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呂布奉先はなろう主人公の原初説という仮説を立ててみた

呂布奉先はなろう主人公の原初説という仮説を立ててみた
 あらすじにも書きました通り、筆者は最近三国志に興味を持ち始めた素人です。
 呂布と彼に関わる人物以外の知識は、皆無に等しいようなトーシローが自分勝手に語るエッセイになります。
(他の三国志の人物は董卓と曹操がそれぞれ「呂布をそそのかした人」「呂布を倒した人」ということは辛うじて知っているくらいです)
 それでもいいよという方だけ、続きを読んでください。

※なおこの記事は去年12月に執筆したものなので、ふくノベルさまに上陸するまでの三か月間で如月千怜の知識は大分アップデートされています。
当時の記載原文は残していますが、誤りのある部分や補足の足りない部分には注釈を加えています。

【本題:呂布はなろう主人公の原初という言説】

 この界隈に長く身を置いている方ならもはや説明不能のことだと思いますが、なろう主人公は圧倒的な戦闘能力を持っている最強キャラとして描かれる作品が異常に多いです。

 そして呂布は、三国志のファンの方ならご存知の通り、人中の呂布と呼ばれるほどに勇猛な人物でもあります。

 なろう主人公というものは、読者の感性にもよりますが、異世界転生になじみのない客層の方からは「人間味がない」と称されることがあります。私の身近な人では筆者如月千怜の父が「おんなじようなアニメばかりで食傷気味」と評していた記憶があります。

 そして呂布も、日本においては三國無双Fate/Grand Orderなどのゲームの影響によって根強い人気を持つ人物ですが、本場中国では「儒教の教えに反する要素が山盛りだから」という理由で日本ほどの人気はありません。
 中には「日本人が呂布が好きな理由が全くわからない」みたいな題名のネット掲示板が中国で立ったこともあったようで、日本とは違う角度で本場の三国志のファンの方々が本気で議論をしていたとのこともありました。



 一見すると似ている両者ですが、決定的に違うポイントも一つあります。
 なろう主人公はヒロインによるハーレムを作る過程において、善意による人助けを行うことが非常に多いです。
 なろう主人公が嫌いな人は認めたくないかもしれませんが、彼らは利他的に己の力を使う存在と言えます。

 それに比べると、呂布はどうでしょうか?
 彼は董卓にそそのかされた際、かつて主君として忠誠を誓ったはずの丁原を裏切り彼を殺害しました
 そしてその董卓すらも、もっと利用できる相手が見つかった後では平気で殺害しています。

(※なお当時はこのように表現していましたが、実際は少しながら誤りがあります。董卓の力が弱まったことも併せて、呂布はこのような行動をとしました。)

 そして曹操に敗れた後も、彼は「俺とお前が手をとれば最強の軍ができる」と、終始利己的な提案ばかりをしています。
 無論曹操がそれを聞き入れるはずもなく、彼は縛り首になって命を落とすことになりました。

(※この逸話はあくまで演義における創作です。そして曹操に「呂布を処刑するべきだ」と進言したのは劉備みたいで、曹操はこの提案を「意外と悪くないかも」と思っていたらしいです)

――呂布の人間性は一貫して己の力に驕っていてそれを利己的なことにしか使いません
 こうしてみると、なろう主人公と呂布は似ているようで真反対な性質も併せ持つ存在と言えます。


【結局お前は何がいいたいのか? という質問に対して】

 この呂布はなろう主人公に似ているという言説は、本記事執筆を決意した日に職場でふと思いついた言説です。
 ただ上記の証明結果は「部分的には似ているが、本質的には真反対」というものになりました。

 ただそれでも、なろう主人公は呂布を超えうる魅力を持っているのかと言い切るのには疑問が残ります。
 呂布は確かに一貫して傲慢な男です。決して彼のことが嫌いというわけではありませんが「徳川家康への忠義を最後まで貫いた」本多忠勝、「上杉武田と比べたら強い力は持っていないが、最後まで家族を守り通すことを選んだ」浅井長政とかの方が、仮に勇猛さで対等としても人間としての本質がまるっきり違ってカッコイイと思っています。
 ですが、悪役としての自由度においては、歴史上の人物でも段違いだとも思っています。
 ヒーローを立たせるためには、彼のひたすら利己的に力を使う姿勢はとても便利なのです。



【付録 ネット社会においては、誰もが呂布のような破滅をたどるリスクがある】

 最後に付録として、このような文章を添付させていただきます。
 中国の歴史学者にして三国志演義の作者である陳寿氏は「呂布のような人物が破滅しなかったためしは歴史上存在しない」と言っております。

 なろう主人公は、ハーレム形成の過程とはいえ利他的な行動で多くの人々を救います。なろう主人公だからとバカにしている人は軽視しがちですが、これはこの世のありとあらゆる物語に幅広く取り入れられた要素です
 それを軽視したまま「潜在的な傲慢さ」が見える主人公を書いている方、要注意です。
 たとえ呂布のように極端でなくても「潜在的な傲慢さ」に気づいた読者は緩やかに作品から離れていくことでしょう
 そして、人の作品にアドバイスと称して高圧的な文章を送る人も、同じように緩やかに運営対応が近づくことなのでしょう。

 呂布のような男を悪役として取り入れるのは、とても素晴らしいと思いますが――それを討つ過程で、主人公や彼らを見守るあなたが呂布のようになってはいけないのです


【呂布奉先はなろう主人公の原初説という仮説を立ててみた 完】




……と、このようなエッセイを書いたところ、不勉強による部分が多かったことも手伝って、三國志がお好きな友達の方から私はお𠮟りの言葉を受けることになりました。
まずその友達の方が、そもそもなろう小説が好きではない方だったので、まず見せた段階であまり適切な行動ではなかったのですが。
その友達の方は「呂布の魅力は誰にも成し遂げられないことを多く成し遂げたこと」と言っていまして、この時点で「薄っぺらいなろう主人公の人生とは全く違う」とのことらしいです。
私自身、本記事の執筆当時は「なろう主人公と呂布の類似点を探る」というところから始めたのですが、思ったより似ていないところの方が多かったので「あとから読み返したら、コンセプトが完全にブレブレになっているじゃん、このエッセイ……」と、笑いごと抜きで赤っ恥をかくことになりました。

とはいえども「呂布をベースに悪役をつくってみよう!!」という発想を提案するあたりとかは、別にダメなところばかりなエッセイとは思ってはいないので
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