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メタモルシャーク【総ルビ対応!】

サメの二尾付け
 のぞけばサンゴさんごしょうえる、とおったうみ。そのなかにて一人ひとりひとおぼれていた。
 両手りょうて使つかいもがく彼女かのじょに、漁船ぎょせんせまる。おぼれている彼女かのじょ救助きゅうじょしようとしていた。
 漁師りょうしげた救命きゅうめいようのうきわが、無事ぶじ彼女かのじょのそばへちる。たすけを察知さっちした彼女かのじょはとっさにつかまった。

大丈夫だいじょうぶか!?」

 全力ぜんりょくでロープを手繰たぐせる、うみ男達おとこだてまえいのちたすけるために、みな必死ひっしとなっていた。かれらのきたえられたうでは、とうとう彼女かのじょふねげることに成功せいこうした。

「…………」
大丈夫だいじょうぶてえだな」

 たすけることができたいのちに、みなとれていた。ケガはとくになく、てい体温たいおんなどの症状しょうじょうているわけでもない。
――が、それは長年ながねん漁師りょうしをやってきたかれらには、いささか不自然ふしぜんさまにもえた。

「……てるか?」

 うみなかおぼれていたわりには、不自然ふしぜんなくらいにはやいきととのえている彼女かのじょ。だがかれらは、救助きゅうじょ成功せいこうにばかりられて、その違和感いわかんわすれてした。
――そのときだった。

「マシッケッタ(美味おいしそう)」

 つかまってってもらおうとしたそのに、きばがむかれた。

「――!?」

 人間にんげんによるものとはおもえない、にくくようないたみによりさけびをげた。

「あ、あんたなにを……!?」

 ほか船員せんいんたち驚愕きょうがくかえさず、にくいちぎった彼女かのじょは、その船員せんいんつよとした。

「――!?」

――そして彼女かのじょは、ふたたうみんだ。



 うつくしいうみなかかれ自分じぶんた。傷口きずぐちから血液けつえきが、まるでけむりのように周囲しゅういつつんでいくそのさまを。そして、けっしてかばないようにたたきつけ、おのれしずめていく三角さんかくあたまった彼女かのじょを。
 自分じぶんによって、うみよごれていく。たとえ目先めさきだけの景色けしきだとしてもそれは、うみあいしたおとこにとってはけをらない恐怖きょうふだったのかもしれない。
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