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勉強嫌いな子供を、勉強好きに変える方法

勉強嫌いな子供を、勉強好きに変える方法
「君達! 最近成績がどんどん落ちているわよ!!」

 教卓をたたきながら怒鳴る担任の教師を前に、黙り込む生徒達。
 彼らは来年受験を控えている高校二年生なのだが……成績に関しては、ご覧の通り。

「来年は受験が控えているのよ!」

 偏差値は中央値よりやや低い程度であるから、レベルが高すぎる学校というわけではないのだが。



 それから放課後の職員室にて。

「……なるほど、確かに五組所属の生徒は、全体的に去年より成績が落ちていますね」

 同じ社会科を担当する、先輩の教員に彼女は相談を受けていた。

「なんとかしてもらえないでしょうか? 私が言ってもみんな危機感を持ってくれません」
「……私は生活指導面で手のかからない五組は、素晴らしいクラスと思っていますが、確かに現状が続くなら不安ですね」

 この先輩教師のクラスは、成績に不安はなくとも生活指導面で難のある生徒も多く属していることから、後輩のクラスを少なからず羨ましく思っているようだが、彼女の緊張感は消えなかった。

「……わかりました。私がなんとかしましょう」

――先輩教師が立ち上がり、職員室の出口の方へ向かった。

「……一週間くらい、準備の時間をください。五組の生徒達にピッタリな方法が、浮かんできました」




 それから約束の、一週間後がやってきた。毎週ある学年集会の時間が終わろうとしているところだった。

「……最後に、秋山先生からのお話です」

――そこから、少しばかりの前置きの話が始まった。成績の伸び悩みに関する話を少々したところで、先輩教師はプロジェクターの準備を始めた。

「……君達に勉強を頑張ってもらうために、私が一生懸命ささやかな催しを考えてみました」

 係が集会に用いた教室の電気を落としながら、プロジェクターに光が灯った。

『悪の妖術師シバ・イーを倒せ! 作者;秋山関平』

 古代中華風の街並みをバックに、プロジェクターから先輩教師秋山の声が響き渡る。
 何かしらの、紙芝居のようだ。

『フハハ、フハハハハハ!!』

――次の瞬間、青い中華衣装を着た、髭のない悪人面の男が移る。その男は腕からビームを放ち、中華の街並みを破壊しているところであった。

『逃げろー! 妖術師シバ・イーだ!!』
『助けてくれー!!』
『逃げても無駄だ! 助けは来ない!!』

 そんな中、傍若無人に街を破壊しつくすシバ・イーを遠くから眺めている男が一人いた。

『……シバ・イー。悪さができるのも、ここまでです』

――それからその男は、カメラ目線へと振り返り、この紙芝居を見ている生徒達に話しかけ始めた。



『私は、ミスターコーメー。妖術師シバ・イーを倒すためにリュービ大王様の命を受けてこの街へやってきた、正義の魔術師です』

『ですが、シバ・イーを倒すのは容易ではありません。そのため、君達の力を貸していただけませんか?』

『君達は来週、試験が控えていると聞きました。そのテストでいい点を取ってください』

『現代文を頑張れば、兵隊さんをたくさん雇えます。数学を頑張れば、武器をたくさん買えます。英語を頑張れば、兵隊さんに払うお給料を用意できます。そして化学を頑張れば、兵隊さんのご飯代を賄えます』

『苦手な科目ほど、一生懸命頑張ってください。シバ・イーを倒すためには、君達の協力が必要なんです』

『それでは、試験頑張ってください』


――それから、期末テストが終わった後。

「秋山先生! ありがとうございます」

 後輩教師は、彼の催しにお礼をしていた。

「私のクラスが、前期と比べて一番成績が伸びています!!」

――秋山は、悪の妖術師シバ・イーを倒すシーンの絵を描いている最中だった。

「……いやいや、私もうれしいですよ。五組の子達は特に頑張ってくれました。緊張感が足りない子達には、こういった方法で伸ばすのが一番です」

――この秋山という教師は、実を言うとゲームが大好きである。だからこそ勉強嫌いな子達の心をつかみながら成績を伸ばす方法を即座に思い付いたのだ。

 勉強嫌いなお子様をお持ちの方は、作中の秋山先生みたいな工夫をしてみてはいかがだろうか?
 使えるものは、賢く使ってみよう。

勉強嫌いな子供を、勉強好きに変える方法 完
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