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チェストー‼ 追放された貴族剣士は、辺境で最強国家を作ります
第12話 大森林
「ハヤト様、もうすぐです」
「このまま進むよう伝えてくれ」
俺は、ドランブイの言葉に、腰に帯びた太刀に無意識に手をやっていた。
いつしか濃い緑の塊が現れていた。大森林の入り口に来たようだ。
船の両側に広がる光景が、少しずつ変わっていくのがわかる。奥へ進むにつれて一つひとつの植物が幹も葉も花もすべてが今までと比べて濃く大きくなっていくようだ。
「ギュリュリュリュリュ……」
「グモォオオオ……」
遠くから聞こえるドラゴンらしき鳴き声。岸辺に生える大木からのびる太い枝には大蛇の姿が見える。空を見上げれば、ワイバーンとかいうドラゴンの一種が、空高く舞っている。
「ハヤト様、怖いっす~」
「大丈夫だって。この辺りのドラゴンは滅多に襲ってこないんだ」
「お兄様は私がお守りします」
「自分のことも守って欲しいっす~」
自分のもふもふ尻尾を両手で抱いて、不安そうに震えるモルトだが、俺はわくわくする気持ちを抑えきれない。
しばらく進むと、急に見晴らしの良い草原に出た。奥に水辺が広がっているから湿地帯と言うべきかも知れない。
「お兄様あれを!」
「おおお! さすが『竜の庭』だ……」
セリスが指さす先は、まさにドラゴンの楽園。様々な種類の四足獣が群れを成してのんびりと寛いでいた。
ライリュウと呼ばれる首の長い巨大なドラゴンが群れを成してのんびり草を食べているかと思えば、ゆったりと寝そべっているのは、大きな角を持った四足の親子。そして目の前には背中一面に板を並べた大型のドラゴンがのっそりと歩いている。
彼らは、かつて異世界に生息していたという「キョウリュウ」によく似ている。子どもの頃祖父の書斎で読んだものにそっくりだ。
子どもの頃に憧れたドラゴンを生で見ることができて、俺は興奮を抑えきれない。
あれは確か……トリケラトプスみたい。目の前を通り過ぎていったのは、ステゴザウルスで、あっちで昼寝しているのはアンキロザウルスに似ている。本で見たものとそっくりだが、目の前のドラゴンには、鮮やかな羽毛がうっすらと生えている個体がいることである。
これほどの草食のドラゴンが寛いでいる姿は圧巻ではあるが、逆に言うと、この一帯には危険な肉食のドラゴンがいないらしい。どこかのんびりとした空気が流れているのはそのせいだろう。
よく見ると、この草原の奥にはちょうど王都で見かける運河と同じくらいの川が流れている。水辺を嫌う肉食のドラゴンから守られているのだろう。この広大な草原一帯は草食の彼らにとって天然の安全地帯の様だ。
「ハヤト様、入り口なんてとっくに過ぎてるっすよ~!」
すっかり、心が童心に戻った俺は、このままもっと奥に進みたいところだが、涙目で俺の上着の裾を掴んでいるモルトだけでなく、船員たちのの不安そうな視線を受けては、思いとどまらざるを得ない。
「この辺りで止めてくれ」
確かにこれ以上進むのは危険かもしれない。祖父の文献によると、大森林の奥地には、巨大な肉食のドラゴンがいるらしいのだ。
キールから送られた特注の檻は、中の餌を取ると入り口が閉まるという単純な仕掛けながら、捕まえたラプトルをそのまま檻ごと各地へ輸送できるという優れもの。
俺たちは山エルフたちに手伝ってもらいながら、湿地を避けて罠を設置することにしたのだった。
「お兄様は、私がお守りします」
「それより檻の設置を手伝ってくれないか」
ドラゴンの襲撃に備え、俺は祖父から譲られた愛刀を抜き放って警戒する。セリスもぶつくさ言いながらも、エルフに交じって檻の運搬や設置を手伝ってくれた。
ちなみにドランブイとモルトは船内で待機である。作業は手際よく進み、俺たちは船に戻ろうとしたのだが……。
その時、茂みの奥からディラノ……いやラプトルの大型種が現れた。
「ギリャリャリャリャ!」
全長は十メートル近くあるだろうか。この前の大森林の遠征では仕留めきれなかった獲物である。
俺は国王から拝領した両刃剣を抜き放つと、そのまま相手に向かって歩を早める。
「チェスト―‼」
俺の背後で大型のラプトルの上体が袈裟がけにずれたかと思うと、轟音とともにそのまま前に倒れたのだった。
「ふう~っ」
俺は大きく息を吐き船に戻ろうとしたのだが……。
「ぎゃーっ!」
