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バーボチカの冒険 激震のフロンティア
冷酷な殺人鬼●
「……あーあ、バレちゃった。最近は本当についてないなー。君達がいなければ今頃みんな僕のご飯になっていたというのに。君達さえいなければ」
反論しても無駄と悟ったのか、殺人鬼が白々しい口調でついに自供を始めた。
「本当はあの時水竜に襲わせて皆殺しにするつもりだったんだよ」
その発言に皆が驚愕する中スカジだけがやはりそうか、という顔をしていた。
「でも君達が水竜を倒してから計画がどんどんずれていった」
笑いながらの自供。その顔は狂気に染まりきっており、正気を失った目で仲間であったはずの者達を睨みつけている。
「もうクビになっちゃったからお腹いっぱい食べるためには今すぐ決行するしかない。そう思って一人ずつ始末しようとしていたのに」
そして、彼はゆっくりと武器を構えた。その行動にいち早く反応したのは船長だ。
「丁度いいや。この海賊団はならず者にしては美味しそうな女の子も多いし。今ここで全員食ってあげるよ」
だがそこに向けて、バーボチカが飛び出した。
「うぇっ」
思いっきり返り血を浴びた彼女は、その軽薄な態度に刃を向けていた。
「……いきなり何するんだよ。まだ僕が話してる途中でしょ」
だがそれで相手が怯んだのは一時的のことであった。怒りと呆れの混じった顔をして、ドミニクは己を刺した相手をにらむ。命の危険を感じている素振りは全く見せない。この程度の刺し傷ではヴァンパイアを殺すことなどできないのだから。
「なぜです……なぜ笑っていられるんです……あんなに優しいジェフ君を殺しておいて……」
眼に一杯浮かべた涙、それが彼女の怒りを物語っていた。
その怒りの理由は友達を殺されたことよりも、最初から仲間を裏切るつもりでいたことに向けられていた。
エゴに任せて命を奪い、悲しむ仲間の前でジェフの死をあざ笑ったその邪悪な魔性……それがこの旅の楽しかった思い出全てを壊した。
「ジェフ君と一緒にあなたのために考えてきた時間――今すぐ返して!!」
ましてや彼女は、ジェフと共にずっと一生懸命彼の魚嫌いを克服できるような料理を考えていたのに。
彼が魚を食べようとしなかった理由の真相――それを短い期間で親友になれた青年を殺されるという形で知ってしまったのだ。怒らない理由が、あるはずがない。
「…………」
途端に真顔になって迫るドミニク。あっという間に彼女の頭を掴み、甲板へ叩きつけた。
「ウグッッ!!」
「調子に乗るなよ。その気になったら今すぐこいつら全員君の前で食べてあげてもいいんだよ?」
その力は強く、頭を掴まれたまま持ち上げられたバーボチカは苦痛の声を上げる。抵抗しようと必死にもがくが、びくともしない。
ドミニクの瞳は真っ赤に染まっている。それは、彼の正体が紛れもなく吸血鬼であることを証明していた。
「君があいつと一緒に魚で遊んでいたことくらい、知っているさ。君のお手々からするまずそうな臭いでね」
彼はジェフに対して更なる侮辱の言葉を吐く。バーボチカの目からは更に大粒の涙が流れ落ちた。
守れなかった彼女をあざ笑うかのように、ドミニクはあえて力を抜き手心を加えた。そして他の海賊達の方へ向き直る。
「さあ、狩りの時間にしようか」
彼が握る剣の根元に刻まれた刻印――それはこれからバーボチカ達が向かう侵略者の国『アルミュール帝国』の憲兵隊の紋章であった。
「――!?」
それに、スカジだけがいち早く気づく。
「……フフッフフッ」
だがバーボチカは、拘束が解けた途端おかしくなったかのように笑いだした。
「……何がおかしいの?」
傷を押して立ち上がるバーボチカ。口回りを切っていたが、軽傷のようだ。その様にドミニクは呆けたように向き直る。
「あなたを刺したナイフに毒を塗りました。少量でも致死量になる出血性の劇毒です」
「な、に……?」
「もうあなたは助かりません。せめて死ぬまでに殺したジェフ君のことを悔やみなさい」
――途端、ドミニクが苦しそうに喉を抑え始めた。はやくも毒が回ったらしく、手元から血が出ている。バーボチカはとどめとばかりに、短剣を振り上げた。
だがその時、突然バーボチカの身体が宙に浮き上がった。ドミニクが喉を抑えながら、必死で蹴り飛ばしたのだった。
「うぐっ!」
「苦し……!」
倒れ伏すバーボチカに、もだえ苦しむドミニク。お互い別の痛みを感じ取っていた。
だがバーボチカにとってこれは、勝利の代償とも言える痛みだった。ドミニクと違い難なく立ち上がる。
一方でドミニクはとうとう倒れ伏し、動かなくなった。
「……ジェフ君、敵は討ちましたよ。安らかに眠ってください」
