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シンセティックシューターメインストーリー1 シャーロッテ誕生編
彼女は錬金術の産物
ホムンクルス、それは異界の罪人の魂を埋め込み作られる人造生物。優秀な錬金術師のみが所持を許可され、その下で彼らは償いのための労働に従事するという。
このトリスト共和国は常に錬金術師がインフラを発展させてきた国だ。少し努力すれば彼らに関する情報は私達一般人の手にも届く。社長さんはそれを造るために、あのような提案を持ち掛けてきたのか。
その日彼女は結局私のところには来ずに、ずっと社長さんのところにいた。どうやら私の仕事はまだ先のようで、まずはこの国の成り立ちなどを学ぶことから始めるらしい。
――私の仕事が始まったのは、次の日の午後からだった。
「ヴェロニカちゃん、早速君の出番だ。家事のことを色々教えてあげてくれ」
特に着替えていない、初めて会った時と大して変わらない服装の彼女をつれてきた社長さんは、一言残して去って行った。特に要望はないらしく、私の裁量で好きな順番で教えろってことか……新しい仕事を始める身から見たらなんか、一番困るタイプの要望ね。
「……よろしく、お願いします」
ほぼ初対面だからか、ひどく緊張している。まあこういうよそよそしい子って大体ヘタなりに一生懸命頑張ってくれることが多いから、大きく困るようなことは起きないと思うけど。
「とりあえず、掃除から始めるわよ。手伝って」
面倒を見始めてから三日目になるけど、どの仕事もイマイチな働きぶりだ。怠けることはなくむしろ真面目に取り組んでいるとは思うけど、どんな子でも三日はあれば何か一つ得意なことを見つけるのに、なんかパッとしない。
社長さんが個人の感情で従者とするならともかく、私達の基準で見たらとても給料の出せる働きぶりではない。お客さんのところに送ろうと思ったら短くても一か月以上かかりそうだ。
――ともかく、もうそろそろ晩御飯の時間だ。少し早いかもしれないけど、今は色々なことをやらせて可能性を見出したい。あの課題を出してみようかしら。
「シャロ、来なさい」
「…………」
たどたどしくこっちに来るシャロは、三日経っても緊張が抜けないようだ。
「今日は私の分のご飯を、あなたが作りなさい」
そう告げた途端、顔に強烈な動揺が現れた――そう、これが私達の事業所における研修の極意の一つ。先輩が抜き打ちで研修生の料理の腕を見るというものだ。これが始まればグループ内の緊張感が一気に増す。特に料理に自信がない子ほど、次は自分の番かもしれないと思うのだから。この子はグループとかがないから、必然的にこれを発動すれば、何も知らないまま受けることになるのだ。
「どうしたの? 道具は揃っているから早く始めなさい」
料理はほぼ何も教えていないが、もし上手だったらこれ一点だけで一線級に育てる価値はあるかもしれない。
――十五分少々かかった頃、やっと出来上がったらしく、お皿を持ってこっちにやってきた。
乗っかっているのはライスらしい。パンよりお米派なのか。
だけど近づいてくるにつれ、お米の上に何か変なものが乗っているのが見えてきた。色は黄色っぽいけど……
「えっ」
机に乗せられた皿を覗くと、それの正体がとうとうわかった――なんとそれは、料理を作る時にはほぼ必ずと言ってもいいほど見るあのありふれた食材。それも、生で食べるのは絶対にありえないあれだった。
「ちょっとあんた、これ何!? ごはんの上に生卵なんか乗せて!?」
「……絶対失敗しないのが、これしか思いつきませんでした」
「――!!」
このトリスト共和国は常に錬金術師がインフラを発展させてきた国だ。少し努力すれば彼らに関する情報は私達一般人の手にも届く。社長さんはそれを造るために、あのような提案を持ち掛けてきたのか。
その日彼女は結局私のところには来ずに、ずっと社長さんのところにいた。どうやら私の仕事はまだ先のようで、まずはこの国の成り立ちなどを学ぶことから始めるらしい。
――私の仕事が始まったのは、次の日の午後からだった。
「ヴェロニカちゃん、早速君の出番だ。家事のことを色々教えてあげてくれ」
特に着替えていない、初めて会った時と大して変わらない服装の彼女をつれてきた社長さんは、一言残して去って行った。特に要望はないらしく、私の裁量で好きな順番で教えろってことか……新しい仕事を始める身から見たらなんか、一番困るタイプの要望ね。
「……よろしく、お願いします」
ほぼ初対面だからか、ひどく緊張している。まあこういうよそよそしい子って大体ヘタなりに一生懸命頑張ってくれることが多いから、大きく困るようなことは起きないと思うけど。
「とりあえず、掃除から始めるわよ。手伝って」
面倒を見始めてから三日目になるけど、どの仕事もイマイチな働きぶりだ。怠けることはなくむしろ真面目に取り組んでいるとは思うけど、どんな子でも三日はあれば何か一つ得意なことを見つけるのに、なんかパッとしない。
社長さんが個人の感情で従者とするならともかく、私達の基準で見たらとても給料の出せる働きぶりではない。お客さんのところに送ろうと思ったら短くても一か月以上かかりそうだ。
――ともかく、もうそろそろ晩御飯の時間だ。少し早いかもしれないけど、今は色々なことをやらせて可能性を見出したい。あの課題を出してみようかしら。
「シャロ、来なさい」
「…………」
たどたどしくこっちに来るシャロは、三日経っても緊張が抜けないようだ。
「今日は私の分のご飯を、あなたが作りなさい」
そう告げた途端、顔に強烈な動揺が現れた――そう、これが私達の事業所における研修の極意の一つ。先輩が抜き打ちで研修生の料理の腕を見るというものだ。これが始まればグループ内の緊張感が一気に増す。特に料理に自信がない子ほど、次は自分の番かもしれないと思うのだから。この子はグループとかがないから、必然的にこれを発動すれば、何も知らないまま受けることになるのだ。
「どうしたの? 道具は揃っているから早く始めなさい」
料理はほぼ何も教えていないが、もし上手だったらこれ一点だけで一線級に育てる価値はあるかもしれない。
――十五分少々かかった頃、やっと出来上がったらしく、お皿を持ってこっちにやってきた。
乗っかっているのはライスらしい。パンよりお米派なのか。
だけど近づいてくるにつれ、お米の上に何か変なものが乗っているのが見えてきた。色は黄色っぽいけど……
「えっ」
机に乗せられた皿を覗くと、それの正体がとうとうわかった――なんとそれは、料理を作る時にはほぼ必ずと言ってもいいほど見るあのありふれた食材。それも、生で食べるのは絶対にありえないあれだった。
「ちょっとあんた、これ何!? ごはんの上に生卵なんか乗せて!?」
「……絶対失敗しないのが、これしか思いつきませんでした」
「――!!」
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