言い切れる。
 それよりは個人単位の初討伐報酬、レア補正だ。全プレイヤーに公平に機会がある、嬉しい要素だ。
 同じ単語だから混同している人もいると思うけど、しっかり区別して描写したほうがいい。
 初討伐が重要なので、マラソンにも意味がなく、さっきの人のように繰り返すのが趣味か検証が趣味の人以外は、マラソンする旨味がない。
 それであんまり混んでいないらしい。
 初心者用の訓練用ダンジョンだし、期待してもしょうがない。
 冒険者ギルドに初討伐を報告すると、少しお祝い金が貰えるらしい。
 いいのは、それぐらいだ。

 レア装備は最前線から見たら、下級装備だそうだ。

 俺たちは挑戦することに意味があるので、前へ進む。

 RPGあるあるのボス部屋への扉を開く。
 二重扉になっていた。
 両方いっぺんに開けられないようにすることで、インスタンス空間と通常空間の接続をうまく捌いている。

「準備はいいな。いくぞ」

「「おー」」

 ボス部屋に侵入したら、扉は閉まった。
 意地悪して開きっぱなしにすると、ボスは出てこない。
 あと出入りをしつこく妨害すると運営に注意されることもある。そんなことまで、検証した人がいると書いてあった。
 注意1回目は特にデメリットはないそうだ。
 よくないことを繰り返したり、特に悪質ならそれなりの対応があるものだが、暴言ぐらいだと何もないのが普通だったりする。
 基本はプレイヤー同士のめ事は、当事者同士で解決するもので、運営の強権を使うものではない。
 運営が動くのは、システム不備とかチート行為で、そういうのはBAN、アカウント停止、削除もあり得る。
 チートは不正であってそれ以上でもそれ以下でもない。
 ゲームのルールを犯す者には、それなりの対応があるだけだ。

 ボスは広い洞窟の上の隙間みたいな奥から落ちてきた。
 前に出すぎて潰されたら一発で死亡するかもしれない。
 ゴーレムだ。
 土人形の大きいの、としか言えない。

「アースゴーレムさんですね」

「うん。戦闘準備」

『人間たちよ我に勇気を見せその力を試してみたまえ』

「ゴーレムさんしゃべったん」

 ユマルが楽しそうだ。
 他の子も目を丸くしている。
 ボスはたまにしゃべる。RPGあるあるだと思う。

 土人形は150cmぐらい。ゴーレムさんは2mぐらいだ。
 大きいには大きいが、それほどではない。
 他のゲームや小説だと5mとかがザラなので、小型ゴーレムさんだ。

 動きもそれほど素早くなかった。
 腕を振り上げると、振り下ろし攻撃をしてくる。
 最初、ユマルが食らいそうになっていたけど、持ち前のネコみたいな俊敏さで避けて回避に成功していた。
 他のメンバーは、腕が上がったら後ろへ先に避けることにした。
 ユマルの「回避盾」というプレイだ。
 今までのPCゲームでは、単に回避補正が高ければ、当たっているように見えようが、攻撃がMISSとか表示されて当たらないだけの、お手軽ゲームだった。
 VRMMOでは、回避盾はほとんどプレイヤースキルだ。あんなの真似できない。
 こういう差は、ステータスとレア装備で俺TUEEEしたいだけの構ってちゃんからすれば、最悪の要素だ。
 本来はRPGはそういう身体能力に依存するタイプのジャンルではないので、救済措置ぐらいほしい。
 しかし身体アシストは開発中にあまりよいことがなかったらしく、開発は諦めたようだ。
 代わりに、敵の動きは遅めで、攻撃力も弱めまたは、防具が優秀というバランスにしてある。
 問題は残っていて、運動神経最強の人にPKされると、とても辛い。
 みんなで囲ってボコるくらいしか対応できないだろう。
 まあ、高級ゲーム機で垢転生できないゲームでPKなんてやれるだけの根性があるヤツはほとんどというか全くいないので、問題にはなってない。

 ユマルが避けて退いたら、攻撃チャンスだ。

「オム子、水よろ」

 オムイさんがウォーターショットを直撃させる。
 こう言うときの言葉は短いほうがいいので、どんどん省略される傾向にある。
 なんか、非常に効いてるみたいな苦しそうなアクション芸を披露してくれるゴーレムさん。

「師匠さすがです。めっちゃ効いてますよ」

「ああ、さすがオムイさん」

「えへへ」

 オムイさんも、ベタボメには照れるようだ。
 苦しんでるモーションの間は防御が固い。ゲームあるあるの常識なので、苦しむのが終わるのを目の前で待つ。
 イヤイヤを終えたゴーレムさんに、残りのメンバーが殴りつける。
 もちろん俺も槍を突き出して、その長さを生かして、顔に一撃入れる。

 そうすると小さくうなって、また腕の振り上げ体勢になった。
 みんなで避けて、正面にはユマルキャットが腕攻撃をひらりとまたかわした。
 できる子だ。えらいえらい。
 あとでたっぷり誉めてやろう。

 敵は別にパターンのみで動いたりしない。
 旧世紀では、アクションゲームを始め、ほとんどのゲームが固定の攻撃モーションでさらにご丁寧に予備動作まである。
 ゴーレムの腕を振り上げるのもその予備動作といえるが、いつも同じ訳ではなく、しゃべるだけの知性を少し感じる。
 AIによる制御は、パターンゲーをより複雑にした。
 予備動作的な習性があるのは開発の温情だろう。
 あまりに賢すぎると、それだけで倒せなくなる。ムリゲーになってしまう。
 力のごり押ししかなくなると、面白さも半減してしまう。

『おぉおお。我はもう動けない。力を認めよう。さらばだ冒険者よ』

「あーあ。ゴーレムさん死んじゃった」

 ユマルはまだ遊び足りない顔をしていた。元気なもんだな。

「師匠ドロップ出てますよ。拾っておきます」

「男の中の男、ゴーレムさんが死んだ

 強制転送でボス部屋前に飛ばされる。
 まださっきの人がいた。

 レア確認で見てもらう。
 きっと詳しいだろう。
 魔石中が1つ。ゴーレム石が6個。あとはゴーレムの心臓が1個。

「魔石中は当たり。高く売れる。ゴーレム石はノーマルドロップ。合成素材だね」

「はい」

「なに、ゴーレムの心臓!!」

「「心臓?」」

「なんか、凄そうです」

「これは俺も初めて見た。新装備だ」

「え。これ装備なんですか?」

「投石用の石だよ。非常に固い。使い回し可能と説明書きが。まあ、はずれかな」

「よっしゃあああ」

 専門家がハズレと言っても、喜ぶ俺。
 だって投石は俺の第一撃の常当手段だ。

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