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裏庭が裏ダンジョンでした
はじめての武器屋 4
「ムツヤ殿、挨拶は悪いことでは無いのですが…… すれ違う相手だったら『こんにちは』ぐらいで大丈夫ですよ」
木の根元で三角座りをして分かりやすく落ち込んでいるムツヤにモモは屈んで優しくそう言った。
「でもぉ……」
「大丈夫、慣れです慣れ! 慣れれば加減もわかるでしょう」
そう言ってモモが手を差し出すとムツヤはそれを握り立ち上がる。
清潔な石鹸の香りがふわりと漂う。
その後は街に着くまでの間『こんにじは!』とムツヤが言うと人々は好意的に挨拶を返してくれた。
幸いな事にゴロツキのような輩ともすれ違わなかったので、ムツヤはどんどん自信を取り戻していく。
「うわー、モモさんあれスゲー!!」
ムツヤが指差す先、石で積まれた砦に囲まれたあの街こそが『スーナ』というこの国では3番目に栄えている街だ。
そこでモモはハッとしてムツヤに言う。
「ムツヤ殿、街に着いたらすれ違う人全員に挨拶は不要ですので」
「えぇ、どうしてでずか!? この道ではしていたのに?」
やっぱりやる気だったのかと、モモはムツヤの行動が大体読めるようになってきた。
しかし、ムツヤの質問の答えに行き詰まる。知り合いとならともかく、街で他人に挨拶をしてはいけない理由を改めて問われると返答に困る。
「えーっと、そうですね、街には人が多いので全員に挨拶をすると疲れてしまいますし、日が暮れてしまいます。なので省略…… という感じです。もちろん知り合いであれば別ですが」
「そうなんですかー」
言葉ではそう言ったが、どうにもムツヤはいまいち腑に落ちていなかった。
だが、モモが困っているみたいなのでそれ以上疑問をぶつけることは辞める。
それに早く街の中へ行きたい気持ちもあった。
眼前まで街が迫る、立派な石で積まれた砦と、大きな木の門。
両隣には兵士が立っていて、その間を通ると色とりどりの町並みが広がり、ムツヤは心が踊った。
人間にも色々な見た目がいる。子供に老人に、背の低い高い、太ってる痩せてる、女の子も髪の短い子長い子。
「まずはその剣を売りに行きましょうか、良い武器屋は知っています。少し店主の性格に難はありますが……」
街道の人目が無い時にカバンから取り出して持ち歩いていた1本の剣、これを売ってムツヤは冒険のための金策をする。
大通りにはきらびやかな武器がずらりと並んでいた。しっかりと磨き上げられた剣や鎧から、フトコロ事情の良くない者の為の質素な物までだ。
そんな大通りを素通りして裏路地へモモは行ってしまう。ムツヤは不思議に思うが黙って付いていくことにした。
「モモさんあっちの店じゃダメなんですか?」
「えぇ、ムツヤ殿はこの街が初めてで、私はオークですから。値段の付いている商品を買うなら良いですが、売るとなると足元を見られると思います」
足元を見られる? ムツヤは首を傾げた後に自分の靴を、次にモモのブーツを眺めてみる。それでモモは察する。
「申し訳無いムツヤ殿、足元を見られるというのは慣用句でして」
「え、かんよう? 何ですか?」
そうか、足元を見られるという意味を知らないのに慣用句という言葉を知っているわけがないとモモは反省した。
ムツヤは馬鹿ではないが、人との関わりが無かったため常識がところどころ欠けている。
それは仕方のない事なので少しずつ自分が教えていこうと思った。
「そういった事は後でご説明しますので…… とにかく通りの店ですと本来の価値よりも安く買い取られてしまう可能性があります。なので私の知っている武器屋に行きましょう」
なぜ安く買われるのか、『かんよう』と『足元』とは何か、ムツヤは疑問に思うことだらけだったが、ひとまずそれは後でモモに教わることにした。
