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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります

第14話 ドラゴン狩り
「レオン様、お目覚めでしょうか。すぐ甲板までお越しください」

 翌朝、ドランブイの声で甲板へ出ると、そこにはすでに軍服に着替えたセリスがいる。寝起き姿のままの俺とは大違いである。

「お兄様、大成功です!」
「やったっす~♪」

 昨日仕掛けた罠の方を見遣ると、全ての檻ににラプトルが入っていた。数えてみるとその数十二匹。

「檻の周りのラプトルは、追い散らしておきました」
「やってやったっす~!」

 ドランブイとモルトが遠距離攻撃で追い払ってくれたらしい。実情は甲板からゴミをを投げて追い払っただけらしいのだが。


「そうそう、お兄様。モルトから聞きましたよ。昨晩は寝相が悪くて、モルトに何度も毛布を掛けてもらったとか」
「え?」

「やはりお兄様をひとりにしておくのは心配です。今晩からは、私がモルトに代わってお世話をしたいと思います」
「は?」

「ですから今晩からは私が添い寝すべきかと」
「いや、待てセリス」

 どうやらモルトは、昨晩、恐くて俺に添い寝してもらったことは、皆には内緒にしているようだ。
しかも「主人の世話をするのは執事として当然っす~♪」などと自慢していたようである。

「も、モルト。お前昨日は……」
「わ、わ、わ! それは、言いっこなしっす~!」

 俺の形相に、もふもふ尻尾を振りつつ、必死になって慌てるモルト。
 これ、貸しだからな。覚えてろよ。


◇◇◇


「海が荒れるかもしれません。できるだけ急ぎたいのですが」

 船員のエルフたちは、檻の回収作業が済み次第、出航したいらしい。作業中は、俺とセリスに周囲を警戒してもらいたいそうだ。

 俺は寝巻姿のままベルトを締めると、腰に大小をぶっ込んで下船した。  
 周囲の様子を窺うが、特に変わった気配もない。警戒は俺一人でも十分だろう。

「セリスは、檻の回収を頼んでいいか」
「ううう……。お兄様の側がいいです」

 そう言いながらも、山エルフたちが数人がかりでやっと動かせる檻を、セリスはひとりで引っ張ってくれたおかげで、全ての作業が無事完了した。
 そして、最後の檻が積み込まれるのを確認した俺が、船に戻ろうとしたとき―――

「ぎりゃりゃりゃりゃ‼」

 突然周囲の空気を切り裂くような雷鳴とともに、奥の茂みから巨大なディラノが顔を覗かせた。

「レオン様、危ないっす!」
「お兄様! すぐに助太刀に参ります!」

「みんな、危ないから降りてくるなよ。特にセリス!」
「で、でもお兄様が!」
「セリスには皆を守るという任務を与える。もちろんセリスを守るのも俺だ!」
「命に代えても任務を全うします!」
「セリス様、何デレてんすか」

 俺は、セリスにしばかれて涙目のモルトを確認して正面を見据えた。

「ぎりゃりゃりゃりゃ‼」

 ディラノは俺を見て敵認定したのか、そこかしこに散らばったラプトル用の餌には目もくれず、大口を開けて突進してきた。

「すうう……」
 
 俺は静かに目を閉じて呼吸を整えると、上体の力を抜き、両手を左右に垂らす。

「レオン様、何してんすか、前、前‼」
「しっ、モルト、お兄様の集中を邪魔しちゃいけません!」

 そして、彼我の距離が交錯しそうになった一瞬。

「チェストー!」

 俺は一歩踏み出すと同時に抜き放った剣を、上段から一気に振り下ろした。


……


「ズダン~‼」

 ディラノの上体が袈裟斬りずれ、そのまま前に倒れた。


「きゃあ~ああっ!」

 甲板のからエルフたちの黄色い歓声が聞こえる中、俺のなかにまたもや未来の記憶が流れ込んできた。

 それは、見たこともない巨大なドラゴンゾンビが、大口を開けて襲ってくる映像だった。
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