冷酷な殺人鬼の死に、とうとう皆が安堵した。そして一斉に落ち着きを取り戻す。ジェフは還ってこないが、これ以上殺戮の連鎖が続くことはなさそうだ。
反論しても無駄と悟ったのか、殺人鬼が白々しい口調でついに自供を始めた。
「本当はあの時水竜に襲わせて皆殺しにするつもりだったんだよ」
その発言に皆が驚愕する中スカジだけがやはりそうか、という顔をしていた。
「でも君達が水竜を倒してから計画がどんどんずれていった」
笑いながらの自供。その顔は狂気に染まりきっており、正気を失った目で仲間であったはずの者達を睨みつけている。
「もうクビになっちゃったからお腹いっぱい食べるためには今すぐ決行するしかない。そう思って一人ずつ始末しようとしていたのに」
そして、彼はゆっくりと武器を構えた。その行動にいち早く反応したのは船長だ。
「丁度いいや。この海賊団はならず者にしては美味しそうな女の子も多いし。今ここで全員食ってあげるよ」
だがそこに向けて、バーボチカが飛び出した。
「うぇっ」
思いっきり返り血を浴びた彼女は、その軽薄な態度に刃を向けていた。
「……いきなり何するんだよ。まだ僕が話してる途中でしょ」
だがそれで相手が怯んだのは一時的のことであった。怒りと呆れの混じった顔をして、ドミニクは己を刺した相手をにらむ。命の危険を感じている素振りは全く見せない。この程度の刺し傷ではヴァンパイアを殺すことなどできないのだから。
「なぜです……なぜ笑っていられるんです……あんなに優しいジェフ君を殺しておいて……」
眼に一杯浮かべた涙、それが彼女の怒りを物語っていた。
その怒りの理由は友達を殺されたことよりも、最初から仲間を裏切るつもりでいたことに向けられていた。
エゴに任せて命を奪い、悲しむ仲間の前でジェフの死をあざ笑ったその邪悪な魔性……それがこの旅の楽しかった思い出全てを壊した。
「ジェフ君と一緒にあなたのために考えてきた時間――今すぐ返して!!」
ましてや彼女は、ジェフと共にずっと一生懸命彼の魚嫌いを克服できるような料理を考えていたのに。
彼が魚を食べようとしなかった理由の真相――それを短い期間で親友になれた青年を殺されるという形で知ってしまったのだ。怒らない理由が、あるはずがない。
「…………」
途端に真顔になって迫るドミニク。あっという間に彼女の頭を掴み、甲板へ叩きつけた。
「ウグッッ!!」
「調子に乗るなよ。その気になったら今すぐこいつら全員君の前で食べてあげてもいいんだよ?」
その力は強く、頭を掴まれたまま持ち上げられたバーボチカは苦痛の声を上げる。抵抗しようと必死にもがくが、びくともしない。
ドミニクの瞳は真っ赤に染まっている。それは、彼の正体が紛れもなく吸血鬼であることを証明していた。
「君があいつと一緒に魚で遊んでいたことくらい、知っているさ。君のお手々からするまずそうな臭いでね」
彼はジェフに対して更なる侮辱の言葉を吐く。バーボチカの目からは更に大粒の涙が流れ落ちた。
守れなかった彼女をあざ笑うかのように、ドミニクはあえて力を抜き手心を加えた。そして他の海賊達の方へ向き直る。
「さあ、狩りの時間にしようか」
彼が握る剣の根元に刻まれた刻印――それはこれからバーボチカ達が向かう侵略者の国『アルミュール帝国』の憲兵隊の紋章であった。
「――!?」
それに、スカジだけがいち早く気づく。
「……フフッフフッ」
だがバーボチカは、拘束が解けた途端おかしくなったかのように笑いだした。
「……何がおかしいの?」
傷を押して立ち上がるバーボチカ。口回りを切っていたが、軽傷のようだ。その様にドミニクは呆けたように向き直る。
「あなたを刺したナイフに毒を塗りました。少量でも致死量になる出血性の劇毒です」
「な、に……?」
「もうあなたは助かりません。せめて死ぬまでに殺したジェフ君のことを悔やみなさい」
――途端、ドミニクが苦しそうに喉を抑え始めた。はやくも毒が回ったらしく、手元から血が出ている。バーボチカはとどめとばかりに、短剣を振り上げた。
だがその時、突然バーボチカの身体が宙に浮き上がった。ドミニクが喉を抑えながら、必死で蹴り飛ばしたのだった。
「うぐっ!」
「苦し……!」
倒れ伏すバーボチカに、もだえ苦しむドミニク。お互い別の痛みを感じ取っていた。
だがバーボチカにとってこれは、勝利の代償とも言える痛みだった。ドミニクと違い難なく立ち上がる。
一方でドミニクはとうとう倒れ伏し、動かなくなった。
「……ジェフ君、敵は討ちましたよ。安らかに眠ってください」
冷酷な殺人鬼の死に、とうとう皆が安堵した。そして一斉に落ち着きを取り戻す。ジェフは還ってこないが、これ以上殺戮の連鎖が続くことはなさそうだ。
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