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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!
第5話F1「転生ポールマスター」
今日は日曜日。
俺は転生者で10歳ぐらいなので、教会で洗礼を受けることになった。
隔週の日曜日でこの洗礼の儀式が教会で行われる。
「次はハイル」
「はい!」
大きい声で返事をする。
後ろでは俺を拾ったリーリアが両手を握って、祈っていた。
俺は薄暗い洗礼部屋に神父とともに入る。
目の前には等身大の白い女神像があった。
ステンドグラスの上の明かり取りから女神像だけが光輝いていた。
「さあお祈りをするのです」
「あ、はい」
「女神様、俺にギフトをお授けください」
女神像と周辺がさらに光りだし、女神様が降臨する。
「ハイルのギフトは『ポール・マスター』です。よかったですね。よく励みなさい」
「ポール・マスター?」
「女神はいつでも、あなたを遠くから見守っています。今世では、よい日々が送れることを祈っております」
「ありがとうございます、女神様」
女神様の幻影が薄れていき、薄暗い洗礼部屋に戻る。
俺は転生し、ポール・マスターのギフトを得た。
◆◆◆
話はギフトを得る、3日くらい前に戻る。
あいてて、頭が痛い。
転んだか何かして頭を打ったようだ。
俺は気が付くと、平原の真ん中にいた。
「で、ここはどこなんだ。確か高校の帰り道を歩いていて、それで、そうだ!」
その時の光景を朧気ながら思い出した。
「……トラックにひかれて、血だらけで死んだはず。て、て、転生なのか」
自分の手を見てみると、手が小さい。
それから身長が低い。
「10歳ぐらい、だな、うん」
俺は男子高校生から10歳の男の子になっていた。
緑が生えている平原だ。
木々もまばらではあるが、生えている。
ある程度は遠くまで見える。
目を凝らして周辺を見てみると、遠くに川らしきものがあり、その向こう側に、町だ、城壁に囲まれたヨーロッパみたいな町のようなものがあった。
川には橋が架かっていて、商人なのか旅人なのか判別がつかないが人が渡っている。
それから馬車が一台、橋を渡って門から町に入っていくのが見えた。
「馬車……中世なのか、いわゆるファンタジー世界なのか?」
とにかく、ここにいてもしょうがない。
「話が通じるといいんだけど、行ってみるしかないか」
自分の格好は、普通の村人みたいな薄茶一色の目の粗い服とズボンだ。
学生服ではないらしい。
体が縮んでいるし、さすがに学生服のままなわけないか。
少し町の方向に歩いたところ、土がむき出しの街道にたどり着いた。
「路面はそれほど悪くないな。ちゃんと固めてあるし、溝もある」
馬車がすれ違える幅があり、左右の隅には気持ち深めに溝がある。
ここがただの道ではなく、手を入れてある街道である証拠だ。
道沿いに遠くに見える町まで歩いていく。
結構な距離歩いた。
「おい、そこの子供、止まりなさい」
に、日本語、ではないな。
聞いたことがない言葉だったけれど、意味はなぜか理解できる。
返事をしようとすると、同じ言語が頭に浮かんでくる。なんだこれ。
これが世にいう、転生チートの一つ「言語理解」のようだった。
「はい、なんでしょうか? 気が付いたら平原に倒れていて、それ以前の記憶がないのです」
「そうなのか坊主? 大丈夫か?」
「大丈夫か、大丈夫じゃないかといえば、大丈夫ではない……です」
「だよな、どうしたらいいんだ」
門番もこのような事態に困惑している。
「門番さん、お困りですか?」
後ろから来ていた少女、お、おお、かなりの美少女が声をかけてきた。
俺と同じくらいの身長なので10歳ぐらいだろう。
きれいなピンク髪をツインテールにしている。
胸は少し膨らみ始めたくらいで、将来性を感じさせる。
少しくすんだピンク髪の女性が少女の横に立っていた。
母親なのだろう。二人とも背中には薬草が入っている籠を背負っていた。
どうやら薬草採取の帰りらしいと当たりをつける。
「ああ、どうも記憶喪失らしくて」
「それはお困りですね。そうだ。私がお世話をしますから、通してあげられませんか?」
「そうですね。それならいいですよ」
「ありがとうございます」
俺がびっくりして彼女を凝視していると、そっと目を細めてから、ウィンクをしてくる。
かわいい。
