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シンセティックシューターメインストーリー1 シャーロッテ誕生編
最悪はらせん状に変わりゆく
――部屋を出ていくまでの時間は、思い出すのも嫌になるほどのものだった。ホンットサイアクッ……!! あんな食べる前から0点だってわかるものを出してくるなんて、思わなかった。
「…………」
まさかこんな形で過ごす晩御飯が来るとは。今から代わりを自分で作るのも面倒だ。ひとまずチーズとソーセージだけで我慢しよう。
幸いにも、急ぎの仕事はもうない。後は他の子達に任せて上がることも充分できる時間だ。
「みんな、私はもう上がるわ。後片付けは任せたわよ」
――久々に、酔っぱらうとしようか。ワインを握って休憩室に入った。
「あらヴェロニカちゃん。今日はもう上がるの?」
そこには年上の後輩のダーナさんがいた。
「はい。今日はもう我慢できません。あんっなサイッテーな晩御飯を見せられた以上、あの子の面倒を見るのはヤメにします」
――お話しているだけでも、怒気がどんどん出てきてしまう。自分自身でもまだしらふなことに驚くくらいだ。
「――!!」
注いだワインを、一気に流し込んだ。これでもう、今日は働かないッ!
「……ヴェロニカちゃん、怒る気持ちはわかるけど、さすがに殴っちゃだめよ。しかもお皿をぶちまけちゃうなんて」
――後ろにいるダーナさんは、このお屋敷にいるメイドで一番料理が上手い。他の家事はヘタだけど、料理の腕一本だけであちこちから人気のあるメイドだ。
「あなたの目には手抜きに見えたとしても、あの子は一生懸命考えて作ったんだから。あんなに泣いちゃっているのを見てかわいそうって思わないの?」
「思いませんっ!」
そんな人が、あの子の料理ですらないものをかばうなんて……ホンット、信じられない。
「ダーナさん、お言葉ですけどあんな気持ち悪いものは料理ではありません! 食べ物を粗末にしているのは私じゃなくてあの子です!」
――料理の経験なら私より上のダーナさんでも、今回ばかりは賛同できない。何より料理だけを考えればいいあなたと違って、私にはリーダーとしての責任があるのよ。
――次の日、私は社長さんのところへ朝から呼び出された。もちろん、話すのは昨日のこと。
「ヴェロニカちゃん、聞いたよ。ずいぶんハデにやってくれたね。さすがにあれはどうかと思うよ」
わかってはいたけど……やっぱり社長さんもあの子の肩を持つのね。
「社長さん、お言葉ですが私にも我慢できることとできないことがあります! もうあの子の面倒は見れません!」
「ああ。元より俺もそのつもりだ。君にはもうシャロを任せられない。でもね、食べもしないでせっかく作った料理をダメにするのは先生として――」
「社長さんッ! これ以上言うなら違約金の徴収すら検討しないといけませんよ!」
「なるほどねえ。慰謝料さえ出せば納得してくれるなら、いくらでも出してあげるよ」
――きっと、実物を見てないから、こんな無神経に理屈ばかり並べられるんだ。あれを見たら絶対に社長さんも私の言っていることを理解してくれるはずなのに。
「だけどそれなら俺も、本部の人達に君がどんなに最低な先生なのかをプレゼンしてあげないといけなくなるね」
――そう思っていたところに発せられた言葉。まさかここから更に私を非難する言葉を重ねてくるとは。
「それは、どういう意味ですか?」
「君は優秀なメイドであったとしても、先生としては0点以下だということさ」
――いくら社長さんだからって、今のには本気で頭にきた。
「社長さんッ! そんなに言うならあの子の信じられない料理を食べてから言ってみてください! あんな生卵をご飯の上に雑に乗せた、料理と呼ぶのもおこがましいもの、実際に食べなくても一発でダメだってわかるでしょう!!」
怒りと共に両手を机に叩きつける。気に入らないなら殴れッ! たとえクビになったとしても、全ッ然私は構わない!
「ああ、それなら実際に食べたさ」
「――!?」
――命がけの揺さぶりに対して、かえってきたのはまさかの告白だった。
「あまりにもかわいそうに思ったから、ダーナちゃんに同じものを作ってもらって一緒に食べたんだよ。俺はライスよりパンの方が好きだが、久々に心の底から美味いライスだなと思ったよ」
信じられない言葉。まさか社長さんが、自分からあれを食べたいと言ったなんて……いや、まだわからない。もしかしたらあの子をかばうためにデタラメを言っている可能性もある。そう思わないと、理性が保てない。
「あの子をかばうためにデタラメ言っているわけではないのですよね?」
「そんなに疑うなら君も試してみるといいさ。俺達の他にも食べたいと言った子が何人かいたから、作り方を教えてあげたよ。もちろん見ているだけの子もいたけど、その子達も俺が美味いって言ったことはみんな見たはずさ」
「…………」
――お昼休みにみんなに聞いてみたけど、出てきたのは社長さんの言う通りの証言ばかり。私を騙すためにみんなで協力して嘘をついていると……はじめはそんなことも考えてみた。だけどそれなら誰か一人はボロを出してもおかしくないはず。信じたくないけど、社長さんの言葉が正しかったみたい。
「…………」
まさかこんな形で過ごす晩御飯が来るとは。今から代わりを自分で作るのも面倒だ。ひとまずチーズとソーセージだけで我慢しよう。
幸いにも、急ぎの仕事はもうない。後は他の子達に任せて上がることも充分できる時間だ。
「みんな、私はもう上がるわ。後片付けは任せたわよ」
――久々に、酔っぱらうとしようか。ワインを握って休憩室に入った。
「あらヴェロニカちゃん。今日はもう上がるの?」
そこには年上の後輩のダーナさんがいた。
「はい。今日はもう我慢できません。あんっなサイッテーな晩御飯を見せられた以上、あの子の面倒を見るのはヤメにします」
――お話しているだけでも、怒気がどんどん出てきてしまう。自分自身でもまだしらふなことに驚くくらいだ。
「――!!」
注いだワインを、一気に流し込んだ。これでもう、今日は働かないッ!
