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バーボチカの冒険 激震のフロンティア
狩人の責任
「……もしかしてバーボチカちゃん、まだ僕のこと許してくれてない?」
顔も向けていないのにドミニクが気が付くくらいの殺気が漏れ出していた。
「…………」
殺気をコントロールできない者は狩人として一人前とは言えない。彼に気づかれたことでそれを思い起こすバーボチカ。
「……ごめんね。君とジェフがそんなに仲が良かったなんて知らなかったんだよ」
「……私だって狩人です。美味しいご飯が食べたいという気持ちはわかります」
背を向けたまま彼と話すバーボチカ。視線は商会の基地にだけ向いていた。
「でもそれは、ご飯に対して感謝の気持ちがあればの話です」
バーボチカの肩が震えている。感情を押し殺すために拳を強く握っていた。
彼女の思惑を知らないドミニクは首を傾げていたが、スカジは何かを悟ったようだ。
バーボチカの生い立ちを少し知っているスカジは、彼女が狩人としての責任をどう考えているか知っていた。
「敬意のない狩りなら獣でもできます。しかし悪意の感情で特定の者だけを選んで殺すのは狩りとは呼べない虐殺です」
震える手、それは自分もこれから爆薬によって狩りとは呼ばない虐殺を行うからだ。
バーボチカも狩人である以上、覚悟は決めなければならない。だが彼女はそれをすると知った上で彼を追及することに苦しんでいた。
「悪い人なら食べてもいい、そう思っているあなたの言葉からはご飯に対する感謝を何一つ感じられません」
「…………」
幼いながらも本物の狩人である彼女が発した、重たい言葉。幼少の頃から狩りに熱中しているからこそ彼女は狩った獲物に敬意を払っているのだ。
「私はこれから爆薬で彼らの船を焼きます。それで結果的に罪のない人の命が失われることでしょう」
そこでようやくバーボチカは振り向いた。涙を浮かべた瞳でじっとドミニクを見つめる。
そこには怒りがあった。悲しみもあった。そして悔しさも。様々な負の感情が入り混じっていた。
バーボチカの頬を伝う雫が地面へ落ちる。
「だからこそ、食べるために命を奪うというなら、その失われた命への感謝を忘れないで」
それは一人の狩人としての懇願だ。
バーボチカもわかっている。ドミニクはただの悪人ではなく、人々を苦しめる罪人だけを狩っていることを。
だが罪人なら殺していいという価値観には、命への感謝なんてものはどこにもなかった。
バーボチカにはそれが許せなかった。
バーボチカの想いが伝わったのか、ドミニクはしばらく黙り込んでいた。
この言葉から本物の重みを感じているようだ。
「そうだね。君の言う通りだよ。僕に狩人の資格はないらしい」
自分が許されない理由、それをやっと理解した彼は何一つ言い返さなかった。
「最低限殺すべきでない人の区別がついているだけ、あなたはまだマシですけどね」
これから戦うピーチロード商会は悪徳商人だ。彼は金のためなら手段を選ばない人間である。ドミニク以上に身勝手に命を奪う悪の武装集団相手に、彼女はこれから戦いを挑むのだ。
「お前さん、もし気が変わったのでなければ協力してくれるかの?」
「え、でもそれだとバーボチカちゃんが怒るんじゃ……?」
「構いません。今は船を壊すことの方が大事です」
バーボチカの気持ちを汲んでくれたのか、スカジもそれ以上は何も言わなかった。
ドミニクの協力も含めて、とうとう作戦の準備が整った。後は実行するだけだ。
顔も向けていないのにドミニクが気が付くくらいの殺気が漏れ出していた。
「…………」
殺気をコントロールできない者は狩人として一人前とは言えない。彼に気づかれたことでそれを思い起こすバーボチカ。
「……ごめんね。君とジェフがそんなに仲が良かったなんて知らなかったんだよ」
「……私だって狩人です。美味しいご飯が食べたいという気持ちはわかります」
背を向けたまま彼と話すバーボチカ。視線は商会の基地にだけ向いていた。
「でもそれは、ご飯に対して感謝の気持ちがあればの話です」
バーボチカの肩が震えている。感情を押し殺すために拳を強く握っていた。
彼女の思惑を知らないドミニクは首を傾げていたが、スカジは何かを悟ったようだ。
バーボチカの生い立ちを少し知っているスカジは、彼女が狩人としての責任をどう考えているか知っていた。
「敬意のない狩りなら獣でもできます。しかし悪意の感情で特定の者だけを選んで殺すのは狩りとは呼べない虐殺です」
震える手、それは自分もこれから爆薬によって狩りとは呼ばない虐殺を行うからだ。
バーボチカも狩人である以上、覚悟は決めなければならない。だが彼女はそれをすると知った上で彼を追及することに苦しんでいた。
「悪い人なら食べてもいい、そう思っているあなたの言葉からはご飯に対する感謝を何一つ感じられません」
「…………」
幼いながらも本物の狩人である彼女が発した、重たい言葉。幼少の頃から狩りに熱中しているからこそ彼女は狩った獲物に敬意を払っているのだ。
「私はこれから爆薬で彼らの船を焼きます。それで結果的に罪のない人の命が失われることでしょう」
そこでようやくバーボチカは振り向いた。涙を浮かべた瞳でじっとドミニクを見つめる。
そこには怒りがあった。悲しみもあった。そして悔しさも。様々な負の感情が入り混じっていた。
バーボチカの頬を伝う雫が地面へ落ちる。
「だからこそ、食べるために命を奪うというなら、その失われた命への感謝を忘れないで」
それは一人の狩人としての懇願だ。
バーボチカもわかっている。ドミニクはただの悪人ではなく、人々を苦しめる罪人だけを狩っていることを。
だが罪人なら殺していいという価値観には、命への感謝なんてものはどこにもなかった。
バーボチカにはそれが許せなかった。
バーボチカの想いが伝わったのか、ドミニクはしばらく黙り込んでいた。
この言葉から本物の重みを感じているようだ。
「そうだね。君の言う通りだよ。僕に狩人の資格はないらしい」
自分が許されない理由、それをやっと理解した彼は何一つ言い返さなかった。
「最低限殺すべきでない人の区別がついているだけ、あなたはまだマシですけどね」
これから戦うピーチロード商会は悪徳商人だ。彼は金のためなら手段を選ばない人間である。ドミニク以上に身勝手に命を奪う悪の武装集団相手に、彼女はこれから戦いを挑むのだ。
「お前さん、もし気が変わったのでなければ協力してくれるかの?」
「え、でもそれだとバーボチカちゃんが怒るんじゃ……?」
「構いません。今は船を壊すことの方が大事です」
バーボチカの気持ちを汲んでくれたのか、スカジもそれ以上は何も言わなかった。
ドミニクの協力も含めて、とうとう作戦の準備が整った。後は実行するだけだ。
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