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灰銀の楽園
#3 VSネフリティス
#3 VSネフリティス
ネフリティスは混乱していた。
目の前に居る神族を喰らおうと車両に顔を突っ込んだ時、強い衝撃が頭から全身へ行き渡るのを感じたのだ。
ネフリティスは空中で身体を翻し、レールの敷かれた地面に着地すると、ついさっきまで追っていた二体が逃げ込んだ車両に目をやる。
そこに立っていたのは、紅髪の少女――リズが立っていた。
ネフリティスの脳内はさらに混乱を極める。
自身にあれだけの衝撃を与えたのが目の前に立つ子供なのか――と。
それに対しリズも混乱していた。
こっそりと走行中の列車に飛び乗り、貨物の箱の中に潜み、隙を見て外へ出ようと計画していたが、急にサイレンが鳴り響き、轟音が迫り、箱から外の様子を見るとネフリティスに噛みつかれそうになっている神族が居た。
そして気付いた時にはすでに飛び蹴りをネフリティスの頭蓋に叩き込んでいた。
この場にいる殆どの族はこの状況を理解出来ていない状態で、ネフリティスはリズのことを歯向かってくる餌として扱うことにした。
レールを滑り止めにし、巨大な翼脚と後脚でリズへ向かって突進した。
その瞬間、リズはすぐさまネフリティスの懐に駆け込むと同時に全身をバネのように使って、両足で蹴り飛ばす。
これだけでは終わらず、リズはコンクリート製の枕木を地面から引き剥がし、それを空中へ蹴り飛ばされたネフリティスへ投擲する。
ネフリティスは自身が宙に舞っていることを知覚すると、すぐさま全身を捻り、リズからの追撃を回避する。
それと同時にリズを視界に捉えようと地面を見るが、そこにあったのはリズではなく、衝撃によって歪んだ地面だけだった。
その瞬間、ネフリティスの側頭部に貨物車両の扉が直撃した。
ネフリティスが弾き飛ばした車両の残骸からリズが力ずくで引き剥がした物だった。
この一撃によってネフリティスは脳震盪を引き起こし、不細工に着地する。
この時、ネフリティスは理解した。
目の前に立っているのは自類の敵だと。
そして正面から戦いを挑んでも無意味だと。
対するリズは弱っているネフリティスが逃げ出すのを待っていたその時だった。
駅に流れていた警報とはまた別の、パイプオルガンの超低音が重なり合った不協和音が駅内に響き渡る。
ネフリティスの咆哮だ。
殆どの者がその不気味で不愉快な音に耳を塞いだその時に、ネフリティスは咆哮を続けながらリズに向かって動き出した。
先程まで弱っていたのが嘘のように、その金属質の肉体で跳躍し、リズを全身で潰しにかかる。
が、それは叶わなかった。
リズとネフリティスの間に割って入った者がいた。
それは巨大なチェーンソーを空中で振り、ネフリティスの首を切り飛ばす。
不快な低音が消え、代わりに残ったのはチェーンソーのアイドリング音とネフリティスの首を切り飛ばした男の舌打ちの音だけだった。
男は黒紫色と紫色のメッシュが散りばめられた頭を乱雑に掻いている。
「クク〜!大丈夫そ〜?」
どこからともなく現れた黒髪の長髪の女が男に向けて大声で声をかける。
対するククと呼ばれた男はうるさいと言わんばかりに指を耳に突っ込んでいる。
「少なくとも大じょ――」
「クク〜!団長〜!負傷者は〜!?」
「クソトカゲ死んでっかー?」
「助けに来たよ〜」
ククの声を遮り、次々と駅の中へ飛び込んでくる者達。
彼らの姿形は多種多様であった。
そしてその中の一体、灰銀色の髪を持つ少年少女がリズに視線を向けた。
「大丈夫?」
優しい声をかける少年少女に対し、リズは吃ってしまった。
