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黄金の魔女フィーア (旧版)

死の宴の始まり
 一心不乱で肉を貪る少女達。冒険者の男だけでは飽き足らず、仲間だったオーガの遺体にまで口をつけ、食欲を満たす。

おぉ、怖ッ。そんなにお肉が大好きなのかねぇ」

 洞窟の奥から別のオーガが現れる。仲間よりは少し小柄だが、多彩な魔術道具を携帯しており、また違った強者の風格が出ている。

「当たり前じゃない。久々に獲れた獲物だもの。私は生のご飯しか食べたくないの」

 さらに追うように現れた女。彼女も肉を貪る少女達と同じ顔、同じ体格をしている。唯一違うのは彼女だけ服を着ていることだ。

「おお、クイーンが現場に来るなんて珍しいな」
「心臓だけ残せってテレパシーで命令したからね。それを受け取りに来たのよ」

 彼女こそが、あの不気味な少女達のオリジナルであった。その言葉を聞きつけて、ある程度満足したであろう個体がそれぞれの心臓を持っていき、差し出す。

「ありがとう」

 受け取るや否や、彼女は己の分身にそれぞれキスをした。

「しかしよ、仕留めた人間を食うのはやめてくれねえか? せっかくあいつは強そうなのに、スケルトンにしかできなくなっちまうぜ」

 一方でこのオーガはネクロマンサーのようであり、アンデッドを作ることを得意としているみたいだ。

「スケルトンでも強い個体を作れるように工夫すればいいじゃない。それでこそ天才でしょ?」
「あのなぁ、アンデッド作りに限らず人造生命の作成は素材が命なんだよ。質のいい素材を確保する腕も含めて天才って呼ばれるものなんだぜ?」
「だったら私と組んだ時点で、あなたはその程度の凡才ってことね」
「クソ、言いたい放題言いやがって」
「ブラスファ、リーフ。そのくらいにしておけ」

 そこに更なる影。どっしりとしたトロールが現れ、彼らを諫める。

「あ、プロケラ。何とかしてくれよぉ。こいつが大事な材料を勝手に食べちまうんだよぉ」
「怒りたい気持ちはわかる。だが彼女らもご飯がなければ生きていけない。我慢して強力なスケルトンを研究してくれ。その方が有意義だ」
「確かにそうだけどさぁ

 どうやらこの巨人二人は、色々と気苦労が絶えないらしい。

「さて、リーフ。この男以外にあの村に冒険者はいないのだろう?」
「うん。ファミリアで調べたけど、戦える奴は誰もいないみたい。急いで襲撃すれば無抵抗で潰せると思うよ」

 その報告に、どっと笑うトロール。

「よし、いいぞ。ブラスファ、早く襲撃を仕掛けるぞ。ようやくお前の策が完成する」
「おお、そうか。それは良かった。それなら損失のおつりがいくらでも返ってくる」

 仲良く笑う巨人達。しかし少女リーフは不満そうな表情。

「ん? どうしたんだ?」
「あんたの策と今後のことを考えていたのよ」
「おお、それがどうした?」
私、今日でクレバスフォレストに帰る」

 クレバスフォレスト、多くの魔族が集る彼らの大拠点。巨人二人もそこから来たのだ。

「なんでだ?」
「だってあんたの策が実行されたら、鮮度の悪いご飯しか食べられなくなるでしょ」


 黙り込む巨人二人。

そうか。まあ無理強いするわけにもいかねぇ。帰っていいぜ」
「君の能力には世話になった。おかげで兵員のゴブリンも増やせたし、強襲を確実に成功させる見込みがついた」

 どうやら、快く見送るようだ。

ありがとう。侵攻作戦、頑張ってね」
「まあ、これでお前に勝手に材料を食われることもなくなるしな」
「ブラスファ、そういうことは別れ際に言うことじゃない」

 食事を終えて、一斉に洞窟から出ていくリーフ達。

「さーて、村の奴らを皆殺しにして、ゾンビの街を作るぜぇ。プロケラ、行くぞ」
「ああ」

 そして巨人二人も、手下を連れて己の戦いへと赴いた。翌朝、カマーン村は地獄へと変わったという



 だがそのような痛ましい事件から遅れてギルドから派遣された冒険者達が殲滅作戦を実行。その部隊の一つに編入されたのが、ご存知黄金の魔女フィーアである。
 素性不明の魔女が突然前線に出た報は、リーフの帰ったクレバスフォレストに伝達され、彼らがフィーアを帝都侵略の妨げになると判断するのは、遅くなかった。



 荒野のはるか下にある地下水路を泳ぐ、リーフとその分裂体の数々。彼らは上位魔物の命により次の侵攻作戦のため移動をしている最中であった。
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