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VRあるあるあるき

021.生産スキルとアーツ
 ゲームには大きく分けて2つの「○○勢」がいる。
 まず「エンジョイ勢」。中くらいのやる気と能力でチャットなどを楽しむタイプだ。
 VRではチャットシステムもあるが、ホログラムを開いて指や思考操作するのであまり流行っていない。
 異世界生活を満喫するのが彼らのポリシーなので、必死に戦闘したりしない。だからガチ勢から煙たがられることもある。

 次は「ガチ勢」。廃人一歩手前または廃人そのものだったりするゲーマー層だ。最強を目指し、攻略やデータ解析、システム検証などをする層になる。
 24時間ゲームのために生活する猛者もいる。
 エンジョイ勢から、恐い、キモイ、というように否定的に言われることが多数ある。
 両者は相容れないのが、ゲームあるあるになっている。

 そして第3の集団ともいえる「初心者層」「ライト層」。初心者は合わなければすぐにやめてしまう。
 無料ゲームではキャラメイクで満足して終わりにすることすらある。
 足を引っ張ることや無知からマナー違反をしたりすることもあるが、引退者が抜けた穴を将来、塞ぐのは彼らしかいないのだから、大切にしたい存在になる。

 生産はどちらかと言うとエンジョイ勢の範疇はんちゅうだけど、最終装備が生産品だったりするゲームでは事情が異なる。
 廃人は狩りでトップを走り、そしてサブキャラで自分用生産キャラも育てる。
 小説でよくある、優秀な生産プレイヤーと懇意になるというのは多くのゲームの場合「幻想」に過ぎない。
 結局全て自分で回すのが基本になる。
 これはサブの概念があるゲームばかりだからこういうことが発生する。
 本来はプレイヤー間が協力するようにゲームデザインされたはずが、禄な交流の機会をデザインとして取り込まなかったのが、敗因だと思う。
 露店は本来なら交流機会であったはずなのに、システム化したことで露店主の存在が、アイテムを売っている名前だけになり、会話も手渡し取引もしなくなった。
 販売者も購入者も顔が見えない取引だけの関係になったのだ。
 武器も別に生産者の個性があるわけでも何でもない、ただWIKIに書かれたいちアイテムで面白味もないので生産者の顔を意識することが稀になる。
 そうしてパーティーメンバーやクラブなどの身内としか話をしない生活をするようになる。
 そのうちクラブの仲間が順番に引退したら、ただ一人、孤独老人のように残される。
 もちろん一緒に他のゲームに移動したり仲良くなってリアルで付き合いのある関係になる可能性もある。
 ということでVR小説あるあるであるところの生産プレイヤーと運良く仲良くなるのは、本当にリアルラックがいいのだ。
 やりこみ具合が深くて交遊関係が元から広いリア充やイケメンには関係ない話だろう。
 ただしVRゲームにおいては露店が手渡し取引で会話をする余地があるので、仲良くなれる可能性は従来のMMOよりはかなり高いと思われる。

 このVRファンタジーはどうかというと、露店で売っている人はNPCが多い。
 生産プレイヤーはNPC露店に下取りで売ってしまうので、生産プレイヤーの顔は見えにくくなっている。
 もちろん自分で露店を出すことは可能だから、生産者の考えかた、ポリシーに左右されることになる。
 現にアベルボアの串焼き屋さんのお姉さんは本人がしかもその場で焼いてくれる。
 それは彼女が食べ物を売っているというのもあるけど、本人がロールプレイでそういう販売をしたいと考えてくれているからというのもある。
 俺とオムイさんの数少ない知り合いと呼べるプレイヤーだ。


 生産ギルドに着いたので、色々聞き出したい。
 まず調合ギルド、パン屋ギルド、装備ギルド、建設ギルド、農業ギルド、漁業ギルドなどの下部ギルドがある。
 生産ギルドは、冒険者ギルドのように、生産系ギルドをまとめる統括ギルドなのだ。
 冒険者ギルドには、魔法使いギルド、剣士ギルド、弓士ギルド、ヒーラーギルドなどのジョブ的なギルドを統括している。
 それ以外は、商人ギルドがまとめている海運ギルド、陸運ギルド、転移ゲートギルドとかがある。

 VR小説あるあるでは、生産ギルドにはレンタル作業場があり、あらゆる生産活動の道具が借りられる。
 実際のMMOでも同様の機能があるかは、よく知らない。
 あるような気もするし、そんなのなくて携帯調理器具などを使うのが普通のゲームのほうが多い印象もある。
 特に客の要望で修理とかするなら、作業場でされると武器などを生産者に貸し出して持っていかれてから、作業が必要になってしまう。
 それだと生産者にパクられる可能性がある。
 一点モノがあるゲームでは相当額のお金を一時的に預ければいいというわけにもいかない。
 持っていかれず、目の前で作業できるならそれに越したことはない。
 修理露店のように外で作業できる、携帯作業キットのほうがずっといい。
 製作であっても販売露店の隅でやってくれたほうが、店主と会えて修理依頼もしやすいから、客はいいに決まっていた。

