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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第10話F4「薬草採取」
 冒険者ギルドを出て、とぼとぼ歩いていく。
 こんな軽装で大丈夫なのか不安になるが、もっといい武器も持っていない。

 俺はふと思い立ち適当な薪と材木屋のような店によった。

「おじさん、木の棒、これくらいの、1本だけ欲しいんだけど、買えますか?」
「ああ、いいよ」

 長めの木の棒を購入した。
 ただの未加工の棒なので、思ったより安かった。

「それから麻の袋を」
「ああ、あるよ」

「それから結ぶ紐も欲しいんだけど」
「ほら、これくらいの紐ならおまけしてやるよ、持ってきな」
「おじさん、ありがとう」

 そのお店で紐も一緒に購入しようとしたら、おまけしてくれた。

 そうして、木の棒を構えてみる。
 うん、なぜかナイフよりも数段、しっくりくる。

 シュパーン。

 突き!

 シュパーン。

 払い!

「おお、坊主、なかなかいい動きするじゃねえか」
「あ、はい、ありがとうございます」

 よし、動きは大丈夫そうだ。
 これなら思ったよりもうまく行ける。

 そうして棒を持って城門を通過する。
 よく異世界ファンタジーのお話だと、門番が通行料を徴収しているが、とくにそのような気配はない。

 儲けものだと思って、通過しておく。

 門を出てしまえば、そこには広い平原が広がっている。
 町からすぐ出たところは、まだ小麦とジャガイモ畑が交互に並んでいた。

 別に城郭都市だからといっても、畑までその中に入れる必要はないのだ。
 モンスター的な治安がよければ。

 そうして畑の先に、やっと目的の草原に到着した。
 俺が最初に出現したのはもう少し先のほうだ。

 さて先に木の棒を処理しよう。
 そのままでも棒として十分戦闘に使えないこともないが、攻撃力が心もとない。
 木の棒の先端にナイフの柄を宛がい、そこを紐で縛る。
 簡易ナイフ槍の完成だ。

 たまにサバイバルの映像とかで見たことがあるのではないだろうか。

 お手伝いで薬草の仕分け作業をしたので、どの草が薬草であるのかは知っている。
 草の形を口で説明するのは難しいが、紫蘇やペパーミントに似ている葉っぱだ。

 ミントのような葉っぱを見つけては、根本からナイフ槍で切断して、収穫していく。
 吊るして乾燥させるので、茎ごと採るのが基本だ。
 根っこはそのままにしておくと、多年草なのでまた芽が生えてくるそうだ。

 このナイフ槍を使うことによって、屈んで作業する必要がなく、立ったまま薬草を切ることができる。
 こんな感じに持ち柄がついている雑草刈り機とかあるので、あんな感じだろう。

 この辺には、あちこちにこのミントちゃんは生えているので、どんどん取っていく。

 とはいっても、無尽蔵にあるわけではなく、パッと周辺を見れば1本、2本という感じだ。
 いつも誰かが採りに来る場所なので、さすがに生えまくってるとまではいかないようだった。

 それから何時間か。

 麻袋もいっぱいになってきて、ミントの香りが漂っていた。
 袋の中で擦れたりすると匂いが出てくる。

 モンスターなどはこのミントの匂いが苦手なのか、この周辺の草原にはあまり出てこないので、少女でも収穫できる程度には安全なんだそうだ。

「一人で採ってると、しゃべらなくなるな」

 うん、周りには何人か同業者がいるけれど、ばらばらなので、会話もない。

 人間には見えるので、一人っきりという風には感じないけれど、会話がないのは、けっこう精神にくるかもしれない。
 自分の個室などではもちろん一人っきりだけど、何が違うのかは分からない。
 だた壁もない平原では、余計さみしく感じるのかもしれない。