「あっああ、ありがとうございます」
俺は見とれてしまっていたが、急いでお礼を言う。
「よかったな坊主、じゃあ通っていいぞ」
「はい、お疲れ様です。門番さん」
「はーい。次の人」
こうして俺はピンク髪の少女と門を通った。
「はい」
彼女が右手を差し出してくる。
握手かなと思い手を出すと、手を握られた。
そのまま歩き出そうとする。
「あなたはどこの誰ですか? 『自称』記憶喪失なんでしたっけ?」
「そ、そうなんだ! 記憶喪失になっちゃって」
「ふーん」
彼女は屈んで下から俺の目をのぞき込んでくる。
その青い瞳はらんらんと輝いていて、すごくきれいだ。
「私はリーリア、あなたは? 名前くらいありますよね?」
「俺は、その……」
俺は青山隆だったんだけど、そーだな。
せっかくだから、何か異世界の名前を考えるか。
「俺はハイル」
「ハイル君ね、よろしく!」
「ああ、よろしく。俺、どうなるの?」
「どうって、家も家族もいないんですよね? とりあえずうちにおいで?」
「うん」
おばさんはニコニコしてみているので、問題はないのだろう。
治安とかスリとか、子供が悪いことをすることはないのだろうか。
少し善良すぎる対応に不安を感じないわけではないが、好意には甘んじよう。
「ハイルのギフトもしくはジョブは何でしょうか?」
「え、ギフト? ジョブ? さあ」
「じゃあ洗礼はまだなのですね。何歳でしたか?」
「たぶん10歳ぐらいだと思うんだけど」
「そうなんですね……」
それから3日間彼女の家にお世話になった。
井戸、火のかまど、藁を敷き詰めたベッド。
町中には馬に馬車。馬じゃない鳥馬や飛べないアースドラゴンなどもいた。
まさに中世ファンタジー風世界だ。
俺は感動しつつ、若干の不便さも感じる。
特に夜はロウソクや魔道具の明かりもあるものの、貧乏人には暗くなったら寝るのが基本らしい。
食事のメインはジャガイモスープ。
少しだけ入っているベーコンの切れ端が塩味がしておいしい。
決して裕福ではないが、まだ異世界を満喫していた。
そして日曜日。
「ハイル。今日は日曜日で洗礼の日なの。ギフトが何なのか分からないのよね? 洗礼前なのでしょう。やってもらいに行きましょう」
「あ、うん」
こうして俺は洗礼を受けてギフト「ポール・マスター」を授かったのだ。
俺は転生者で10歳ぐらいなので、教会で洗礼を受けることになった。
隔週の日曜日でこの洗礼の儀式が教会で行われる。
「次はハイル」
「はい!」
大きい声で返事をする。
後ろでは俺を拾ったリーリアが両手を握って、祈っていた。
俺は薄暗い洗礼部屋に神父とともに入る。
目の前には等身大の白い女神像があった。
ステンドグラスの上の明かり取りから女神像だけが光輝いていた。
「さあお祈りをするのです」
「あ、はい」
「女神様、俺にギフトをお授けください」
女神像と周辺がさらに光りだし、女神様が降臨する。
「ハイルのギフトは『ポール・マスター』です。よかったですね。よく励みなさい」
「ポール・マスター?」
「女神はいつでも、あなたを遠くから見守っています。今世では、よい日々が送れることを祈っております」
「ありがとうございます、女神様」
女神様の幻影が薄れていき、薄暗い洗礼部屋に戻る。
俺は転生し、ポール・マスターのギフトを得た。
◆◆◆
話はギフトを得る、3日くらい前に戻る。
あいてて、頭が痛い。
転んだか何かして頭を打ったようだ。
俺は気が付くと、平原の真ん中にいた。
「で、ここはどこなんだ。確か高校の帰り道を歩いていて、それで、そうだ!」
その時の光景を朧気ながら思い出した。
「……トラックにひかれて、血だらけで死んだはず。て、て、転生なのか」
自分の手を見てみると、手が小さい。
それから身長が低い。
「10歳ぐらい、だな、うん」
俺は男子高校生から10歳の男の子になっていた。
緑が生えている平原だ。
木々もまばらではあるが、生えている。
ある程度は遠くまで見える。
目を凝らして周辺を見てみると、遠くに川らしきものがあり、その向こう側に、町だ、城壁に囲まれたヨーロッパみたいな町のようなものがあった。
川には橋が架かっていて、商人なのか旅人なのか判別がつかないが人が渡っている。
それから馬車が一台、橋を渡って門から町に入っていくのが見えた。
「馬車……中世なのか、いわゆるファンタジー世界なのか?」
とにかく、ここにいてもしょうがない。
