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シンセティックシューターメインストーリー1 シャーロッテ誕生編
緋色の確執
朝から急なお客さんが来た。ボロボロな身なりの人だけど、社長さんの知り合いらしく応接室の準備をすることとなった。二人だけでお話したいみたいだから、準備を終えたらすぐ、掃除に戻ろう。
私はヴェロニカ。この屋敷で働くメイドだ。お客さんの来る日の掃除はとても忙しい。今日は急用で間に合わないから応接室を最優先にしたけど、普段はお客さんが来る前に玄関と廊下を中心にキレイにしてから、お迎えすることになっている。
それにしても、こんなに朝早くから来るお客さんってどういう用事の人なんだろう。お金持ちの人には見えないから、商談ではないと思うけど。
――そう考えながら玄関の掃除をしている時だった。
「――幻滅したぞ、ユークリッド!!」
聞こえたのは、お客さんの叫び声だった。ユークリッドっていうのは、社長さんのお名前。
「えっ、何……?」
振り返った時にはもうお客さんが来ていた。乱暴に足音を立てて、こっちに来る。
「あ、あの……どうかされましたか?」
「学生の頃から身勝手で協調性のない奴と思っていたが、あいつがあそこまで性根の腐った奴とは思わなかった! 早く靴を出せ! 私はもう帰る!」
――そのままお客さんは、最後まで怒ったまま玄関を出た。
何が起きたのか、わからないまま次の準備をしている中。応接室の前を通りかかると、扉が開きっぱなしになっていた。中にはまだ社長さんがいて、しかも頬には殴られた跡があった。
「――社長さん、大丈夫ですか!?」
「……ああ、何でもないよ。大丈夫だから」
間違いない。あのお客さんが逆上して殴りつけたんだ。
「一体あのお客さんと何があったのですか……?」
「心配ないって。金を借りたいって頼みを断ったら怒られただけだから」
きっと痛いだろうに、笑っている。私に心配をさせないようにしているのか。それでも普通の人はただ借金を断っただけのことであそこまで怒るとは思えない。
もしかして社長さんは、何か隠したいことがあるのだろうか。それがお客さんを怒らせた理由なのかしら。
だけど、秘密にしたいことを聞き出す訳にはいかない。このままだと悪いことが起きるような気がするけど、それ以上は追及できなかった。
それから三か月以上経った日。買い物帰りの時に教会の前を通りかかると、お葬式が行われていた。
知らない人のお葬式だから、普段なら気にすることなく通り過ぎていただろう。しかし、運び出される棺のそばには、あの日社長さんのところへ来た、お客さんがいた。
――もしかして彼は、あの棺の中にいる人を助けるためにお金を借りたいと言ったのだろうか。
それでも私は、彼に声をかけず通りすぎた。私には真相を知る権利はないのだから。
私はヴェロニカ。この屋敷で働くメイドだ。お客さんの来る日の掃除はとても忙しい。今日は急用で間に合わないから応接室を最優先にしたけど、普段はお客さんが来る前に玄関と廊下を中心にキレイにしてから、お迎えすることになっている。
それにしても、こんなに朝早くから来るお客さんってどういう用事の人なんだろう。お金持ちの人には見えないから、商談ではないと思うけど。
――そう考えながら玄関の掃除をしている時だった。
「――幻滅したぞ、ユークリッド!!」
聞こえたのは、お客さんの叫び声だった。ユークリッドっていうのは、社長さんのお名前。
「えっ、何……?」
振り返った時にはもうお客さんが来ていた。乱暴に足音を立てて、こっちに来る。
「あ、あの……どうかされましたか?」
「学生の頃から身勝手で協調性のない奴と思っていたが、あいつがあそこまで性根の腐った奴とは思わなかった! 早く靴を出せ! 私はもう帰る!」
――そのままお客さんは、最後まで怒ったまま玄関を出た。
何が起きたのか、わからないまま次の準備をしている中。応接室の前を通りかかると、扉が開きっぱなしになっていた。中にはまだ社長さんがいて、しかも頬には殴られた跡があった。
「――社長さん、大丈夫ですか!?」
「……ああ、何でもないよ。大丈夫だから」
間違いない。あのお客さんが逆上して殴りつけたんだ。
「一体あのお客さんと何があったのですか……?」
「心配ないって。金を借りたいって頼みを断ったら怒られただけだから」
きっと痛いだろうに、笑っている。私に心配をさせないようにしているのか。それでも普通の人はただ借金を断っただけのことであそこまで怒るとは思えない。
もしかして社長さんは、何か隠したいことがあるのだろうか。それがお客さんを怒らせた理由なのかしら。
だけど、秘密にしたいことを聞き出す訳にはいかない。このままだと悪いことが起きるような気がするけど、それ以上は追及できなかった。
それから三か月以上経った日。買い物帰りの時に教会の前を通りかかると、お葬式が行われていた。
知らない人のお葬式だから、普段なら気にすることなく通り過ぎていただろう。しかし、運び出される棺のそばには、あの日社長さんのところへ来た、お客さんがいた。
――もしかして彼は、あの棺の中にいる人を助けるためにお金を借りたいと言ったのだろうか。
それでも私は、彼に声をかけず通りすぎた。私には真相を知る権利はないのだから。
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