「……ヴェロニカちゃん、怒る気持ちはわかるけど、さすがに殴っちゃだめよ。しかもお皿をぶちまけちゃうなんて」
――後ろにいるダーナさんは、このお屋敷にいるメイドで一番料理が上手い。他の家事はヘタだけど、料理の腕一本だけであちこちから人気のあるメイドだ。
「あなたの目には手抜きに見えたとしても、あの子は一生懸命考えて作ったんだから。あんなに泣いちゃっているのを見てかわいそうって思わないの?」
「思いませんっ!」
そんな人が、あの子の料理ですらないものをかばうなんて……ホンット、信じられない。
「ダーナさん、お言葉ですけどあんな気持ち悪いものは料理ではありません! 食べ物を粗末にしているのは私じゃなくてあの子です!」
――料理の経験なら私より上のダーナさんでも、今回ばかりは賛同できない。何より料理だけを考えればいいあなたと違って、私にはリーダーとしての責任があるのよ。
――次の日、私は社長さんのところへ朝から呼び出された。もちろん、話すのは昨日のこと。
「ヴェロニカちゃん、聞いたよ。ずいぶんハデにやってくれたね。さすがにあれはどうかと思うよ」
わかってはいたけど……やっぱり社長さんもあの子の肩を持つのね。
「社長さん、お言葉ですが私にも我慢できることとできないことがあります! もうあの子の面倒は見れません!」
「ああ。元より俺もそのつもりだ。君にはもうシャロを任せられない。でもね、食べもしないでせっかく作った料理をダメにするのは先生として――」
「社長さんッ! これ以上言うなら違約金の徴収すら検討しないといけませんよ!」
「なるほどねえ。慰謝料さえ出せば納得してくれるなら、いくらでも出してあげるよ」
――きっと、実物を見てないから、こんな無神経に理屈ばかり並べられるんだ。あれを見たら絶対に社長さんも私の言っていることを理解してくれるはずなのに。
「だけどそれなら俺も、本部の人達に君がどんなに最低な先生なのかをプレゼンしてあげないといけなくなるね」
――そう思っていたところに発せられた言葉。まさかここから更に私を非難する言葉を重ねてくるとは。
「それは、どういう意味ですか?」
「君は優秀なメイドであったとしても、先生としては0点以下だということさ」
――いくら社長さんだからって、今のには本気で頭にきた。
「社長さんッ! そんなに言うならあの子の信じられない料理を食べてから言ってみてください! あんな生卵をご飯の上に雑に乗せた、料理と呼ぶのもおこがましいもの、実際に食べなくても一発でダメだってわかるでしょう!!」
怒りと共に両手を机に叩きつける。気に入らないなら殴れッ! たとえクビになったとしても、全ッ然私は構わない!
「ああ、それなら実際に食べたさ」
「――!?」
――命がけの揺さぶりに対して、かえってきたのはまさかの告白だった。
「あまりにもかわいそうに思ったから、ダーナちゃんに同じものを作ってもらって一緒に食べたんだよ。俺はライスよりパンの方が好きだが、久々に心の底から美味いライスだなと思ったよ」
信じられない言葉。まさか社長さんが、自分からあれを食べたいと言ったなんて……いや、まだわからない。もしかしたらあの子をかばうためにデタラメを言っている可能性もある。そう思わないと、理性が保てない。
「あの子をかばうためにデタラメ言っているわけではないのですよね?」
「そんなに疑うなら君も試してみるといいさ。俺達の他にも食べたいと言った子が何人かいたから、作り方を教えてあげたよ。もちろん見ているだけの子もいたけど、その子達も俺が美味いって言ったことはみんな見たはずさ」
「…………」
――お昼休みにみんなに聞いてみたけど、出てきたのは社長さんの言う通りの証言ばかり。私を騙すためにみんなで協力して嘘をついていると……はじめはそんなことも考えてみた。だけどそれなら誰か一人はボロを出してもおかしくないはず。信じたくないけど、社長さんの言葉が正しかったみたい。
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