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灰銀の楽園

#1 旅の赤鬼
 地龍大陸のケルコス地方中央部付近。
 大地に伸びた二本の線路の内の一つを走り続けている蒸気機関車があった。

 先頭の煙突から白い蒸気が風によって後ろに流され消えてゆく。
 その後ろに続く乗車車両の中は静かに騒がしい。
 所々から話し声や笑い声が聞こえてくる。
 
その長い乗車車両の後ろに続くさらに長い貨物車両の暗闇の中。
 そこに少女は居た。

 少女は大きく身体を伸ばすと、布団わりしていた布を蹴り飛ばし、すぐに貨物車両の扉を開けると同時に風が流れ込み、陽光が少女の姿をあらわにした。

 毛質の硬い緋色ひいろの長髪。
 髪と同じ緋色の瞳。
 ひたいから伸びた白く細長い角。
 健康的な宍色ししいろの肌。
 麻の葉の紋様もんようわれた行灯袴あんどんはかま二尺袖にしゃくそでを着ており、なんとも可愛らしく明るい雰囲気を出している。

 そんな少女の視線は列車の外に向けられていた。
 そこには白銀色の巨壁きょへきたたずんでいた。

「わぁー!」

 少女の表情がさらに明るくなっていく。

 緋色髪の少女は扉を勢いよく閉じると、すぐに木箱の中に身を隠した。

(やっとつくんだ!シシュウに!)

 少女の名前はリズ。
 鬼族である。
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