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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第12話F5「ゴブリン遭遇」
 リーリアに家から出ていかないでくれ、と泣かれてしまった。
 俺は女の子には弱いので、受け入れるしかない。

 ということで、もうしばらくはリーリアの家にお世話になることになった。

 今日も朝ごはんを食べる。

 相変わらずジャガイモスープとサラダだ。
 まずくはないがこれだけだと、あまり成長は期待できそうもない。
 この辺の人は総じて、身長も横方向もあまり成長しないのは、そういう理由だろう。

「んじゃあ、行ってくる、リーリア」
「行ってらっしゃい、ハイル」

 玄関前で別れの挨拶をしていると、リーリアがガバッと抱き着いてくる。
 女の子のいい匂いがする。

 中身高校生であるところの俺にはちょっと刺激が強いが、彼女はまだ10歳なので俺とは距離感が違うのだろう。

「ちゃんとおうちに帰ってきてね」
「ああ、約束する」
「約束だよ」
「うん、じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃい」

 今度は放してくれた。顔も笑顔だ。

 気を取り直して、薬草採取をしよう。
 朝一番から行けば2往復して、昨日の倍近い量が採れるはずだ。
 昨日はギルドに行く時間からすでにちょっと遅かったので。

 その代わり家事などはすべてリーリアたちに任せっぱなしなのが、心苦しいけれど、これは役割分担ということにしよう。
 今日からは俺が採ってきた薬草も、リーリアたちと同じように家に持ち帰って、錬金術師に直接卸すことが決まっていた。
 余剰分が出たらギルドに卸すことになるが、そこまで採れるかはまだ分からない。

 のんびり街中を歩いていく。

 獣人奴隷ちゃんたちが、よく雑用をしている。
 井戸の近くで洗濯などをしていることが多い。
 そして「人」がくると場所を開けて、頭を必死にぺこぺこ下げていた。

 男の子の獣人奴隷は荷運びが多い。
 何人かがペアを組んでいて、そして指導担当にヒューマンが鞭を持って監視している。
 奴隷を開放しろとは言わないが、差別はあまり好きではない。

 彼らにも彼らの生活があり、下手に四民平等、奴隷解放などといえば、生活基盤が崩壊して野垂れ死ぬ奴隷ちゃんが出てくることは創作ではよくあることだった。

 俺はただの一般人転生者に過ぎない。

 ――見て見ぬふりをする。

 城門を通り、外へ行く。
 どうやら馬車や荷物を積んだ商人からは通行料を取っているらしい。
 俺たちみたいなただの旅人や市民は素通りできると学んだ。

 全員無料だったら警備もいらないんでは、と思っていたので、納得した。

 朝一番は草原に誰もいなかった。
 ほかの人は家事があるので、午後からだったり日が高くなってからくる人が多いのだ。
 専業で薬草採取をしている人は少数派のようだ。

 俺は意気揚々と薬草をナイフ槍で収穫していく。
 バッグには縦に並べて入れていくと、隙間なく詰めることができる。

 薬草を採りつくすような気がしてしまうが、薬草というだけあって生命力が強いのだろう。
 根っこを採らないからという理由もあるが、よくなくならないものだ。

 そうして集中していたところ、なにか変な声が聞こえた気がする。

『ギャガギャギャギャ』

「うわあ」

 俺のすぐ後ろになんだこいつ!

『ギャギャ』

 棍棒を持って俺に襲い掛かってくるところを、寸でで避けた。

「こいつは、ゴブリン、だよな」

 顔は醜い。髪の毛はなく、肌は緑だ。
 人間に近い形をしているが、その姿はどこか異形いぎょうで、モンスターなのだと直感的に感じる「何か」を持っている。

 その顔に恐怖を感じる。
 何かすごく俺を殺そうとしている。そしてそれを楽しんでいる顔をしている。

「なんだこいつ、なんなんだよ、くそお」

 幸いなことに手にはナイフ槍がある。
 収穫用ではあるが、もちろん用途にはコレも想定の範囲内だ。

 ただし、本当にこんな場所で、すぐ使う羽目になるとは1ミリも思っていなかったというのが、本音だった。

 ナイフ槍をゴブリンに向ける。
 ゴブリンはさらにあざ笑うかように棍棒を持って、突撃してくる。
 それをぎりぎりでかわし、ナイフ槍を突き出すが、ゴブリンもそれを避けた。

 こいつ――できる。

 俺とゴブリンの生死を賭けた戦いが始まった。

 ナイフ槍を突き出すが、ゴブリンも必死だ。何とか避けて棍棒を振り回してくる。
 それの繰り返し、1回、2回……8回。

 こうなってくるとどちらが先にミスや必殺技を繰り出すかにかかっている。
 どちらも雑魚なので、必殺技を持っているようには見えない。

「くそっ、今度こそ、うおりゃああ、突き!」

 渾身のナイフ槍の突き。
 それがついにゴブリンの心臓付近を貫いた。
 俺が素早かったというより、ゴブリンがミスをしたのだ。

 ゴブリンはナイフが刺さり「もうダメだ」という顔で目をつぶった。
 ナイフ槍を抜き、念のためもう一度ゴブリンに突き刺すが、ゴブリンはそのまま倒れて亡くなった。

 ――ゴブリンは俺にとって脅威だった。

 こうして、ゴブリンとの攻防戦は幕を閉じ、からくも俺の勝利で終わった。
 それは薬草採取の草原の朝のできごとであった。

 ゴブリンの胸からナイフで3cmくらいの魔石を取り出した。

 埋めるのが正しいやり方らしいが、放置することも多いと聞く。
 一人で用具もなく埋めるのはあきらめて、場所を移動して、薬草採取を続けることにした。

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