そのとき、耳をつんざくモルトの悲鳴辺りに響いたのだった。
「このまま進むよう伝えてくれ」
俺は、ドランブイの言葉に、腰に帯びた太刀に無意識に手をやっていた。
いつしか濃い緑の塊が現れていた。大森林の入り口に来たようだ。
船の両側に広がる光景が、少しずつ変わっていくのがわかる。奥へ進むにつれて一つひとつの植物が幹も葉も花もすべてが今までと比べて濃く大きくなっていくようだ。
「ギュリュリュリュリュ……」
「グモォオオオ……」
遠くから聞こえるドラゴンらしき鳴き声。岸辺に生える大木からのびる太い枝には大蛇の姿が見える。空を見上げれば、ワイバーンとかいうドラゴンの一種が、空高く舞っている。
「ハヤト様、怖いっす~」
「大丈夫だって。この辺りのドラゴンは滅多に襲ってこないんだ」
「お兄様は私がお守りします」
「自分のことも守って欲しいっす~」
自分のもふもふ尻尾を両手で抱いて、不安そうに震えるモルトだが、俺はわくわくする気持ちを抑えきれない。
しばらく進むと、急に見晴らしの良い草原に出た。奥に水辺が広がっているから湿地帯と言うべきかも知れない。
「お兄様あれを!」
「おおお! さすが『竜の庭』だ……」
セリスが指さす先は、まさにドラゴンの楽園。様々な種類の四足獣が群れを成してのんびりと寛いでいた。
ライリュウと呼ばれる首の長い巨大なドラゴンが群れを成してのんびり草を食べているかと思えば、ゆったりと寝そべっているのは、大きな角を持った四足の親子。そして目の前には背中一面に板を並べた大型のドラゴンがのっそりと歩いている。
彼らは、かつて異世界に生息していたという「キョウリュウ」によく似ている。子どもの頃祖父の書斎で読んだものにそっくりだ。
子どもの頃に憧れたドラゴンを生で見ることができて、俺は興奮を抑えきれない。
あれは確か……トリケラトプスみたい。目の前を通り過ぎていったのは、ステゴザウルスで、あっちで昼寝しているのはアンキロザウルスに似ている。本で見たものとそっくりだが、目の前のドラゴンには、鮮やかな羽毛がうっすらと生えている個体がいることである。
これほどの草食のドラゴンが寛いでいる姿は圧巻ではあるが、逆に言うと、この一帯には危険な肉食のドラゴンがいないらしい。どこかのんびりとした空気が流れているのはそのせいだろう。
よく見ると、この草原の奥にはちょうど王都で見かける運河と同じくらいの川が流れている。水辺を嫌う肉食のドラゴンから守られているのだろう。この広大な草原一帯は草食の彼らにとって天然の安全地帯の様だ。
「ハヤト様、入り口なんてとっくに過ぎてるっすよ~!」
すっかり、心が童心に戻った俺は、このままもっと奥に進みたいところだが、涙目で俺の上着の裾を掴んでいるモルトだけでなく、船員たちのの不安そうな視線を受けては、思いとどまらざるを得ない。
「この辺りで止めてくれ」
確かにこれ以上進むのは危険かもしれない。祖父の文献によると、大森林の奥地には、巨大な肉食のドラゴンがいるらしいのだ。
キールから送られた特注の檻は、中の餌を取ると入り口が閉まるという単純な仕掛けながら、捕まえたラプトルをそのまま檻ごと各地へ輸送できるという優れもの。
俺たちは山エルフたちに手伝ってもらいながら、湿地を避けて罠を設置することにしたのだった。
「お兄様は、私がお守りします」
「それより檻の設置を手伝ってくれないか」
ドラゴンの襲撃に備え、俺は祖父から譲られた愛刀を抜き放って警戒する。セリスもぶつくさ言いながらも、エルフに交じって檻の運搬や設置を手伝ってくれた。
ちなみにドランブイとモルトは船内で待機である。作業は手際よく進み、俺たちは船に戻ろうとしたのだが……。
その時、茂みの奥からディラノ……いやラプトルの大型種が現れた。
「ギリャリャリャリャ!」
全長は十メートル近くあるだろうか。この前の大森林の遠征では仕留めきれなかった獲物である。
俺は国王から拝領した両刃剣を抜き放つと、そのまま相手に向かって歩を早める。
「チェスト―‼」
俺の背後で大型のラプトルの上体が袈裟がけにずれたかと思うと、轟音とともにそのまま前に倒れたのだった。
「ふう~っ」
俺は大きく息を吐き船に戻ろうとしたのだが……。
「ぎゃーっ!」
そのとき、耳をつんざくモルトの悲鳴辺りに響いたのだった。
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