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謎スキル【キンダーガーデン】のせいで辺境伯家を廃嫡されましたが、追放先で最強国家を築くので平気です。

第4話 襲撃
 しばらく進むと、小さな広場に出た。
 周囲を藪に囲まれたこの場所は、運のいいことに見通しがいい。

 反対側の藪に潜んで奴らの出方をうかがうと、果たして追っ手はすぐに現れた。

「おい、姿が見えねえぞ」
「チッ! あの野郎どこ行きやがった!」
「畜生、ここで逃げられちゃあ、元も子もねえぞ」
「とにかく探してブチ殺しちまえ!」

 二人の騎士が、俺の後を追って広場に足を踏み入れるのが見える。
 今まで無言で通してきたということもあり、立派な騎士に見えていた二人だが、このガラの悪さが本性なのだろう。

 俺は右手をかざし、魔力を込めた。

「大地の力よ、ぬかるみの元に導け。ドロップ」

 俺が小さく詠唱を唱えると、広場の一角がたちまち泥地になったのだが、二人は気付かぬ様子で広場を歩いている。今一歩タイミングが遅れたようだ。

「大地の力よ、ぬかるみの元に導いてくれっ、ドロップ!」

「おっ、うわっぷ、底なし沼か」
「たたた、助けてくれ~」

 俺は二人の首から下が完全に泥に沈んだことを確認するや泥を固めて尋問をはじめたのだった。



“ザンッ!”

 中々口の堅い奴らだと思っていたのだが、そうではなかった。
 目隠しをした後、無言で顔のすぐ近くに剣を突き立てると、二人ともすぐに顔色を変えて素直になった。こんな剣でも意外と役に立ってくれたようだ。

「す、すまねえ」
「何でも話すから許してくれ」
「頼む、このとおりだ」
「実はな……」

「……なるほど。お前たちが俺を殺すよう頼まれたことに間違いは無いんだな」

「あ、ああ……そうだ」
「正直に話したんだ。命だけは助けてくれ」
「頼むよ。俺には身重の嫁と幼い息子がいるんだ」
「俺の所もだ。出来の悪い息子なんだが、それが余計に可愛いんだ」

(俺も出来の悪い息子のひとりなんだがな!)

 俺の予想通り、今晩毒を盛って俺を眠らせた後、馬車の中で刺し殺す計画だったらしい。二人とも子爵領で盗賊を働き、釈放と引き換えにこの仕事を引き受けたようだ。

「お、おいっ、どこに行くんだ!」
「ここから出してくれるんじゃなかったのか!」

 俺とて命を狙われた者を自由にするほどお人よしでは無い。泥で固めているだけだから、明日には自力で脱出できるだろう。この辺りは魔物がほとんどいないのだし。
 いずれにせよ、この騎士……もとい、この盗賊たちは俺を殺して首を持って子爵領に帰ったとしても、辺境伯家の長男を殺害した罪で処刑される運命だったはず。逆に感謝してもらいたい。

「畜生、だましやがったな」
「話が違うだろうが、覚えてろ……って、どうか助けてくれよ~」

 俺は二人に背を向け、馬車へ向かった。


◇◇◇


 たき火のそばでは、フードを深々と被った御者が、じっと炎を見つめていた。

「……!」

 そいつは俺が近寄ると、びくっとしたように立ち上がった。
 改めて見ると、かなり小柄で華奢な体躯。腰に護身用の短剣ひとつ帯びているだけ。最悪組打ちになっても何とかなりそうだ。

「そう慌てるな。それより、護衛の騎士はどこへ行ったのか知らないか」

 俺は、カマをかけつつ腰を軽く沈めながら剣のつかに手を伸ばした。

「…………」

 無言で首を振る御者。

「お前たち三人は俺を殺すつもりだったそうだな」

 御者はびっくりしたように立ち上がって両掌をこちらに向け、ぶんぶんと振ったが、容赦するつもりはない。

「正直に言え」
「あうう……」

 俺は構わず剣を御者の喉元にあてると、深々と被っていたフードが落ちて小さな猫耳がひょこんと顔をのぞかせた。

「獣人……女か」
「あ、あう……」

 いくつか質問したのだが、どうやらこの御者はしゃべれないようだ。

 俺がクイっと顎に手を添えると、女御者は恥ずかしそうに眼を逸らした。どうやら声帯が傷ついているらしい。

「あの関所に駐屯する奴らを見たか」
「あ、あうう……」

 俺の言葉にコクコク頷く。
 馬車が関所を通過するや、弓兵が城壁に連なりこちらに向けて矢をつがえていたことに気付いていたようだ。

「子爵家に帰るには、あの関所を通らねばならない。ただし、お前が近づけば馬車ごとハリネズミにされるだろう。むろん俺を暗殺する計画に入れられている以上、たとえ子爵家に戻れたとしても、お前は殺されるだけだ。もはや後戻りできないと思え」

「あうう……」
「ならば、しばらく俺の言うことを聞いてもらおうか」

 俺は剣をすらりと抜いた。女を脅すのは嫌だったが、この御者が護衛の二人とグルでないという証拠は無い。

「お前も知っての通り、俺はこれからセミリアに行く。今から寝ずに駆ければ明日中には着くだろう。このまま夜通し駆けてもらいたい。むろん到着した後はお前の好きにすればいい。約束しよう。報酬は俺の今の手持ちの金、全部だ」
「あう、あう、あう」

 御者は必死に頷き、俺たちは出立しようと立ち上がった俺たちの耳に、森の奥から魔物の群れの咆哮が鳴り響いたのだった。

「ぐおおおおお〜ん!」

「ぐおおおおーーーん!」
「「ぎゃああ~っ!」」

 森全体を震わせるような咆哮の後、生き埋めにしておいた二人らしき絶叫が響いたのだった。
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