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VRあるあるあるき

015.孤児院と資源独占
 孤児院は、一般のRPGゲームではあまり登場しない。
 VRや異世界の小説などでは頻繁に登場するあるあるだった。
 孤児を育てて、冒険者にしたり、主人公が孤児院出身だったり、色々ある。

「孤児院行ってみようか」

「はい。孤児、いるんですね。悲しいです」

「本人が悲しいかは分からないけどな。親が暴力野郎なら孤児院のほうが幸せだ」

「なるほど。そういう見方もできますね」

「うん。部外者があれこれいうもんじゃないかもな」

「そうですね。すみません」

「ううん、行こっか」

「はい」

 教会を出て右側の孤児院に行った。

「知らないおじさんとお姉ちゃんだ」

 扱いの差に少し悲しくなる。
 なんで俺はおじさんで、オム子はお姉ちゃんなんだ。

「なにしに来たの? 人さらい?」

 6歳ぐらいの男の子だ。

「人さらいとか出るの? おっかない場所だな」

「ううん。ほとんど出ないよ。でも養子に貰われていくことがあるから、それを人さらいって呼んでるんだ」

「なるほど」

「おじさんたち子供ができない夫婦じゃないの?」

「違うな。ちょっと見に来ただけなんだ」

「ふーん。まぁ見学くらいは大丈夫だよ。適当に見てって。あと美味しいご飯とか差し入れしてくれるとみんな喜ぶよ」

 ちゃんとしている。

「おじさんたち今は貧乏で色々持ってないんだ。ごめんね」

「そうなんだ。なんもくれないなら、別にいいや」

「今は何もないけど、そのうちお金が貯まったら持ってくるよ。肉とか」

「お肉? お肉好き。みんな好きだよ。でもあんまり食べれないから、絶対だよ。持ってきてくれよ、よろしくな」

「ああ、持ってくるよ。子供は今、何人ぐらいいるの?」

「えっと、全部で24人かな。神父さんたちは5人だよ。ハーレムなんだって」

「ハーレム? 神父なのに?」

「うん。男は神父さんだけで、後は女の人が4人、全員神父さんのことが好きなんだってさ」

「ほほう、詳しく」

「昔、神父さんは強い冒険者でブイブイ言わせてて、みんな神父さんにれてお嫁さんにしたんだってさ」

「なるほど」

 ハーレム神父、許すまじ。
 でももうおじさんだったから、女性たちもオバサンかな。
 この国ではハーレムが問題ないことが分かって、俺は一つ賢くなった。


 神父にまた会った。

「神父さん、孤児院の子供たちに少ないですけど」

 俺はなけなしの1k硬貨を10枚神父に渡した。

「おお、ありがとうございます。これだけでも美味しいご飯を与えることができます。神はあなたたちの善良な行いを天から見届けてくれているでしょう」

 神父さんが神様を使ってなんかしゃべるのも典型なのかもしれない。

「じゃあ墓地気になるから行ってみよう」

「はい」

 墓地の地上部分には、芝生が植えてあり、古いのから新しいのまでお墓がたくさん並んでいる。

 そして中央に大きな墓石というか新しい碑石があった。
 碑石の裏には階段があるようだが、その前に全身鎧の兄ちゃんが二人、剣を携えて立っていた。

「何々、1435年。今年何年だっけ」

「今年は1450年だぞ」

 兄ちゃんの一人が教えてくれた。

 碑石の内容は要約するとこんな感じ。
 魔族との戦闘に多くの若い国民の男女を徴兵して、戦争状態になった。
 魔族の力はすさまじく、多くの国民が帰らぬ人となり人間界の人口は減少してしまった。人類の力の集結によりなんとか押し返すことには成功した。
 ここにその碑石を建て、後世にその悲惨な戦争の記憶を残す。

 町の人口が減っていたのはこのせいだったようだ。

「それで、お兄さんたちは何してるの?」

「地下墓地を封鎖している。ここは我ら黒竜騎士団が管理している。部外者は入ってはいけない。とても危険だ。ここで魔物の町への侵入を監視しているんだ」

「そうなんですか、ご苦労様です」

「うむ。お前たちもむやみに近づかないように」

「分かりました。オム子行こう」

「はい」

 俺とオム子は教会に再び入る。

「神父さん、墓地の人のところ行ってきました」

「そうですか。あいつらは墓地から魔物が出てくるのを監視してくれているんだが、それは半分建前なんです」

「といいますと?」

「墓地の地下にはアンデッドが徘徊はいかいするミニダンジョンがあります。そこのドロップ品を独り占めにするつもりなんですよ」

「あぁ、分かった。今この瞬間、すべてを理解した」

 これは『資源独占』「狩場独占」というやつだ。
 モンスターを独占して、そこからの利益を独り占めにする。
 一人で二十四時間張り付くことは困難なので、大きなギルド、えっとクラブがこういうことをすることが多い。
 今回は、監視しているという建前があり、神父さんも強気に出られないということは、何かしら後ろ盾などがあるのかもしれない。
 それでも「独占」には違いない。

 そういうプレイはたいてい嫌われるし、問題になる、あるあるだった。

 というようなことを、かいつまんでオム子に説明した。

「最低ですね」

「だろ。でもゲームでそういうことするやつは、結構多い。あるあるだ」

「本当に向こうからあるあるって寄ってくるんですね」

「ああ。迷惑だよな」

「はい。楽しくゲームしたいですね」

「そうだなぁ。まぁ墓地は大したことない感じだったしいいか」

「そういうことにしましょう。気にしてたら、疲れちゃいます」

「そうだそうだ。お肉が美味しいから、いいよな」

「はい」

 俺はアイテムボックスからアベルボアの串焼きを2本出して、一本をオム子に渡した。
 お肉は出来立てのように温かく、香ばしく焼けていて、赤身部分も脂身部分も美味しい。
 強めの塩コショウも効いていて、とってもいい。

 薬草がアイテムボックスに残っているけどまあいいか。
 このゲームのアイテムボックスの容量はかなり大きくて、全然困らない。
 ただあんまり入れると、中から探すのが困難になりそうだ。
 死にそうになって、ポーションを必至に探すとか、情けない。
 WIKIによると、ショートカットの代わりに、ベルトポーチシステムがあり、指定のポーションをセットしておくとすぐ取り出せて便利らしい。
 オム子も矢を入れておけば、取り出す手間が低減できるだろう。
 どこに売ってるんだろう。
 あと、値段がいくらになるかが重要だ。
 10kも寄付しなきゃよかった。
 今は自分に投資して、早くレベルも装備も強化したほうが、リターンが大きかった可能性が高い。
 早まったようだ。
 所持金残高は42.5kから11k減って31.5kラリルになった。

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