「話が通じるといいんだけど、行ってみるしかないか」
自分の格好は、普通の村人みたいな薄茶一色の目の粗い服とズボンだ。
学生服ではないらしい。
体が縮んでいるし、さすがに学生服のままなわけないか。
少し町の方向に歩いたところ、土がむき出しの街道にたどり着いた。
「路面はそれほど悪くないな。ちゃんと固めてあるし、溝もある」
馬車がすれ違える幅があり、左右の隅には気持ち深めに溝がある。
ここがただの道ではなく、手を入れてある街道である証拠だ。
道沿いに遠くに見える町まで歩いていく。
結構な距離歩いた。
「おい、そこの子供、止まりなさい」
に、日本語、ではないな。
聞いたことがない言葉だったけれど、意味はなぜか理解できる。
返事をしようとすると、同じ言語が頭に浮かんでくる。なんだこれ。
これが世にいう、転生チートの一つ「言語理解」のようだった。
「はい、なんでしょうか? 気が付いたら平原に倒れていて、それ以前の記憶がないのです」
「そうなのか坊主? 大丈夫か?」
「大丈夫か、大丈夫じゃないかといえば、大丈夫ではない……です」
「だよな、どうしたらいいんだ」
門番もこのような事態に困惑している。
「門番さん、お困りですか?」
後ろから来ていた少女、お、おお、かなりの美少女が声をかけてきた。
俺と同じくらいの身長なので10歳ぐらいだろう。
きれいなピンク髪をツインテールにしている。
胸は少し膨らみ始めたくらいで、将来性を感じさせる。
少しくすんだピンク髪の女性が少女の横に立っていた。
母親なのだろう。二人とも背中には薬草が入っている籠を背負っていた。
どうやら薬草採取の帰りらしいと当たりをつける。
「ああ、どうも記憶喪失らしくて」
「それはお困りですね。そうだ。私がお世話をしますから、通してあげられませんか?」
「そうですね。それならいいですよ」
「ありがとうございます」
俺がびっくりして彼女を凝視していると、そっと目を細めてから、ウィンクをしてくる。
かわいい。
「あっああ、ありがとうございます」
俺は見とれてしまっていたが、急いでお礼を言う。
「よかったな坊主、じゃあ通っていいぞ」
「はい、お疲れ様です。門番さん」
「はーい。次の人」
こうして俺はピンク髪の少女と門を通った。
「はい」
彼女が右手を差し出してくる。
握手かなと思い手を出すと、手を握られた。
そのまま歩き出そうとする。
「あなたはどこの誰ですか? 『自称』記憶喪失なんでしたっけ?」
「そ、そうなんだ! 記憶喪失になっちゃって」
「ふーん」
彼女は屈んで下から俺の目をのぞき込んでくる。
その青い瞳はらんらんと輝いていて、すごくきれいだ。
「私はリーリア、あなたは? 名前くらいありますよね?」
「俺は、その……」
俺は青山隆だったんだけど、そーだな。
せっかくだから、何か異世界の名前を考えるか。
「俺はハイル」
「ハイル君ね、よろしく!」
「ああ、よろしく。俺、どうなるの?」
「どうって、家も家族もいないんですよね? とりあえずうちにおいで?」
「うん」
おばさんはニコニコしてみているので、問題はないのだろう。
治安とかスリとか、子供が悪いことをすることはないのだろうか。
少し善良すぎる対応に不安を感じないわけではないが、好意には甘んじよう。
「ハイルのギフトもしくはジョブは何でしょうか?」
「え、ギフト? ジョブ? さあ」
「じゃあ洗礼はまだなのですね。何歳でしたか?」
「たぶん10歳ぐらいだと思うんだけど」
「そうなんですね……」
それから3日間彼女の家にお世話になった。
井戸、火のかまど、藁を敷き詰めたベッド。
町中には馬に馬車。馬じゃない鳥馬や飛べないアースドラゴンなどもいた。
まさに中世ファンタジー風世界だ。
俺は感動しつつ、若干の不便さも感じる。
特に夜はロウソクや魔道具の明かりもあるものの、貧乏人には暗くなったら寝るのが基本らしい。
食事のメインはジャガイモスープ。
少しだけ入っているベーコンの切れ端が塩味がしておいしい。
決して裕福ではないが、まだ異世界を満喫していた。
そして日曜日。
「ハイル。今日は日曜日で洗礼の日なの。ギフトが何なのか分からないのよね? 洗礼前なのでしょう。やってもらいに行きましょう」
「あ、うん」
こうして俺は洗礼を受けてギフト「ポール・マスター」を授かったのだ。
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