 前置きが長すぎた。
 生産ギルドに到着したので、受付で聞いてみる。

「すみません。生産系の活動をしたいのですが、どうしたらいいでしょうか?」

「それでしたら、この生産スキル基本セットスクロールがおすすめです」

 またまた美人の受付嬢が答えてくれた。
 魔法を覚えたときと似たようなものらしい。

「お値段は10kラリルですが、リターンもそれなりにありますよ」

「分かりました。買います」

 残金17.6k。
 「生産スキル基本セットスクロール」を習得した。
 おまけで生産のガイドブックが付いてきた。
 これを見れば基礎中の基礎は分かるらしい。
 『スキル』がホログラム画面に生えてきた。
 そう「スキルが生える」という。
 なんでかって「スキルツリー」で木だから生えるんだ。

 生産系というスキルリストの中に、武器、防具、靴、服、調合、錬金、合成などのスキルができた。
 スキルの下位には『アーツ』というのがある場合もある。
 例えば武器には、武器作成、武器修理、インゴット作成、矢製造、などが含まれている。
 このスキルとアーツの組み合わせはVR小説あるあるだったけど、実際にそういう構成のようになっているゲームもある。
 スキルの上位概念としてスキルカテゴリや属性としてまとまっている場合もある。

 武器系統のスキルもあるんだけど、先に生産スキル系統を取ってしまったようだ。

「ブタの皮で何か作ってみるか」

「はい」

「レンタル作業場、貸してください。ここ2人で一緒に入ってもいいの?」

「問題ないですよ。相槌あいづちとか知ってますか? そういうのに必要なので」

「ああ、そうですよね」

 相槌とは、剣をハンマーで叩いて鍛えるときに、師匠が打った後、弟子も打つことで、向かい槌ともいう。

「1時間で4kラリルです」

「お、おう」

 残金15.6k。お値段半分こ。それでも結構キツい。
 個室に移動して、俺とオムイさんの二人きりになる。
 こういう場所でも緊張するのが童貞なのだ。
 ふはははは。

「じゃ、ん、じゃあ、靴作ろっか。サンダルだとちょっと防御力弱そうだし」

「そうですね」

「皮を革になめす加工をするんですね。毛とかも抜くんですか?」

「そうそう本来はね。でもゲームだから、その辺は省略して一気にできるみたい。毛だらけの縄文人の靴みたいなの履きたければ、皮のままでもいいんじゃない?」

「普通の革靴がいいです。ローファーみたいのがいいな」

「俺はどうしようかな。俺もローファーでいいや」

 皮を加工スキルで、製品に使える革にする。
 木槌で皮を叩くアクションが必要だった。
 的確に振り下ろさないと、ペナルティで粗悪品になってしまう。
 逆に最適な叩き方をすると、高級品になる。
 素材がぴかっと光って、すぐできた。
 スキルであるのでMPを消費する。
 MPは少し回復していたけど、ぎりぎりになりそうだ。

「次は自分の作りたい靴をイメージすればいいみたい。むむむ、ローファー来い」

「可愛いローファーがいいです」

 二人で革をスキルでローファーに作り上げる。
 革靴はリアルでは木型に革を押し付けて縫い合わすのが基本だけど、ここではまた木槌プレイだけで完成する。
 なんとも描写しづらい光景で革が靴に変化していって、俺のは四角い革靴みたいなのができた。
 彼女のは先端が丸くてすべすべの可愛いデザインのローファーが出来上がっていた。
 ちいさな革紐でリボンまで付いている。

「なんか完成の見た目が違うんだけど」

「イメージした結果に一番近い製品が選ばれるんですよね。きっとイメージが違ったんです」

「まぁ、俺も可愛いのにされると困るから結果オーライか」

「はい。やりましたね」

「1時間ってなってるけど、時間余ってるよな」

「どうしましょうか。お水でも飲んで休憩して、もう1足作りましょうよ。どこかで売ればお金になりますよ」

「そうだね」

 俺たちは、靴の種類の話をしたり、着たい服の話をしたりして、MPが足りるまで回復させた。

「同じ靴でいいかな」

「いいんじゃないですか? 防御力は同じみたいですし、デザインの問題でしょう」

「そうだよな。では、えいやっと、革靴できろぉおおお」

「ローファーできろぉおお、とんとんとん」

 休みながら、もう3セットずつの革靴とローファーが出来上がった。
 いや違った。お遊びで俺は縄文人毛皮ブーツも1足作ってみた。
 色は全部、茶色だった。

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