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バーボチカの冒険 激震のフロンティア

彼らはアレクシア海賊団
「エッホ、エッホ」

 木箱を担いだ男女がたまたま目に映った。一心不乱に同じ方向を目指していた彼らはバンダナにシャツ姿。身なりに気をはらっていない荒くれ者のようだ。

 二人はこちらに気づいていない。バーボチカは目線だけを動かし、彼らが何をしているのかを確認する。彼女はその一瞬、彼らの姿が森の中に不釣り合いに映ることに気付いた。この原生林に住む彼女にとって、船乗りたちの姿は異国からの訪問者のように感じられた。

「妖精王様、あの人達って……?」
「ああ、あれは海賊じゃな。海の荒くれ者共じゃ」

 そう、彼らは海賊だ。あの木箱には宝が入っているのだろう。それを運び出すためにやってきたのだ。

 その証拠に彼らの足元にはロープが落ちている。海賊達は宝の入った木箱をロープで縛りつけ運んでいるのだ。

 本来ならこのまま見過ごす所だ。だが今の状況では話は別となる。

「あの人達は船を持っているのかな?」
「そりゃあ持っているじゃろう」
「だったら乗せてもらいましょうよ」

 バーボチカは考える。この海賊達の船に乗せてもらおうと――それは何もしないよりは確実に良い判断であった。

 それに何よりもバーボチカには確信があった――彼らは森の中で暮らしていた私よりもはるかに海に詳しいと。

「うーむ、賊の力を借りるのは癪じゃが、贅沢は言えないの。じゃが奴らのポリシー次第では危ないかもしれんぞ」
「行きましょう!」

 すっかり笑顔を取り戻したバーボチカが駆け出す。海賊達がバーボチカ達に気づいた。やましいことをしているところを見られたかのように慌てて逃げるように走り出した彼らだったが、バーボチカは逃げずに堂々と海賊の前に姿を現した。

「あの、すみませーん!」
「うわ、何だい?」

 初めに木箱を運ぶ女めがけて声をかけた。

「私達、大陸に行きたいんですけど、船に乗せてもらえませんか?」

 宝を盗み出しているところをとがめられたわけではないと知って、安心したのか。海賊達は落ち着いた様子で話し始めた。

「いや……船長でもないアタシに聞かれても困るんだけど」

 当然の返答であった。船員の一存で部外者を乗せることなどできるはずがない。ましてや海賊行為を行っている者達が離島の原住民を助ける義理などないはずだ。

 バーボチカは当然それを知るはずがない。ならばどうやって説得すべきか? バーボチカには考えがあった。

 バーボチカは背負っていたリュックサックの中からある物を取り出した。
 それは素朴な装飾が施された一つのネックレスだった。森の中で採れる材料だけで作った、質素ながらも丁寧に作られたシャーマンのお守りである。

「あの、これでお話だけでも聞いてもらえませんか?」

 バーボチカはネックレスを海賊に向かって両手で差し出し、懇願するように頭を下げた。
 海賊達は顔を見合わせる。

「……どう思う、お前ら?」

 受け取った女は、部下と思わしき男達に問いかける。海賊たちは、太陽が東から南の頂点に昇っていく中で黙ってその言葉に耳を傾けていた。

「一応船長のところに連れて行きましょう、副船長」

 男の意見を聞いて、バーボチカは安堵の表情を浮かべる。どうやら交渉が通ったようだ。海風が強まり、彼女の髪が舞い上がる中で、彼女は深い一息をついた。

「ありがとうございます。船長さんはどこにいますか?」
「……これから船に戻るところさ。ついてきな」

 砂浜の先へ足を踏み出しながら、彼女は少しの船上での冒険に胸を膨らませた。
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