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謎スキル【キンダーガーデン】のせいで辺境伯家を廃嫡されましたが、追放先で最強国家を築くので平気です。

第8話 変身
「では、ジーク殿はじめるぞ」

 マナはひと振りの宝剣を取り出した。古来より大陸につたわる古式ゆかしき領主交代の儀式なのだそうだ。

 羊皮紙にお互いの血を垂らすと、俺の体は光に包まれた。

「あっ!」

 俺の体を包んだ光はすぐに消えた。そして、一瞬のうちに俺の頭の中にセミリア領に関するあらゆる情報が流れ込んだのだった。


「これで、領主の引継ぎは終了じゃ。ところで、ジーク殿のスキルは何かの? 土魔法が得意というから期待しておるのじゃが」

「それが【キンダーガーデン】なのですが

「ぷっつはははは! そんな訳あるか。何かの冗談じゃろう」
「冗談でこんなこと言う訳ないでしょう!」
「ん? ふむひょっとしていやまさか

 思わず、腹が立って言い返してしまったのだが、マナは俺の物言いに気を留めるふうでもなく腕を組んで首を傾げた。

「ジーク殿、額を出してくれんかの」

 俺はマナに言われるがまま、中腰になって額を突き出すと、マナは目を閉じて顔を近づけてきた。見た目幼児のマナに対し、不覚にもドキリとしてしまったのは内緒だ。

「ほう! 何と!」
「ど、どうですか!」

「さすが【聖騎士】と【大聖女】の血筋じゃの! ジーク殿のスキルは【キングガーデン】じゃ。まさかとは思うておったが、本当にあのスキルに会えるとはの!」

え? 【キンダーガーデン】じゃなくてでしょうか?!」

 俺は、嬉しそうにくるくる踊り出すマナをみても、首をひねるだけである。

「いかにも。そもそも【キンダーガーデン】とは力が覚醒するまでの、蛹(さなぎ)のような状態を指す呼び名じゃからの。最初っからそんな名前のスキルは無いぞ。というか【キンダーガーデン】という名を付けたのはわらわじゃし」
「え? どういうことか、さっぱり見えてこないのですが」
「うむ。実はわらわは、子爵家の出での

 マナの話によると、【キングガーデン】とはその持ち主を強大な王に導く特殊スキル。大陸中に繁栄をもたらすこのスキルは、まさに神の恩恵。しかし、せっかくスキルを得ても、その強大な力のせいで命を狙われる可能性がある。
 そこで、マナは700年ほど前に【キングガーデン】について書かれた書物を全て焼き捨て、このスキルの名を【キンダーガーデン】として子爵家に口伝として残したという。

「それにしても、なぜ【キンダーガーデン】にしたのですか?」
「【キングガーデン】とは王の庭。まさか子供の庭なら、大したスキルだとは思わんじゃろ。しかしそのせいで、幼児園の管理とは傑作じゃの」

「ということは、中央聖教会からの書簡は
「大方、子爵家からの指示じゃろう。教会が知らんのも当然じゃ。何しろ今の中央聖教会は、わらわが書物を焼き捨てた後に、大陸の主な教会が寄り集まってできたものじゃからの」

「そなたのスキルは、【聖騎士】と【大聖女】の力がぶつかり合って、無に帰したものなのじゃ。言い換えれば攻撃力と治癒力が互いに打ち消し合ったモノかの」
「それでは、力なんて何もないのでは」

「いや、覚醒すれば【聖女】や【騎士】以上の力はあるぞ。治癒と攻撃という相反する力を宿すスキルは、それだけでも凄いのじゃが、このスキルの本質はそんなものでは無い」
「というと?」
「所領を増やし、大きくなればなるほど本来の力が出る。多くの者に慕われて王として大陸を統べることができるじゃろう。ただし、キングすなわち国王就任しないことには真の力は覚醒せぬ。今はわらわから男爵領を受け継いだだけじゃから、力は目覚めておらぬがの」


◇◇◇


「ジーク殿は気付いておらぬようだが、今でも魔力量だけなら、大陸屈指じゃ。どれ、次はわらわを助けてくれい」

「どうすれば」
「何も深く考えるまでもない。わらわの頭をなでなでぽんぽんしてくれるだけで良いのじゃ。あとはこっちでやるでの」

 俺は言われるまま、幼女―――いや、男爵の頭をなでなでぽんぽんすると、マナはたちまち光の繭に包まれた。

“ブチブチブチビリッ!”

 中から何かがはじけるような音がしたかと思うと、中からボタンが飛び出してきた。


 そして


「きゃーん。殿方がおられるであろうが、エリンダ! は、はやく何とかせぬか!」
「し、しばらくお待ちを‼」

 光の繭がとけると、そこには十歳くらいに育ったマナが、全裸で現れたのだった。
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