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黄金の魔女フィーア (旧版)
任務終了 さらば、報われぬ死者たちよ
――それからすぐ、テオドールとミレーヌがやってきた。倉庫の入口をふさいでいた岩は魔法で破壊したようで、燃え上がる炎も水の魔法で消火してくれた。
「……ふーう、やっと終わったよー」
たくさん魔法を使ったからか、私達とは別の疲れがたまったみたいね。お疲れ様。
「……この死体は何ッスか?」
……それはエミリーの死体よ。
「……結局、守り切れなかったんスね」
なぜだろう、テオドールが再会する前と比べてやけにしおらしい。私達がいない間に何か価値観が変わるようなことがあったのだろうか。
「……フィーアさん、あんた何か辛い目にあったようッスね」
「……わかるの?」
「ああ、手の震えでわかるッス。新兵が良くなるやつだ」
……そうか。頑張って平静を保とうとしているのに、そんなところに現れていたのね。
――自分で見てもひどい震えだ。自分で気がつかなかったけどそれだけ動揺しているのか、私は……
「みんな、階段の下を見てきたぞ」
「どうだったッスか?」
「残念だが燃えカスと死体しかなかった」
……おそらくエミリーが暴走する過程で焼き払われたのでしょうね。これでこの村で起きた惨劇の真相は闇の中へと消えてしまった。あれがなければ何かしらの証拠は残っていただろうに。
「もう見るべきものは何もない。私達の仕事は終わった。遺品を持ち帰るぞ」
私としてはオーガ達がなぜこの事件を起こしたのかが気になるところだが、推測する材料すらないのならそれへの答えは永遠に出ることはないだろう。
素直に帰りましょう。もうできることは何もないのだもの。
「……フィーアさん、この子は連れて帰らなくていいのか?」
倉庫を出る前、ティファレトさんがドゥーエを抱えて連れてきた。彼女は魔法で耐熱性を強化している。そのおかげで焦げ目はついているが、外見は元の面影を保っていた。
「…………」
受け取る。この子はただの人形ではなく、大事な家族だから。
「……大丈夫よ。家に帰ったらすぐに直してあげるからね」
「……ありが、とう。お母……様」
私が触った途端、彼女が喋った。もう動けない程のダメージを受けているはずなのに。
「私は……あなたを……守れて、よかった……」
……やっぱり、あの時私の命令を無視してまで挑んだのは、私を守るためだったのね。
「……あん、た」
……今度はティファレトさんの方を向いた?
「帰り道は……あんたが代わりにお母様を守りなさいよぉ……」
まあ、この子が自分から他人に話しかけるなんて。言い方は偉そうだけど、この子なりにティファレトさんを信頼したということなのかしら。
「ハハハ、分かった。安心して任せてくれ」
そしてティファレトさんは本当に優しいわね。
帰路では何も起こることなく馬車隊のところまで戻ることができた。
今日は一生忘れることのできない一日だった。失われたものは還らないが、私達の戦いが更なる悲劇を防げたと信じたい。
黄金の魔女フィーア 第一部『カマーン作戦編』完
「……ふーう、やっと終わったよー」
たくさん魔法を使ったからか、私達とは別の疲れがたまったみたいね。お疲れ様。
「……この死体は何ッスか?」
……それはエミリーの死体よ。
「……結局、守り切れなかったんスね」
なぜだろう、テオドールが再会する前と比べてやけにしおらしい。私達がいない間に何か価値観が変わるようなことがあったのだろうか。
「……フィーアさん、あんた何か辛い目にあったようッスね」
「……わかるの?」
「ああ、手の震えでわかるッス。新兵が良くなるやつだ」
……そうか。頑張って平静を保とうとしているのに、そんなところに現れていたのね。
――自分で見てもひどい震えだ。自分で気がつかなかったけどそれだけ動揺しているのか、私は……
「みんな、階段の下を見てきたぞ」
「どうだったッスか?」
「残念だが燃えカスと死体しかなかった」
……おそらくエミリーが暴走する過程で焼き払われたのでしょうね。これでこの村で起きた惨劇の真相は闇の中へと消えてしまった。あれがなければ何かしらの証拠は残っていただろうに。
「もう見るべきものは何もない。私達の仕事は終わった。遺品を持ち帰るぞ」
私としてはオーガ達がなぜこの事件を起こしたのかが気になるところだが、推測する材料すらないのならそれへの答えは永遠に出ることはないだろう。
素直に帰りましょう。もうできることは何もないのだもの。
「……フィーアさん、この子は連れて帰らなくていいのか?」
倉庫を出る前、ティファレトさんがドゥーエを抱えて連れてきた。彼女は魔法で耐熱性を強化している。そのおかげで焦げ目はついているが、外見は元の面影を保っていた。
「…………」
受け取る。この子はただの人形ではなく、大事な家族だから。
「……大丈夫よ。家に帰ったらすぐに直してあげるからね」
「……ありが、とう。お母……様」
私が触った途端、彼女が喋った。もう動けない程のダメージを受けているはずなのに。
「私は……あなたを……守れて、よかった……」
……やっぱり、あの時私の命令を無視してまで挑んだのは、私を守るためだったのね。
「……あん、た」
……今度はティファレトさんの方を向いた?
「帰り道は……あんたが代わりにお母様を守りなさいよぉ……」
まあ、この子が自分から他人に話しかけるなんて。言い方は偉そうだけど、この子なりにティファレトさんを信頼したということなのかしら。
「ハハハ、分かった。安心して任せてくれ」
そしてティファレトさんは本当に優しいわね。
帰路では何も起こることなく馬車隊のところまで戻ることができた。
今日は一生忘れることのできない一日だった。失われたものは還らないが、私達の戦いが更なる悲劇を防げたと信じたい。
黄金の魔女フィーア 第一部『カマーン作戦編』完
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