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黄金の魔女フィーア (旧版)

帝都へ!!
 翌日、私は約束通りミレーヌの待つ街に出ていた。
 今日の服装は白のブラウスに黒のスカートというシンプルな組み合わせ。普段着ているローブは、汚れが目立ちやすいので、今日は置いて行くことにしている。
 こういうキレイな服を着るのは、かなり久しぶりだ。十八歳の時に皇帝陛下から勲章を受領して頂いた時以来だろうか。そしてこの帝都に来るのも。

 アルミュールの首都は丁寧に整備されている。石造りで舗装された道は歩きやすい。植え込みもあり、自然が完全に排除されているわけでもない。
 経済面でも大変豊かで、働き口には困らない。食料も豊富にあり、水もただで飲める。だからこの街には多くの人が集う。それが更なる経済利益を生み出すのよ。
――でも私にとってはあまり来たいと思う場所ではない。

「おい、あそこにフォレノワールの魔女がいるぞ」
「本当か?」
「黄金の魔女フィーアだ! 珍しいな、街に出てるなんて!」

 一番の理由はこれ。一部の輩が奇特な視線を向けてくるのよ。このように。
 魔法使いに好印象を抱いている民間人は少ない。私達の持つ未知なる力に恐怖するか、蔑視的な態度で嘲笑する。
 もちろん大半は恐怖する方。そういう人には何も思わない。むしろ恐れられることこそが最大の名誉。それだけ実力が認められている証拠だから。

 だけど物珍しさで嘲笑してくる輩は気に入らない。悪意を感じる。人種差別と何も変わらない。対象が特定の職業にすり替わっただけだもの。

 そもそも魔女という呼び方自体気に入らない。なぜかって? 基本的に民間での伝承に登場する魔女が皆老婆の姿をしているから。

 私はまだ二十二歳の誕生日を迎えたばかりなのに。この呼び名で呼ばれる度に老人扱いされているような気がしてたまらない。せめて魔術師と呼びなさいよ。

 この名自体は、陛下が私の功績を見て代替えの利かない希少な存在とみて黄金を冠した名を付けてくれたそうだ。もっとも私にとってはとても有難迷惑な勲章と思う。

 それでも言い返さない。いちいち相手をしても疲れるだけだから。彼らは強い憎悪を抱かれているなど思いもしないだろう。

「待ち合わせ場所はここね」

 指定された場所は酒場の前。俗に言う冒険者が集まる店。軍が動くほどではない個人的な有事に、彼らは動く。距離感が近いことも含めて、民間人からは尊敬される職業。
 でも、こういうところって大体騒がしいのよね。私、大きな音も苦手だから。人間が出す音の集合体なら尚のこと。



「あ、いたいた! フィーア!!」
「あらこんにちは」
「迷わず来れた?」
「ええ、なんとか」

 確かに迷わなかった。迷うことがあるとしたら、嘲笑する民衆を黙らせるか否か。

「それじゃあさっそく手続きに行こ!」

 手を引かれ、中に入れられる。落ち着いているように見せたけど、動揺が止まらない。
 そのわけは、この子にここまで連れて来られた経緯にあった。
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