 こうして一応、袋いっぱいに収穫できた。

 お昼ご飯は抜いてしまった。

 カーン、カーン、カーン。

 鐘が3回鳴った。お昼にも鳴るのだが、太陽はすでに傾きがある。
 これは午後15時の鐘で3時間ごとに鳴り、朝6時が1の鐘なので。

「4の鐘だな」

 ほかの人たちも、その音を聞いて、かがんでいた姿勢を戻して帰りはじめた。

「俺も帰るか」

 ということで戻ることにする。
 城門までは20分くらいだろうか。

 薬草がいっぱい詰まった麻袋を背負って帰る。

「門番さんお疲れ様です」
「ああ、お疲れ様。この間の記憶喪失の坊主じゃねえか? ちゃんと生きてるか?」
「ああ、よくしてもらってます」
「そうか、よかったな」
「ありがとうございます」

 こうして門を通過する。
 門番は朝の人とは交代していた。
 そりゃそうか、順番にお昼を食べたりするもんな。

 ちなみにここの門は24時間誰か見張りがいて、夜も開いている。

 そのまま大通りを通って冒険者ギルドに行った。

「買取おねがいします」
「はい、こちらで伺っています。薬草採取ですね」
「そうです」

 薬草をはかりに乗せる。
 そうなのだ、よく薬草xx本、とかで売買する話が多いが、ここでは扱う本数が多いと「量り売り」になる。
 これならいちいち数える必要もないし、小さいのも大きいのもその対価に見合った報酬になる。
 なるほど、よくできている。

「全部で銀貨4枚大銅貨2枚ですね。よろしいですか?」
「あ、はい、いいです」
「では買い取らせていただきます。ギルドカードはお持ちですか?」
「はい」

 そうそうギルド員になったんだっけと、冒険者ギルドカードを提出する。

「はいお金です。ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございました!!」

 ふう、取引完了だ。

 薪割と同じくらいの値段だったね。

 小銭をズボンの内ポケットにしまう。
 このポケットはボタンの蓋があって、小銭入れにちょうどいい。
 そういう用途のために盗難防止として蓋があるのだろう。

 スリが多い証拠でもある。歩く時は気を付けよう。

 スリに遭っても捕まえらえれるとは思えないし、捕まえても証拠がないと言われたら、対処のしようがない。
 向こうも生きるために手段がアレだけど必死なのだ。

 もっともこの小銭をスるくらいなら、一緒に薬草採取しようぜ、って誘いたいくらいだ。
 一人はけっこう作業感があって、精神的にくるものがある。
 リーリアたちも親子で収穫するわけだわ。


 さて、小銭を手に入れた俺はニコニコ気分でリーリアの家に戻る。
 この先、どうしようか。

 いつまでも女の子と一緒の部屋で寝起きというのも、悪い気がしている。
 日本いや中国かもしれないけど「男女七歳にして席をおなじゅうせず」というし。
 ちょっと気になっていた。

 そろそろ宿屋に移ろうかなと思っていた。
 ジャガイモスープで生活している家にいつまでもお世話になるわけにはいかない。

「リーリアただいま」
「おかえり!」

 リーリアたちは薬草採取だけではなく、いろいろな雑務とかもしているらしく、毎日草原にいくわけではない。
 今日は薬草採取の日ではなかったようで、家にいた。

「あのさ、俺、薬草採取はじめたんだ」
「おぉ、ハイル、どうだった?」
「今日は銀貨4枚大銅貨2枚だった」

 チャリン。

 もともとのお金と合わせて、ポケットから出して見せる。

「おぉ、ハイル毎日薬草採取するの? もううちの稼ぎ頭になっちゃいそうだね」
「あ、ああ、それなんだけど」
「ど?」
「俺、お世話になるの悪いし、それそろ出ていこうかと」
「えっ……ダメええぇ、絶対ダメ。ハイルはうちにいるのお」
「そう言われても……ほら食費もかかるだろ、それに俺たち男女だし……な?」
「そんなこと別に私は気にしてないよ、うちにずっといよ?」

 さて困った、どうしようかな。

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