言葉が分からないのだ。
リズは神族語を話すことが出来なかった。
周りに神族が居なかったからだ。
返事が無いリズに対して、少年少女はキョトンとした顔で見つめている。
「灰、何やってんだ?」
「ん?いや、この子なんだけど、返事が返って来ないから大丈夫かなって」
「それよりも大丈夫じゃねぇぞ」
「何が?」
「上見ろ」
灰と呼ばれた少年少女は空を見上げる。
「あれは……雲?」
「だと良かったけどな」
先程まで晴れていた空に大きな暗雲のようなものが浮いていた。
灰の答えに対して、ククは溜息をつきながら次の言葉を発する。
「第二フェーズ、つったところか」
暗雲の正体、それは千単位にも及ぶネフリティスの群れだった。
それが今、シシュウに災いとして振りかかろうとしていた。
その時だった。
シシュウを包む巨壁に設置された砲台からのネフリティスの群れへと集中砲火を浴びせる。
「おー催涙弾かな?」
翼が生えた女性が阿鼻叫喚の渦と化したネフリティスの群れを見ながら笑っている。
リズは何を言っているか分からないが、ちょっとした恐怖を感じた。
そんな中、砲撃を回避し駅へ向かって飛んでくる個体が次々と街中へ降り立つ。
シシュウ全体のスピーカーからハウリング音が鳴った。
『今から冒険免許二級以上、武器免許を持つ者達に告ぐ。直ちに武器を取り、壁内に侵入したネフリティスの討伐にかかれ!繰り返す。ネフリティスの討伐にかかれ!それ以外の一般市民はすぐさま頑丈な建物の中に!』
スピーカーから男性の声が流れる。
その声は、冷静でありながらも、必死な様子が伺えた。
「それじゃあ、いくよ!みんな!」
「おう!」「はーい」「やるか」「うん!」
リズの前に立つ五体の男女がそれぞれ武器を手に取り、降りてくるネフリティスの群れに向けて立ち向かって行った。
リズはそれを見ていることしか出来なかった。
ネフリティスは混乱していた。
目の前に居る神族を喰らおうと車両に顔を突っ込んだ時、強い衝撃が頭から全身へ行き渡るのを感じたのだ。
ネフリティスは空中で身体を翻し、レールの敷かれた地面に着地すると、ついさっきまで追っていた二体が逃げ込んだ車両に目をやる。
そこに立っていたのは、紅髪の少女――リズが立っていた。
ネフリティスの脳内はさらに混乱を極める。
自身にあれだけの衝撃を与えたのが目の前に立つ子供なのか――と。
それに対しリズも混乱していた。
こっそりと走行中の列車に飛び乗り、貨物の箱の中に潜み、隙を見て外へ出ようと計画していたが、急にサイレンが鳴り響き、轟音が迫り、箱から外の様子を見るとネフリティスに噛みつかれそうになっている神族が居た。
そして気付いた時にはすでに飛び蹴りをネフリティスの頭蓋に叩き込んでいた。
この場にいる殆どの族はこの状況を理解出来ていない状態で、ネフリティスはリズのことを歯向かってくる餌として扱うことにした。
レールを滑り止めにし、巨大な翼脚と後脚でリズへ向かって突進した。
その瞬間、リズはすぐさまネフリティスの懐に駆け込むと同時に全身をバネのように使って、両足で蹴り飛ばす。
これだけでは終わらず、リズはコンクリート製の枕木を地面から引き剥がし、それを空中へ蹴り飛ばされたネフリティスへ投擲する。
ネフリティスは自身が宙に舞っていることを知覚すると、すぐさま全身を捻り、リズからの追撃を回避する。
それと同時にリズを視界に捉えようと地面を見るが、そこにあったのはリズではなく、衝撃によって歪んだ地面だけだった。
その瞬間、ネフリティスの側頭部に貨物車両の扉が直撃した。
ネフリティスが弾き飛ばした車両の残骸からリズが力ずくで引き剥がした物だった。
