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文芸部でも恋がしたいし異世界小説も書きたいから両方する!!

第1話R1「俺だって恋とかしたいし小説も書きたい」
 今は午前3時。俺はPCに向かっていた。高校1年生なので当然だろう。
 なんてことはなく、ただ文芸部員なので、新作の小説を書くためのネタを考えていた。

 いわゆる「異世界小説」を書きたい。

 すでに流行りのというには、ブームになって久しく、触診気味? あれ、違うな、絶対違う。ちょっと検索をしてみる。
 俺は午前3時になにを調べているのだろうと思わなくもないが、うん。
 「触診気味」で検索すると、医療現場の診察方法のことについて表示された。

 これではない。

「しょくしん気味」

 こういうときは平仮名で入力すると、結果が表示されることがある。
 なんちゃって検索テクニックの一つだ。

「食傷気味」

 そうそうこれこれ「食傷しょくしょう気味」か。
 くどいようだが覚えるには2回入出力をするといいのだ「しょくしょうぎみ」。

 さて覚えることができただろうか。
 小さい頃ならともかく、一定以上の年齢では、こうやって一つずつ言葉は覚える他ない。

 ちなみに、記憶にとどめるには、5分後、1時間後、1日後、2日後、3日後、1週間後、1か月後、という風に適度な間隔を開けつつ復習をすると短期記憶から長期記憶になりやすい。
 復習をしないと、忘れやすいというエビデンスがあるらしい。

 例えばエビデンスという単語「最近頻繁にニュースで見るな」と思うと、覚えるのはそういう理由からだ。
 なんとなくでも復習の効果が働いて、無駄知識までも覚えてしまう。

 一度長期記憶になれば、わりあい忘れにくい。

 エピソード記憶といって、特定の強い印象があると覚えやすいが、普段の勉強でそんなものが頻繁にあるわけがなかった。アーメン。


 ◆◆◆

 さて、ぐだぐだしているうちに眠くなって昨日は寝た。ふて寝である。
 学校の授業のうちいくつかは「睡眠学習」で乗り切ることにする。
 午前3時まで起きていて、朝7時に起きて、学校で起きていられるわけがなかった。

 こんなだから成績も伸びず、碌な大学に入れないというのは承知しているが、もう以前からこういう生活スタイルだったので、今更だった。
 でなければ、進学校の神奈玉県立山々高校とかに入学している。
 山々高校は市内で交通の便のいい立地に加え、女子の制服がかわいいと評判だった。
 だからセンスがいい女子は圧倒的に山々高校へ進学する。
 俺が通っている県立神奈玉北高校は言ってしまえば偏差値の比較的ゆるい学校なのだ。

「起立、礼」
「ありがとうございました」

 そんなことを考えているうちに6時限が終わった。
 さあ放課後だ。

 オンザタイム。俺のゴールデンタイムだ。
 学校には毎日行っているし、赤点はまだ取ったことがない。
 しかし主戦場は放課後なのだ。

 班分けの掃除をしてから、文芸部にいこう。

 文芸部それは魔境である。
 現代に突如現れたファンタジー世界だ。

 特別教室棟に移動して、半分に仕切られた教室の前側のドアをノックする。

 コンコン。

「はーい。入っていいですよ」
「失礼します」

 ガラガラガラ。

「こんにちは、縦山村たてやまむら先輩」
「こんにちは、カンちゃん。でもエリって呼んでいいって言ってるのに」
「いえ、こういう性格なので、遠慮したく」
「いけずぅ」
「先輩、何年生まれでしたっけ」
「え、令和3年」
「じゃあ今1歳ですよね」
「えへへ」

 この人は縦山村たてやまむら絵梨奈エリナ先輩だ。
 今2年生で部長をしている。
 ちなみに俺はカンちゃん。そう呼ばれている。だから以降カンちゃんとかいうと、場外から空き缶とかが飛んできそうなので、真面目にいうと東西とうざい環都かんとという。

 とにかくこの先輩は部員の中では普通の人なので、警戒しなくても大丈夫だ。
 ただし、なぜか俺がどんなに早く来ても、必ず先にいるのは謎だった。
 掃除の時間があるはずなのだが深くは追及しまい。

 ちなみに先輩は俺のヒロイン格ではなく、サブキャラポジなのだ。

 さて無駄話をせずにパソコンに向かう。
 学校支給の型落ち品ではあるが、別に最新のゲームをするわけではないので、これでも十分だ。
 もちろんVRMMOとか書く参考に最新ゲームがしたいならその限りではない。

「うーん」

 パソコンに向かうものの、本日の成果は0文字だ。ゼロという数字は何を掛け算してもゼロなので、これは痛い。

 トントン。

「入っていいぜよ」
「失礼します、カンちゃんいますかー」

 ガラガラガラ。

「こんにちは、エリナ先輩、あとカンちゃん」
「こんにちは」
「こんにちは、俺を呼んでるのに、おまけみたいに言うのおかしくね」
「そうかな? あ、うん、そうかもね」

 この子は1年3組、芦田あしだ陽奈子ヒナコ
 のツインテールをしている。
 あと背が小さい。

 彼女は何というか、俺から見れば、ヒロインポジである。
 俺の「元」幼馴染で、近くに住んでいて、彼氏がいたことがなく、そして。

「カンちゃん、好きぃ」

 俺が座っている後ろから椅子ごと抱きしめてくる。
 なぜか、異様なほど俺と距離感が近い。

「おい、離れろ」
「いいじゃん! カンちゃんけちんぼ」

 俺が離れろといえば、口では一応文句は言うものの、素直に応じる。
 でも口をアヒル口にして抗議してくる。

「なにかご不満でも?」
「ぶーう、う? ちゅ」

 そのまま声だけの投げキスをしてくる。

 うん、なぜこれだけ俺は好かれているのか、正直よく分からない。

 小学校低学年までは確かに同じ学校の幼馴染だった。
 しかし男女というのはだんだん疎遠になり、彼女は中学で私立に進学した。

 そして高校では同じ学校に再びなり再会したわけだが、謎の距離感で接してくる。
 同じ部活なのは偶然、いや、小さいころから彼女も本は好きだったから、これは必然かもしれない。

 とにかくこうして、俺は距離感をつかめずに、もんもんとした日々を送っていた。

 これは、そんな俺とヒナコの恋愛事情、それから文芸部員のちょっとした日常と、俺が異世界小説を書き上げるまでの話だ。

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