大通りの賑やかな声が遠くになった頃に目的の店に着いたようだ、モモは足を止めて看板を見上げる。
木の根元で三角座りをして分かりやすく落ち込んでいるムツヤにモモは屈んで優しくそう言った。
「でもぉ……」
「大丈夫、慣れです慣れ! 慣れれば加減もわかるでしょう」
そう言ってモモが手を差し出すとムツヤはそれを握り立ち上がる。
清潔な石鹸の香りがふわりと漂う。
その後は街に着くまでの間『こんにじは!』とムツヤが言うと人々は好意的に挨拶を返してくれた。
幸いな事にゴロツキのような輩ともすれ違わなかったので、ムツヤはどんどん自信を取り戻していく。
「うわー、モモさんあれスゲー!!」
ムツヤが指差す先、石で積まれた砦に囲まれたあの街こそが『スーナ』というこの国では3番目に栄えている街だ。
そこでモモはハッとしてムツヤに言う。
「ムツヤ殿、街に着いたらすれ違う人全員に挨拶は不要ですので」
「えぇ、どうしてでずか!? この道ではしていたのに?」
やっぱりやる気だったのかと、モモはムツヤの行動が大体読めるようになってきた。
しかし、ムツヤの質問の答えに行き詰まる。知り合いとならともかく、街で他人に挨拶をしてはいけない理由を改めて問われると返答に困る。
「えーっと、そうですね、街には人が多いので全員に挨拶をすると疲れてしまいますし、日が暮れてしまいます。なので省略…… という感じです。もちろん知り合いであれば別ですが」
「そうなんですかー」
言葉ではそう言ったが、どうにもムツヤはいまいち腑に落ちていなかった。
だが、モモが困っているみたいなのでそれ以上疑問をぶつけることは辞める。
それに早く街の中へ行きたい気持ちもあった。
眼前まで街が迫る、立派な石で積まれた砦と、大きな木の門。
両隣には兵士が立っていて、その間を通ると色とりどりの町並みが広がり、ムツヤは心が踊った。
人間にも色々な見た目がいる。子供に老人に、背の低い高い、太ってる痩せてる、女の子も髪の短い子長い子。
「まずはその剣を売りに行きましょうか、良い武器屋は知っています。少し店主の性格に難はありますが……」
街道の人目が無い時にカバンから取り出して持ち歩いていた1本の剣、これを売ってムツヤは冒険のための金策をする。
大通りにはきらびやかな武器がずらりと並んでいた。しっかりと磨き上げられた剣や鎧から、フトコロ事情の良くない者の為の質素な物までだ。
そんな大通りを素通りして裏路地へモモは行ってしまう。ムツヤは不思議に思うが黙って付いていくことにした。
「モモさんあっちの店じゃダメなんですか?」
「えぇ、ムツヤ殿はこの街が初めてで、私はオークですから。値段の付いている商品を買うなら良いですが、売るとなると足元を見られると思います」
足元を見られる? ムツヤは首を傾げた後に自分の靴を、次にモモのブーツを眺めてみる。それでモモは察する。
「申し訳無いムツヤ殿、足元を見られるというのは慣用句でして」
「え、かんよう? 何ですか?」
そうか、足元を見られるという意味を知らないのに慣用句という言葉を知っているわけがないとモモは反省した。
ムツヤは馬鹿ではないが、人との関わりが無かったため常識がところどころ欠けている。
それは仕方のない事なので少しずつ自分が教えていこうと思った。
「そういった事は後でご説明しますので…… とにかく通りの店ですと本来の価値よりも安く買い取られてしまう可能性があります。なので私の知っている武器屋に行きましょう」
なぜ安く買われるのか、『かんよう』と『足元』とは何か、ムツヤは疑問に思うことだらけだったが、ひとまずそれは後でモモに教わることにした。
大通りの賑やかな声が遠くになった頃に目的の店に着いたようだ、モモは足を止めて看板を見上げる。
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