この一撃によってネフリティスは脳震盪を引き起こし、不細工に着地する。
この時、ネフリティスは理解した。
目の前に立っているのは自類の敵だと。
そして正面から戦いを挑んでも無意味だと。
対するリズは弱っているネフリティスが逃げ出すのを待っていたその時だった。
駅に流れていた警報とはまた別の、パイプオルガンの超低音が重なり合った不協和音が駅内に響き渡る。
ネフリティスの咆哮だ。
殆どの者がその不気味で不愉快な音に耳を塞いだその時に、ネフリティスは咆哮を続けながらリズに向かって動き出した。
先程まで弱っていたのが嘘のように、その金属質の肉体で跳躍し、リズを全身で潰しにかかる。
が、それは叶わなかった。
リズとネフリティスの間に割って入った者がいた。
それは巨大なチェーンソーを空中で振り、ネフリティスの首を切り飛ばす。
不快な低音が消え、代わりに残ったのはチェーンソーのアイドリング音とネフリティスの首を切り飛ばした男の舌打ちの音だけだった。
男は黒紫色と紫色のメッシュが散りばめられた頭を乱雑に掻いている。
「クク〜!大丈夫そ〜?」
どこからともなく現れた黒髪の長髪の女が男に向けて大声で声をかける。
対するククと呼ばれた男はうるさいと言わんばかりに指を耳に突っ込んでいる。
「少なくとも大じょ――」
「クク〜!団長〜!負傷者は〜!?」
「クソトカゲ死んでっかー?」
「助けに来たよ〜」
ククの声を遮り、次々と駅の中へ飛び込んでくる者達。
彼らの姿形は多種多様であった。
そしてその中の一体、灰銀色の髪を持つ少年少女がリズに視線を向けた。
「大丈夫?」
優しい声をかける少年少女に対し、リズは吃ってしまった。
言葉が分からないのだ。
リズは神族語を話すことが出来なかった。
周りに神族が居なかったからだ。
返事が無いリズに対して、少年少女はキョトンとした顔で見つめている。
「灰、何やってんだ?」
「ん?いや、この子なんだけど、返事が返って来ないから大丈夫かなって」
「それよりも大丈夫じゃねぇぞ」
「何が?」
「上見ろ」
灰と呼ばれた少年少女は空を見上げる。
「あれは……雲?」
「だと良かったけどな」
先程まで晴れていた空に大きな暗雲のようなものが浮いていた。
灰の答えに対して、ククは溜息をつきながら次の言葉を発する。
「第二フェーズ、つったところか」
暗雲の正体、それは千単位にも及ぶネフリティスの群れだった。
それが今、シシュウに災いとして振りかかろうとしていた。
その時だった。
シシュウを包む巨壁に設置された砲台からのネフリティスの群れへと集中砲火を浴びせる。
「おー催涙弾かな?」
翼が生えた女性が阿鼻叫喚の渦と化したネフリティスの群れを見ながら笑っている。
リズは何を言っているか分からないが、ちょっとした恐怖を感じた。
そんな中、砲撃を回避し駅へ向かって飛んでくる個体が次々と街中へ降り立つ。
シシュウ全体のスピーカーからハウリング音が鳴った。
『今から冒険免許二級以上、武器免許を持つ者達に告ぐ。直ちに武器を取り、壁内に侵入したネフリティスの討伐にかかれ!繰り返す。ネフリティスの討伐にかかれ!それ以外の一般市民はすぐさま頑丈な建物の中に!』
スピーカーから男性の声が流れる。
その声は、冷静でありながらも、必死な様子が伺えた。
「それじゃあ、いくよ!みんな!」
「おう!」「はーい」「やるか」「うん!」
リズの前に立つ五体の男女がそれぞれ武器を手に取り、降りてくるネフリティスの群れに向けて立ち向かって行った。
リズはそれを見ていることしか出来なかった。
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