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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります

第15話 不況
「ところで、このラプトルは一頭あたりいくらくらいなんだ?」
「少なく見積もっても、金貨五百枚以上かと。大きいものだと金貨六百枚ほどで売れるでしょう」

 大陸では、ドラゴンの肉や素材はほとんど流通していない。ドランブイによると、商会を通して毎日でも高値で売りさばく自信があるそうだ。
 それに伴い、ブラックベリーに商会の支店を作り、ラプトル肉の買い取りや解体・素材の加工をしてくれるという。

「それよりハヤト様、大森林は大陸でも数少ない空白地帯。いっそのこと、入り口だけでもアウルで領有されてはいかがでしょうか」

「まだブラックベリーの街の開発すら手つかずだぞ」
「領有とは申しましても、あくまで大森林の入り口付近のみです。キール様と王国、そして南部の国々にお伺いを立てれば、書面だけでこと足りるでしょう」
「そうだな。今後のこともあるし、まずはキールの所に行こう。ディラノも買い取ってくれるだろうしって、ん?」

 視線を感じて振り返ると、山エルフの船員たちがマストの陰に隠れつつ、こっちをうかがっている。俺の方を見てこそこそ話している様子だ。

お兄様。あまりお浮かれになりませんように」
「浮かれてなんかないぞ」
「ハヤト様、顔がにやついてるっす~」
「そ、そんなことより、フラックベリーには寄らず、インスぺリアルに直行するぞ」
「もう、お兄様ったら!」

 レイピアのつかに手をかけて殺気を飛ばすセリスに言い訳しながら、俺は船をキールの館へ向かわせたのだった。


◇◇◇


「何だか様子がおかしくないか」

 キールの館に着いた俺たちは、城門から続く石畳の道を歩きながら、何やら違和感を抱いていた。

「そういわれれば、ずいぶん静かっすね~」
「お兄様、何かあったのでしょうか?」
「キール様からは何も言われてないけどな」


 明るく活気に満ちていた館が、今日は活気が無い。というか明らかに人が少ない。一体、どうしたのだろうか。ドランブイは、察するところがあるのか、さっきから無言のままだ。


「よくいらっしゃいました。さあ、どうぞこちらへ」

 いつものように、俺たちを案内してくれるメイドも今日は一人だけ。心なしか元気が無いように見える。

 そして、館に入るやいなや、俺たちの違和感が確信に変わった。何しろ、玄関から廊下にかけて、並べられていた美術品や工芸品の数々が、きれいになくなっていたのだ。


◇◇◇


「まさか、そんな

 その頃、キールはひとり自室で頭を抱えていた。手元には、王国駐在の部下からの火急の知らせを告げる書簡が広げられいる。

「あ、あの



 執事の言葉も耳に入らない様子で、頭を抱えるキール。

「キール様

「これはもう、恥だとか言っておられぬの」

 山エルフたちが暮らすこの地域は、正式にはインスペリアル地方と呼ばれており、数万人のエルフたちが暮らしている。正式な国家ではなく、いわば大きな里のようなものであるにも関わらず、王国と対等に付き合ってこれたのは、海運業に加え、鉄製品や銀の産出を中心とした強力な経済力のおかげである。

 しかし、このところ、一番の取引先であった王国の不景気のあおりを受けて、鉄製品の価格が急落。在庫もかさみ、値段を落とさざるを得なくなってしまった。 
 さらに、帝国領の廃鉱山から豊かな銀脈が発見されたせいで、銀の価格の下落が止まりそうもない。
 
「キール様」
「何じゃ、こんなときに!」
「それが面会を希望されている方がおられまして」
「わらわは今、誰にも会いとうもないわ!そんなもの待たせておけ!」

それが、ハヤト様なのですが
「何じゃと! それを早く言わんか! すぐに行くとお伝え申し上げよ!」


◇◇◇


「実は相談があるのですが
「いや、ちょっと待ってくれぬかの」

 玉座から、俺を制するかのように、右手を突きだして口を挟むキール。
悔しそうにうつむくもすぐに顔を上げ、真っ直ぐに俺たちの方を見据えた。

「まことに恥ずかしいことじゃが、どうしても最初に言っておかねばならぬ話があるのじゃ。実はインスぺリアルの財政は火の車での。ドランブイの商会への支払いも待って欲しい。ハヤト殿にも今までの様な支援はできそうもないのじゃ」

「いえいえ、何を仰るのです。それよりも実は

 この案が実現できれば、アウル領だけでなく、インスぺリアル領にドランブイの商会まで三方潤うことが出来そうだ。

ほう、なるほどの。あの仕掛けでドラゴンがの。大森林の入り口の領有に関しては、問題ないぞ。ところで、生きたドラゴンを毎日献上してくれるというのは、まことかの?」

「はい。その件につきましては、ドランブイに協力してもらうつもりです」
「我が商会はブラックベリーに支店を作る予定です。もちろんドラゴンの素材もお分け出来ましょう」
「レオン殿、恩に着るぞ」

 ドランブイの支店は、仕事にあぶれた山エルフの職人たちを大量に雇い入れるそうだ。
 インスぺリアル領で仕事にあぶれた者には渡りに船の話に違いない。

「どうやら、我らはまたトーゴ家に助けられたようじゃの」

 キールは俺の両手をとって、大げさに喜んでくれたのだった。
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