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🌎惑星の王👑~そのうちデッカイ星🌠を買ってやる~

第3話 プチ惑星の王
 ガイくんと一緒に彼の家に急いだ。
 二人とも雨でずぶ濡れになっちゃった。

 暗くて良く分からなかったのだが、近づくと彼の家が変わったものだと気づく。

「ガイくん、君の家わらぶき屋根じゃないか! えっ、なに? これいつの時代の家なの?」
「おう、この家は俺が自分で作ったんだよ! すげえだろう! 三千円で売ってたから買ってDIYしたのよ!」

 ガイくんが引き戸をガラガラと開ける。

 コンビニの自動ドアよりメンテナンスされているようで、扉を開ける音は不快ではなく心地よい。

「ほらよっ、体ふけよ」

 彼がタオルを投げてよこした。
 タオルはお日様の香りがして、肌触りがよく心地よい。

「さっそく、スペース地所へ電話しようぜ!」

 ガイくんが指をさしたところには、〇から九のボタンがついている古いアンティークな電話機が置かれていた。

 僕も廃品分別所に勤務しているから分かる。
 これは動けば、好事家が買ってくれる代物だ。

 だが、廃品分別所に送られてくるものは、だいたいが壊れていて動かない。

「おい、ガイくん、これ本当に動くのかよ?」
「ふふっ、これも俺が直したんだぜ! ちょっと電源のところのハンダが取れていただけだった。ちょいちょいっと直してやればな……この通り動くわけよ」

 ガイくんがスペース地所へ電話をかける。
 ピッポッパと電話機が音をたてた。

「はい、こちらスペース地所! おめでとうございますっ! あなたは一番目のお客様ですっ! 住所とお名前をどうぞっ! お引越しのための小惑星と軌道エレベーターの切符、さらに宇宙スクーターまでつけちゃいますっ! 切符は後日、お住まいのところへお送りしますっ!」
「俺の名前と住所はな……」

 彼の電話がおわると、今度は僕に受話器をさしだす。

「ほらよ、使い方は今見たとおりだ。お前も電話してみろよ!」
「お、おう……」

 恐る恐る電話をかけると、僕は二番目のお客様だったらしい。
 あれ? 意外とスペース地所人気ないのかな?

 電話している最中、あまりの好条件に疑問が頭をよぎる。
 軌道エレベーターの切符はくれるし、スクーターはくれるし……
 これ本当にマトモな惑星くれるのか?

「なあ、ガイくん、住所登録、君の家にしておいていい?」
「ああ、別に構わないぜ」

 手続きしていると電話が終わる。

 なんか怖かったので、ガイくんの家で住所登録しておいた。

「ねえ、ガイくん、君の家、広いよね? しばらくやっかいになっていい?」
「ああ、そりゃ構わねぇが、どうかしたのか?」

「ははっ、家賃払いたくないから、今のアパートに住みたくないんだよね。どうせタタミとテレビしか無いし」
「お前んちタタミあるのかよ! いいぜ、俺にも使わせてくれたら住まわせてやる。とりあえず今日は泊まっていけよ!」



 それから、一週間。

 コンビニでスペース地所へ十万円振り込んだり、廃品分別所のハゲおやじと色々話し合ったりした。

 僕がねちっこくガイくんの給料について尋ねると、事務のヤツが給料二万円を着服していたらしい……と言う事になった。

 本当の事は分からない。
 ハゲおやじが着服していて、事務のヤツに罪をかぶせたのかも知れないし、二人がグルの可能性もある。

 真相は良く分からなかったが、まあガイくんの給料が戻ってきたので良しとしよう。

 その後は、廃品の中から使えるものを分けてもらって、ガイくんの家で修理すると言う日々が続いた。

「実はよ、俺の家は骨董品屋をやっていてな。こういう廃品から使えるモノを探すのは得意なんだよ」
「へー、ガイくんはすごいね」

「お前ほどじゃないぜ。俺は給料をピンハネされていたのに気が付かなかったからな」
「ハハハ、僕はただの小ずるいだけのフリーターだよ」



 そして、軌道エレベーターの切符がスペース地所から届いた。

 片道切符なのがちょっと怖いが、ここまで来たら覚悟を決めるしかない。

 廃品分別所のハゲオヤジは、いつでも戻って来いと言ってくれたが、ここから俺たちのサクセスストーリーが始まるのさ!

 スペース地所と電話で話をして、二人分の値段でちょっと大きい小惑星をもらえないか交渉したところ、一番大きな小惑星を譲ってもらえる事になった。

 スペース地所……なかなか話が分かるじゃないか!



 起動エレベーターまで古い電車でガタゴトと移動してから乗り込む。

 切符をチェックされたあと、シートベルトをつけて宇宙へ上がった。
 重力がキツく「うおおおおおお」と二人で叫んだ。

 宇宙へ上がると、窓から感動的な景色が見える。

「うわぁ、ガイくん地球ってホント青いんだねー」
「あったりめえだろ! そんなことよりスクーターを係の人から受け取ろうぜ」

 スペース地所が費用をケチったらしく、二人で一つのスクーターしか与えられなかった。

 スクーターと言っても、小さい宇宙船の形をしており、ガイくんが免許を持っていた。

「なあ、コージ、お前免許ぐらい取れよ」
「わりぃガイ。ネットが復活したら通信教育で免許とるよ」

「じゃ、目的の小惑星までワープするぜ!」
「おお、ついに僕たちも惑星の王か!」

 スクーターがワープをする。
 星が流れていき、十秒後ぐらいに目的地へ着いた。

 スペース地所から買った小惑星には、確かに宇宙プレハブが建てられている。
 プレハブはドーム状の形をしている。
 小惑星は尾をひいており、太陽のまわりをまわっていた。

「おい、コージ、こりゃアイスって小惑星だぜ」
「アイス? ガイくんなんだいそれ?」

「要するに氷の塊よ! この小惑星はこのまま太陽の熱を浴び続けていると……やがて溶ける!」
「な……なんだってーーーーー!」

 とんでもない物件を押し付けられたのであった……

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