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[総ルビ]ランダムな彼女。
短編1300文字
>masterpiece, best quality, extremely detailed, illustration, anime, (girl), random
これが彼女を召喚するための【呪文】でした。
アップにまとめた白い髪の毛には花の飾り。
黒いシックな半袖ドレスではあるものの花模様をあしらったお洒落で明るい洋服。
青空の下、都会の隅の家の軒先で、花束を持って誰かを待っているようでした。
どこか夏の香りのする清々しい天気です。
「なんですか?」
「いや、かわいいと思って」
「ふふふ、私ですか? そんなことをおっしゃっても、なにもあげませんよ」
「いいんだ。今、君がこの世界に存在しているだけで、僕はうれしいんだよ」
「どういうこととですか?」
「randomとあるだろう。これでランダムになるわけではないのだけど、一種のおまじないさ」
彼女は目を大きく見開いて、少し驚いたような顔をしました。
僕は涼しい顔のまま話を続けます。
彼女の生まれるまでの話です。
「君はね、僕が唱えた呪文でこの世界にたった今、この瞬間「生成」されたんだ」
「へぇ、不思議ですねぇ」
「そうだね」
「私は、さっきから彼女を待っているんです」
「それはなぜだい?」
「今日が彼女の誕生日だからです」
「なるほど?」
そう言うと彼女はポッと頬を赤くしました。
「私のたった一人の親友なんです。大好きなんですよ」
「それはすばらしいね」
「はいっ」
「はやくくるといいですね」
「そうですね。でも、こうやって待っている時間もわくわくして私は楽しいです」
にこやかに笑顔を浮かべる彼女は、なんだかとても眩しく見えます。
彼女は絵の中の住民だけれど、僕にとっては現実と繋がっているようにさえ見えます。
僕たちを隔てる二次元と三次元の壁は厚いのですが、それを物ともせず、この絵になった彼女は美しくて、かわいらしくて、そしてとてもキラキラと輝いているのです。
「ガチャ……そういう人もいる」
「はい? 私の事ですか?」
「そうだよ。しょせんは乱数から生成されたノイズを加工したら君ができた」
「へぇ、やっぱり不思議です」
「僕も確かにガチャだとは思うよ。でもね、一枚一枚それ自体は、奇跡なんだ」
「まぁ」
「君は奇跡の一枚。僕にとっては重要なワンショットなんだよ」
「よかったですね」
「そうだよ。でも残念だな、君は僕を待っているのではなくて、女の子を待っているんだろう?」
「はいっ。素敵な彼女です」
「ふふふ、僕もなんだかどんな子がくるか楽しみになってきたよ」
今にもこの青空の夏の空気が感じられます。
セミの声、自動車の通る音、どこか都会と田舎の中間地点。
誰もが想像する、懐かしい近所の匂い。
たった一枚の絵であっても、様々な情報を内包しています。
それらはお互いを支え合って、一つの世界を構成しているのです。
この絵の彼女のように、誰かを待つ、そんな素敵なストーリーが偶然生まれました。
僕と彼女との出会いにも、乾杯をしようと思いました。
「それじゃ、未来に……乾杯」
そっとグラスを傾けると、ごくりと冷たいコーヒーを飲み干します。
まだ昼間だからですね。色々やらなくちゃ。
僕はそう思って、再びパソコンの作業に集中します。
AI。未来の創造者は僕たちを笑っているのか、それとも嗤っているのか、それはまだ誰にもわかりません。
(終わり)
これが彼女を召喚するための【呪文】でした。
アップにまとめた白い髪の毛には花の飾り。
黒いシックな半袖ドレスではあるものの花模様をあしらったお洒落で明るい洋服。
青空の下、都会の隅の家の軒先で、花束を持って誰かを待っているようでした。
どこか夏の香りのする清々しい天気です。
「なんですか?」
「いや、かわいいと思って」
「ふふふ、私ですか? そんなことをおっしゃっても、なにもあげませんよ」
「いいんだ。今、君がこの世界に存在しているだけで、僕はうれしいんだよ」
「どういうこととですか?」
「randomとあるだろう。これでランダムになるわけではないのだけど、一種のおまじないさ」
彼女は目を大きく見開いて、少し驚いたような顔をしました。
僕は涼しい顔のまま話を続けます。
彼女の生まれるまでの話です。
「君はね、僕が唱えた呪文でこの世界にたった今、この瞬間「生成」されたんだ」
「へぇ、不思議ですねぇ」
「そうだね」
「私は、さっきから彼女を待っているんです」
「それはなぜだい?」
「今日が彼女の誕生日だからです」
「なるほど?」
そう言うと彼女はポッと頬を赤くしました。
「私のたった一人の親友なんです。大好きなんですよ」
「それはすばらしいね」
「はいっ」
「はやくくるといいですね」
「そうですね。でも、こうやって待っている時間もわくわくして私は楽しいです」
にこやかに笑顔を浮かべる彼女は、なんだかとても眩しく見えます。
彼女は絵の中の住民だけれど、僕にとっては現実と繋がっているようにさえ見えます。
僕たちを隔てる二次元と三次元の壁は厚いのですが、それを物ともせず、この絵になった彼女は美しくて、かわいらしくて、そしてとてもキラキラと輝いているのです。
「ガチャ……そういう人もいる」
「はい? 私の事ですか?」
「そうだよ。しょせんは乱数から生成されたノイズを加工したら君ができた」
「へぇ、やっぱり不思議です」
「僕も確かにガチャだとは思うよ。でもね、一枚一枚それ自体は、奇跡なんだ」
「まぁ」
「君は奇跡の一枚。僕にとっては重要なワンショットなんだよ」
「よかったですね」
「そうだよ。でも残念だな、君は僕を待っているのではなくて、女の子を待っているんだろう?」
「はいっ。素敵な彼女です」
「ふふふ、僕もなんだかどんな子がくるか楽しみになってきたよ」
今にもこの青空の夏の空気が感じられます。
セミの声、自動車の通る音、どこか都会と田舎の中間地点。
誰もが想像する、懐かしい近所の匂い。
たった一枚の絵であっても、様々な情報を内包しています。
それらはお互いを支え合って、一つの世界を構成しているのです。
この絵の彼女のように、誰かを待つ、そんな素敵なストーリーが偶然生まれました。
僕と彼女との出会いにも、乾杯をしようと思いました。
「それじゃ、未来に……乾杯」
そっとグラスを傾けると、ごくりと冷たいコーヒーを飲み干します。
まだ昼間だからですね。色々やらなくちゃ。
僕はそう思って、再びパソコンの作業に集中します。
AI。未来の創造者は僕たちを笑っているのか、それとも嗤っているのか、それはまだ誰にもわかりません。
(終わり)
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